活動報告

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経済安保法案/半導体凋落、米の圧力/田村氏、検証迫る/参院内閣委

 日本共産党の田村智子議員は28日の参院内閣委員会での首相入り質疑で、経済安全保障法案について、米国の圧力による日本の半導体産業の凋落(ちょうらく)の検証抜きに経済の自立性を議論することはできないと迫りました。

 日本は1970年代にコンピューター産業に不可欠の大規模集積回路の独自開発を掲げ、官民共同で技術開発などを推進。80年代には半導体の世界市場の53%を日本が占めました。しかし、米国内での日本脅威論を受けて締結された日米半導体協定で、日本政府は外国製の半導体購入の拡大の勧奨などを義務付けられました。田村氏は、互換性のある外国製品を他部門に紹介するという屈辱的な状況まで生じ、販売価格の決定権さえ事実上奪われたとして、同協定による半導体産業凋落の検証・反省はあるのかと追及。岸田文雄首相は「日米貿易摩擦を契機」に「凋落」したと述べました。

 田村氏は、技術者の海外流出の背景にバブル経済崩壊後の人件費をコストとみなした大規模リストラなど技術者・研究者の「使い捨て」を指摘。理化学研究所で進む大量雇い止め問題をあげ、「目の前の対策すらできず、技術の不可欠性確保などできない」とただしました。岸田首相は具体的な方策を示せませんでした。

 また、田村氏は特定重要技術の「調査研究」の外部委託に関し、委託先の「シンクタンク」には透明性の担保がなく、自衛隊や米国の参加も排除されていないと厳しく指摘しました。


2022年4月29日(金) しんぶん赤旗

 

 

 

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
 おとといに続いて、特定重要技術研究についてお聞きします。

 第六十四条では、この研究促進と研究成果の適切な活用を図るために内閣総理大臣が調査研究を行うとした上で、二項で法人への委託を可能としています。これまでの審議では、委託を前提としてシンクタンクについて議論されてきました。国内外の関係省庁や専門家との緊密な連携、あるいは諸情報のハブ機能という答弁もありました。

 政府の機微情報を取り扱う、そしてハブ機能もある。ならば、政府直轄の組織にするのが自然と考えますが、なぜ外部委託を前提としているんですか。

○政府参考人(泉恒有君) お答え申し上げます。
 特定重要技術の研究開発の促進を図る上では、第六十四条第一項に規定する調査研究、これを行うことが必要でございまして、こうした役割を政府として果たしていくと、こういうことと考えてございます。他方、こうした調査研究におきましては、最先端の科学技術に関する高度な知見を結集していく一方で、技術等の動向が常に変化し続ける中で、中長期的な視点から継続的に調査分析を行うこと、これも必要だと考えてございます。

 このため、政府内部のみに閉じた取組ではおのずと限界があることから、政府の外の知見の活用を可能とすべく、こうした調査研究の全部又は一部を一定の基準に適合する者に委託することを可能としたと、こういうことでございます。

○田村智子君 十九日、福島みずほ議員の質問に、一般法人への、一般の法人への委託を想定していると。情報公開はそれぞれの組織ごとに判断される、独立行政法人の場合にはそれに関する情報公開の法律に服することになるだろうという答弁がありました。

 独立行政法人、国立大学法人は情報公開法に服します。しかし、公益法人やその他の民間法人であれば、情報公開は制度的に担保されません。内閣総理大臣が行う調査研究であるにもかかわらず、どのような調査研究をしたのか国民への説明責任の保証がない、それでよいのかと思いますが、どのように透明性を保証されるんですか。

○政府参考人(米田健三君) お答え申し上げます。
 本法案第六十四条第二項に基づく調査研究委託に関しましては、その契約状況やその成果物について、他の委託事業と同様に、平成二十五年に閣議決定されました行政の透明性向上のための予算執行等の在り方について及び予算執行等に係る情報の公表に関する指針に基づきまして、原則公表されることとなります。

 こうした取組を通じまして、委託により行われた調査研究の透明性を確保してまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。

○田村智子君 シンクタンクが行う調査研究を考えると、これ開示が難しいということも想定されると思うんですよ。一般的な報告、概括的な報告、これにとどまることがあり得るんじゃないかと。また、行った研究というものが結果として論文として公開されないということも十分あり得るというふうに思います。そうすると、シンクタンクがどういう調査研究をしているのか、国民には具体には全く分からないということが起こり得るんですよ。

 第六十四条には、調査報告、調査研究の報告について、報告についてさえも何の定めもありません。調査研究の概要、研究体制、予算の配分など年次報告を行うこと、また情報公開を義務付けるべきではないかと思いますが、大臣、いかがでしょう。

