活動報告

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大学進学支出可能に 田村智子氏 生保世帯の奨学金

日本共産党の田村智子参院議員は8日、参院文教科学委員会で、生活保護世帯の高校生が受ける奨学金を大学への進学のために使えるよう国の基準を改めるべきだと求めました。

 福島県の高校生が受けた給付制奨学金が全額収入認定され生活保護費がその分減額された事案について、厚生労働相はこの収入認定は不当だとして取り消しました。これを契機に、同省は、保護世帯の高校生のアルバイト収入や奨学金から学習塾費用をまかなうことを認める通達を出しました(8月6日)。しかし、奨学金から入試受験料や大学入学金など進学費用の支出は認めていません。

 田村氏は、アルバイト収入から大学進学費用を支出することは認めており、奨学金も同様にすべきだと主張しました。橋本岳厚労政務官は「生活保護を受けながら大学進学を認めていない保護の扱いなど、慎重な検討が必要」と答えました。

 来年度概算予算で高校等奨学給付金の1人目の単価引き上げを盛り込むなど生活困窮世帯への経済的支援の強化を打ち出していることについて、田村氏は、奨学金を受けた保護世帯の高校生が減額の心配なく学習に使えるように基準の見直しをすべきだと要求。下村博文文科相は「高校生への給付金が有効に活用されることが当然必要。関係省庁と連携して高校生等の就学支援の充実を図りたい、と答えました。

