【14.02.07】文教科学委員会 ImPACT法案に反対
【14.02.07】文教科学委員会 ImPACT法案に反対
○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
これまでの競争的資金による研究というのは、FIRSTを含め、研究者がテーマを申請し、研究者に予算が提供されるというボトムアップ型で行われてきました。しかし、このImPACTは、総合科学技術会議がテーマを設定、これに基づいて総合技術会議が選定したプログラムマネージャーが研究計画を立案、研究者、研究機関はプログラムマネージャーからの委託研究を行うことになります。徹底したトップダウンの手法が日本で初めて研究分野に持ち込まれることになります。基金は五年間を区切りとしていることからも、極めて短い期間にハイインパクトになり得る成果が求められる。プログラムマネージャーは複数の研究機関と契約することも可能で、こちらの研究は芽が出そうにない、こう判断すれば、短期間でプログラムマネージャーの権限によって研究を打切りすることも可能だと、こういう説明を受けています。
こうなると、研究者、研究機関の使い捨てということが起こることが危惧されると思うのですが、内閣府、お願いいたします。
○副大臣(後藤田正純君) ありがとうございます。
本ImPACTでは、PMの権限の下で、研究開発機関の選定プログラムの、委員おっしゃるように、加速、減速、中止、方向転換等、これを柔軟に実施できるということになっております。ただ、一方で、PMの目利きによって今までスポットが当たらなかったとがった研究を行う研究者だとか若手、女性で優秀な研究人材が結集しやすい環境をつくり出すと、こういう仕組みもございます。まさに名のとおり、ハイリスク・ハイインパクトでございますので、やはり国家事業としてやる上では、やはり研究者の方々もハイリスク、そしてまたチャレンジングにこの事業に関与していただきたいという、こういう思想でございますので、そういった部分での合意の上で参加をいただきたいというのが我々の趣旨でございます。
ただ、一方で、やはり個々の研究者にとっては、かつてなかったイノベーション創出環境の中で非連続的なイノベーション創出に大きな役割を果たすことというのは、今後のそれぞれの研究者の大きなインセンティブにもなり得ると思いますし、一方で、PMそしてまたその下にいる研究者にとりまして、今後の研究者の生活にとってキャリアパスになるような、こういった環境を創造していくということも同時に考えられると思いますので、使い捨てというような考え、お言葉ではなくて、チャレンジングな研究者に今回の趣旨を理解していただいて、合意の下で頑張っていただいて、その後、経験を生かしていただきたいという思いでございます。
○田村智子君 極めて研究者にとってハイリスクだということをお認めになりました。
ImPACTはアメリカのDARPAをモデルにしていますが、このDARPAは年間二割のプロジェクトが成果を得られないということを理由に入れ替えられているという報告もあります。
日本でも競争的資金による研究への予算がこれまでも偏重されてきて、これが非正規雇用の研究者を増大させてきました。若手研究者の育成を妨げてもきました。その上、ImPACTは研究者の側が成果を得る可能性はあるんだと主張をしてもプログラムマネージャーの権限でその研究の打切りが可能となってしまいます。こういう手法は研究機関を疲弊させていくのではないかと私は大変危惧をいたします。
突然脚光を浴びたSTAP細胞も、小保方氏が発想を得たのは二〇〇八年、二〇一〇年には権威者から全面否定をされ、それから地道な基礎的研究を経て世界を驚愕させる研究に芽が出たと、こういう道を歩んでいます。こうした事例が日本にはたくさんあります。だからこそ、ノーベル賞を受賞した日本の科学者や研究者は、基礎的研究の重要性を強調して、大学や研究機関の恒常的な運営予算の拡充こそが必要だと警鐘を鳴らしているのではないでしょうか。
文科大臣にお聞きいたします。
こうした研究者の使い捨てにつながるようなトップダウンの手法を華々しく日本に持ち込む、このことに危惧をお感じになりませんか。
○国務大臣(下村博文君) 委員御指摘のように、基礎的な研究ももちろん必要だと思いますし、こういう部分について、科研費とかそれから戦略的創造研究推進事業、こういう部分についても力を入れていきたいと思います。