○国務大臣(小林鷹之君) お答え申し上げます。
 今政府参考人から御説明させていただきましたとおり、平成二十五年の閣議決定、そしてこの閣議決定に基づく指針がございます。予算執行等に係る情報の公表に関する指針でございますけれども、これに基づきまして、委託契約の状況につきまして、調査の名称、そして相手方の名前、そして契約の形態、また契約の金額、契約締結日、成果物などにつきまして公表されることとされております。今申し上げたこの委託の成果物につきましても原則公表されることとなります。

 こうした取組を通じまして、調査研究の透明性を確保してまいりたいと考えます。

○田村智子君 なかなかそうですかと納得は難しいんですよね。透明確保法ですよね、いわゆるね。それ自体も様々な問題がこれまでも指摘されてきたことですからね。

 シンクタンクと政府との人材交流が予定されていますけれども、機微な技術情報を取り扱う典型的な組織である自衛隊との人材交流、また情報流出の対策を行っている警察との人事交流も排除されないと考えますが、いかがですか。

○政府参考人(米田健三君) お答え申し上げます。
 シンクタンクがその機能を十全に発揮するためには、産学官における様々な分野の専門的な人材を確保、育成していくことが不可欠でございます。他方、シンクタンクに求められる専門性、国際感覚、俯瞰力、目利き力を有する優秀な人材は限られております。そのような中で、シンクタンク自らが優秀な人材確保に努めるのみならず、それぞれの分野で優れた知見を有する国内外の大学、研究機関、政府機関等との連携やネットワーク化を模索することも考えているところでございます。

 このようなことから、令和五年度から本格的なシンクタンクの立ち上げに向け、大学、研究機関、政府機関等との人事交流の具体的な在り方も含め、現在シンクタンクの具体化に向けた検討を進めているところでございます。現時点で委託先や人事交流の在り方については何ら決まっているものではございません。
 以上でございます。

○田村智子君 国内外ということですから、前回、協議会に米国の関係者もあり得ますよねと言ったら、排除されないということがあったんですけど、シンクタンクも同じだと。

 そうすると、例えば、防衛省の職員などが元の身分を離れて、シンクタンク職員の肩書で軍事研究を忌避する大学との交流を進めることや研究動向の把握を進めることも可能な制度となっているわけです。もちろんこれは防衛省の職員に限定されることではないと思います。

 昨年三月に閣議決定された科学技術・イノベーション基本計画で、総合的な安全保障の基礎となる科学技術力を強化するためとして、新たなシンクタンク機能を立ち上げると既にされていて、試行事業が政策研究大学院大学に委託されています。政府ではない研究機関や大学が介することで、デュアルユース技術の研究開発、その動向の把握、この委員会でも軍事研究に消極的である大学が名指しされるかのように取り上げられたことを考えますと、そういうことを含めた動向の把握、こうしたことがより容易になっていく、それを期待しての委託ということになるんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。

○国務大臣(小林鷹之君) お答え申し上げます。

 この法制の先端技術に関する調査研究を外部委託としておりますのは、技術などの動向が常に変化し続ける中で、長期的視点から継続的に調査分析を行うことが必要であると考える一方で、また政府内部のみに閉じた取組ではやはりおのずと限界があるだろうということから、政府の外の知見の活用を可能とするためでございます。

 また、AIですとか量子といった先端技術は、公的分野、そして民生分野での様々な利用可能性を有するものでもございます。このように多義性があることをもってこうした技術の動向などの把握を単純に否定するとすれば、特定重要技術の研究開発の促進、そしてその成果の適切な活用に支障が生じて、ひいては我が国の科学技術またイノベーションが世界から立ち遅れていくおそれがあると考えます。

 いずれにしても、シンクタンクを通じまして、我が国の国民生活の向上にとどまらず、世界が直面する様々な課題への積極的な貢献にもつながるよう、先端的な重要技術の動向の把握に努めてまいりたいと考えます。

○田村智子君 従来、日本学術会議が、各学術団体から日本のアカデミアを代表して科学技術政策に関して提言を行ってきました。

 例えば、二〇二〇年七月、化学、これバケガク、ちょっと紛らわしいのでバケガクと読みます。「化学・情報科学の融合による新化学創成に向けて」との提言が出されていますが、日本の科学データベースの脆弱さを指摘し、AIの利用による化学の研究手法の変革や教育改革を具体に提言しています。この分野での米国の研究状況も分析し、未知物質が知財化される危険性も指摘して、化学産業構造への影響も視野に入れて新たな研究投資、新たな研究体制の構築、官民共同の体制の提言も行っているんですよ。既に外部から、アカデミアの立場からこういう提言は行われている。果たして、これがまともに検討されてきたのかという疑問も湧いてきますね。