2015年9月17日(木) しんぶん赤旗

【文教科学委員会 9月8日 議事録】

日本共産党の田村智子です。
 福島県内で保護世帯の高校生が給付制の奨学金を受給することとなった。ところが、福祉事務所が、月にして一万五千円足らずの奨学金を全額収入認定して保護費を減額したと。この問題を今年三月の予算委員会で取り上げました。当事者の再審査請求に対し厚労大臣は先月やっと、十分な調査を行わずに収入認定をした不当な処分だとして、福祉事務所の決定を取り消す判断をいたしました。
 この大臣裁決は当然ですが、高校生の給付制奨学金でさえも自立更生計画でその使途を細かく提出させ、福祉事務所が認めた範囲のみ収入認定から除外するという現行の生活保護制度の枠組みを前提としたものにとどまりました。
 厚労省は、八月六日の通達で、保護世帯の高校生の奨学金を塾の費用に充てることを認めました。しかし、大学などの受験費用に充てたり、入学金等のために貯金するということは認めていません。一方、アルバイトの収入であればこれらは認められます。となりますと、大学や専門学校に行きたいならアルバイトで稼げというのと同じだと私は思うんです。
 予算委員会でもあしなが育英会のアンケートに寄せられた声を紹介いたしましたが、アルバイトで疲れ果てて授業に集中できないという苦悩、助けてくださいという声、私も胸が潰れる思いで読みました。働いて得た収入も、学習面で努力して得た奨学金も、高校生本人の努力による現金収入です。アルバイトで政策的には認めている進学費用あるいは自動車学校の費用、こういうところに奨学金を充てることがなぜできないのか、これでは福祉行政が高校生の希望や自立の妨げになってしまうと思います。せめてアルバイト収入と同様に、奨学金を進学等の費用に充てる、これを厚労省としても認めるべきだと思いますが、いかがですか。
○大臣政務官(橋本岳君) 先ほど自分の身の上話をした後で、ちょっと生活保護の皆様の話をさせていただくのはいささか心苦しいところはあるわけでございますけれども、それはそれ、これはこれということで申し上げますが、生活保護世帯の高校生が奨学金を受け取った場合、私立学校の授業料やクラブ活動費、修学旅行費のほか、本年十月から、高校進学率の上昇、高校中退の防止に取り組むという観点から、学習塾費用について収入認定から除外することとしております。
   〔委員長退席、理事石井浩郎君着席〕
 ただ、一方、生活保護制度というものはそもそも、御案内のとおり、憲法第二十五条で、国民は最低限の文化的な生活を営む権限を有すると、こういうことに基づいて行われているものでございます。ですから、その観点から、働くことができる、稼ぐことができる能力を有する場合には、原則としてその能力を活用していただくということが保護の要件となっております。それによりまして、高校卒業後は高校への就学を通じて得られた技能や知識を生かして就労すべきものであり、大学進学後の保護を受けながらの就学というのを認めていないというのが現在の状況でございます。
 したがいまして、御指摘の大学の受験料、あるいは入学金の奨学金収入等からの収入認定除外については、大学進学後の保護を受けながらの就学を認めていない生活保護の原則を踏まえつつ、生活保護を受給されていない方との均衡も考慮する必要があるため、慎重な検討が必要であると考えております。
 なお、生活保護世帯の高校生のアルバイト収入につきましてですけれども、これは、高校の就学のために必要な経費に加え、平成二十六年度から、大学受験料や大学入学料等の大学進学のために事前に必要となる経費などを含めた被保護者の就労や早期の保護脱却に資する経費を収入として認定せず、預貯金することを認めております。
 これは、アルバイトをするということによって就労意義の理解や働く習慣が付くこと、社会性が向上することなど、高校生の自立意欲の喚起につながることを期待、評価をしてそのような取扱いをしているものでございまして、奨学金やそのほかの恵与金、例えばお小遣いとかですね、とは異なる取扱いをしているということでございます。
○田村智子君 教育を受ける権利は経済的な要因によって妨げられてはいけないということを改めて申し上げておきたいと思いますが、慎重な検討でということで政策は少しずつ変わってきたので、より一層変えていきたいというふうに思うんですね。
 その点で、文科省にもお聞きします。
 高校生のいる世帯への生活保護費には、高校等就学費が含まれています。高校の入学金、授業料、教科書や教材費、学生服やかばん、一定の通学費などに充てられます。文科省は、自治体への情報提供で、保護世帯が奨学金を受けた場合、高校等就学費の対象ではない経費に充てるように強く求めています。これは、高校等就学費の対象となる経費に奨学金を使用するという計画を立てた場合、保護費が減額される可能性があるからではないんでしょうか。
○政府参考人(小松親次郎君) お尋ねの件でございますが、高校生等奨学給付金の使途の話かと考えますけれども、この高校生等奨学給付金につきましては、生活保護世帯に限りませんけれども、低所得世帯を対象とした返済不要の給付金として創設したものでございます。教科書費あるいは教材費、学用品費など、授業料以外の教育に必要な経費を支援するという趣旨でございます。
 一方、生活保護受給世帯は、これはそのための生活保護費によりまして同様の経費について支援を受けることができますので、この奨学給付金において生活保護費と仮に重複をするということがございますと生活保護費が減額されるということが起こりますので、これに重複しない例えば修学旅行費などを中心に支援を行うということにしております。
 こうした重複による減額が起こるということを懸念いたしまして、それを防止する観点から注意喚起を各都道府県に行っている、こういう仕組みでございます。
○田村智子君 自治体への情報提供の中には、奨学のための給付金だけじゃなくて、様々な奨学金の給付や貸与を受けた場合に、保護費の対象となるものでないところにまず使うようにということが相当強く徹底をされているわけですね。
 そうなりますと、保護世帯の高校生は、高校卒業後の進学費用に奨学金を充てることはできないんですよ、収入認定されちゃう。高校で学ぶための費用に充てれば、これまた生活保護費を減額されるという可能性があるわけです、それは保護費で見ているんじゃないかということを細かく見られて。
 これでは、保護世帯は奨学金を受けるなと言っているのと同じようなものなんですね。こういう国の運用基準そのものを見直すことが子供の貧困対策で求められていると思うんです。
 来年度の概算要求で、文科省は、高校等奨学給付金について、非課税世帯については、一人目の支給額を大幅に引き上げて、二人目と同額で要求をしています。これ、私も予算委員会で求めたことなので是非実現してほしいと切に求めたいと思うんですけれども、また、一人親家庭への支援でも、児童扶養手当の増額など、経済的支援の強化というのも含まれていて、民間からの寄附による奨学金も検討する方向だと、こういうことも報道されています。保護世帯の高校生への支援ということも、こうした大きな政策の中で是非とも考えてほしいと思います。
 冒頭で紹介した福島県の事例では、奨学金給付の決定から収入認定の取消し、この大臣裁決まで一年半も掛かってしまいました。高校生活の半分を自分の奨学金を生活費に充てるようにと強要された、この高校生の悔しさや不安というのは本当に大きなものだと思います。
 下村大臣にお聞きします。
 是非とも、厚労大臣ともよく相談して、また関係省庁でもよく協議をして、保護世帯であっても高校生が奨学金を進学のための学習に心配なく使えるように政府全体で取り組んでほしいと思いますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(下村博文君) 家庭の経済状況にかかわらず全ての子供がそれぞれの夢にチャレンジできる社会を実現することが大変重要であり、是非それを進めてまいりたいと思います。
 生活保護世帯の収入認定については、一義的には、厚生労働省が定めた基準に基づき各自治体において適切に対処されているものと認識しておりますが、文科省では、高校生等奨学給付金を創設した際、生活保護者が減額されないよう、給付金の取扱いにつきまして厚生労働省と十分に協議を行い適切な対応を図ってきたところであります。
   〔理事石井浩郎君退席、委員長着席〕
 文科省としては、支援を必要とする高校生などにおきまして給付金が有効に活用されることが当然必要なことであるというふうに考えておりまして、今後とも関係省庁と十分に連携を図りながら高校生等の就学支援の充実に努めてまいりたいと思います。


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