一方で、科学技術イノベーションは、これは国境を越えての競争の中で、やはり連動する中で国がバックアップをするということが、今後、科学技術を更に進展させていくためには必要だと思いますし、このようなImPACTのような手法、発想というのは、まさに非常にハイリスクな分野において、なかなか民間やあるいは既存の大学、研究機関が資金的なめども立たない中でちょっと着手できないという部分について、これを導入するということは、我が国の科学技術の発展という観点からは、これは私は大変重要な手法であるというふうに思っています。
○田村智子君 基盤的経費がずっと削減されている下でこういう手法が持ち込まれている、これは私、大変危惧を覚えます。
ちょっと時間がないので、次にデュアルユースについてお聞きをいたします。
国民の安全、安心に資する技術と産業技術の相互に転用可能なデュアルユース技術を視野に入れた設定も可能というのがImPACTのこれまでにない特徴です。安全、安心ということについては災害対応の研究なんだみたいな説明もされているんですけれども、それらは既に大学や研究機関、民間でも様々な研究が行われています。
国家安全保障という軍事研究、つまりは防衛省と大学、研究機関との共同研究がデュアルユースとして注目されている、これは明らかです。昨年十二月五日の本委員会で私、質問いたしまして、防衛省技術研究本部の研究者がImPACTのプログラムマネージャーとなることは妨げない、これも内閣府の副大臣から答弁をいただいております。
このデュアルユースというのを積極的に提起をしてきたのは白石隆氏、昨年一月まで四年間にわたって総合科学技術会議の委員でした。この白石氏は、昨年六月二十一日、衆議院の科学技術・イノベーション推進特別委員会で、総合科学技術会議の改組においては是非防衛大臣の参加をと発言をされたり、防衛力の基盤には産業技術というのが極めて重要、これから将来、防衛予算というのがそれほど大幅に増えるということはなかなか考え難い、防衛力というものについても、科学技術イノベーション政策の一環として考える必要があると、こういう見解を国会の中でお述べになっています。
さらに、防衛省技術研究本部が主催をした昨年十月の防衛技術シンポジウムでは、デュアルユース技術が重要になる、武器輸出三原則の見直しでマーケット拡大が見込めると、こういう発言まで行っておられます。
内閣府副大臣にお聞きをしたいんですけれども、総合科学技術会議に防衛大臣が加わると、こういうことがあり得るんでしょうか、検討がされているのでしょうか。また、もう一つ、多額の科学技術予算を投じた研究成果の出口として、武器、軍事技術のマーケット拡大、ここに利用するということも妨げないのかどうか、お聞きをいたします。
○副大臣(後藤田正純君) 御答弁いたします。
先ほどの安心、安全というこのことにつきまして研究がなされているということでございますが、そもそも、改めて申し上げますが、今回のImPACTは、今までにない非連続的な、また社会的、経済的なインパクトを与える研究をするということでございますので、いわゆる、先ほども文部科学大臣からお話ありましたような、基礎研究、学術研究という分野はしっかり存在をいたします。そして、また同時に、研究開発の実用化に向けてそういった分野も存在します。それに更にPMを導入した今回のImPACT、こういうことをやるということでございまして、その中で、今の御質問でございますが、白石隆さん、平成二十一年に総合科学技術会議の議員でもあられたようでございますが、この方のおっしゃったことにつきましては、今現在我々は、総合科学技術会議としましてもその考え方は全く共有をしておりませんし、今後も共有する予定はございません。
○田村智子君 それではもう一点確認をしますが、ImPACTというのは日本の産業や社会に大きな影響を与える研究ということで、研究成果は広く産業や社会に生かされなければなりません。
それでは、防衛省技術研究本部がImPACTの研究に加わった場合、その研究の内容や成果については広く公表され、活用ができるというものになるのでしょうか。防衛省からこの研究成果は秘匿をすべきだというふうに求められた場合、それを拒否することはできますか。
○副大臣(後藤田正純君) 仮にデュアルユースで、そういったことは妨げないというふうに申し上げましたが、その中でいえば、その他の事業も含めて防衛についてだけ聖域になるということは全くございません。全て公表、公開していくという考え方であります。
○委員長(丸山和也君) 田村君、時間であります。
○田村智子君 はい。最後に一言ですけれども。
やはり、防衛技術本部がプログラムマネージャーになって大学や研究機関に研究を発注することできるという新たな枠組みがこのImPACTでつくられていくということを、私、大変危惧をしております。基盤的経費の削減の下でこのような研究開発に防衛予算ではないものからお金がずっと行くということ、このことに大変危惧があるということを申し上げて、質問を終わります。