 本委員会では、こうした学術会議の役割に焦点を当てることなく、軍事的安全保障研究に関する声明を出した、このことで繰り返しの批判が行われています。

 この声明は、軍事的安全保障研究では、研究の期間内及び期間後に、研究の方向性や秘密性の保持をめぐって、政府による研究者の活動への介入が強まる懸念があることを表明していて、科学者の意図から離れて軍事目的への転用があり得るだけに、研究資金の出どころについて慎重な審査、そのためのガイドラインが必要などの提起を行っているんですよ。これは、私は科学者の自主性、自律性、研究の公開という原則的な立場からの当然の声明だと思います。

 ところが、この声明やり玉に上げて、学術会議の役割を否定するに等しい議論が繰り返され、政府も大臣も事実上それを容認している。私が指摘することに対して、大臣はそれは違うと言うが、自民党などからやられるこの学術会議等に対する批判について、何ら批判的な答弁はなされていないですよ。ただただそれを受け止めているだけですよ。

 安全保障と言うとき、政府にとって防衛装備や軍事的戦略は最重要課題です。研究活動も安全保障の枠組みに組み込めば、軍事目的を排除しないデュアルユース技術のプロジェクト研究を国策としてそこに重点化していくと、これ必至だと思います。そうすると、先ほどの声明も出し政府から独立したアカデミアの代表たる日本学術会議ではなく、内閣総理大臣直結の、より政府が直に関与できる新たなシンクタンクを立ち上げて、新たなシンクタンク機能からの政策提言を踏まえながら、必要に応じ研究開発プログラムやファンディング等と連動させて重点的な研究開発につなげる仕組みを構築すると、これは科学技術イノベーションの提言の中に書かれていることですけどね、これを目的としているということではないんですか。

○国務大臣(小林鷹之君) お答え申し上げます。
 シンクタンク機能の目指すところは、今委員が言及いただいた第六期の科学技術・イノベーション基本計画、繰り返しませんけれども、今委員がおっしゃったとおりだと捉えています。

 この法案の第六十四条第二項の調査研究委託につきましては、この基本計画、科技イノベ基本計画も踏まえて、特定重要技術の研究開発の促進及びその成果の適切な活用を図るために内閣総理大臣が行う調査研究の全て又は一部を一定の調査能力等を有する者に対し委託するものでございまして、その成果につきましては、特定重要技術の研究開発に関する国の施策の検討に活用することを想定しております。

 この法制の先端技術に関する調査研究を外部委託としているのは、先ほど申し上げたとおりで、政府の内部だけだとおのずとやっぱり限界があるので外の知見を活用していくということでございますが、シンクタンクにつきましては、既存の様々な機関とも連携をしつつ、ネットワークのハブとなることによりまして、個別分野にとどまらない幅広い分野における国内外の情報の収集や集約、そして関係各省の政策ニーズに対応した技術の探索や重要技術の絞り込み、そして政策提言といった一連の調査分析を多様な視点から行う新たな組織、これがシンクタンクでございますけれども、これを立ち上げることが必要だと認識しております。

 なお、委員が今言及されていた日本学術会議は独立した我が国のアカデミアを代表する機関でございまして、国からの委託を受けてこうした調査研究を実施するような機関ではないと認識をしております。

○田村智子君 安全保障という枠組みでの新たなこうした大きな資金をどこに付けるかということについて、言わば、権限と言ってしまったら違うかもしれませんけれども、重要な情報を政府に提起できるシンクタンクが政府と本当に官民共同でつくられていくということについては、私は様々な危惧をやっぱり持たざるを得ないんです。

 それから、この委員会の中では、中国の千人計画が、経済安全保障政策がなぜ必要かという意味合いで度々取り上げられてきましたので、私もこれ質問しないわけにいかないと思って質問いたします。

 前提として、他国の主権を踏みにじる覇権主義はいかなる国であろうとも我が党は厳しく批判してきたし、その立場は一貫しています。サイバー攻撃など中国人民解放軍の関与が疑われる事例は厳格に捜査されるとともに、中国政府に対して外交的に解決を求めるべきだとも考えます。また、知的財産などの窃盗も国際的なルールによって裁かれるべきです。しかし、漠とした不安をあおって中国を排除するかのような議論や政策は、日本にとって果たして有益なんだろうかということを冷静に考えたいんです。

 二〇一八年、トランプ政権によって、米国政府はチャイナ・イニシアチブ、中国戦略をスタートさせ、中国本土の機関から受けた研究資金の報告がなかったとして著名な科学者が起訴されるなど、科学者への取締りが強化されました。

 今年二月、米国司法省のオルセン司法次官補は、この政策を変更するということを大学での講演で表明したと報道されています。どのように変更されるのか、またその理由をどのように説明されているのか、御説明ください。

○政府参考人(石月英雄君) お答え申し上げます。
 米国政府の政策でございますので、日本政府として越権的にお答えする立場にはございませんが、米国政府のウエブサイトによれば、オルセン米国司法省司法次官補は、本年二月二十三日の講演において、御指摘のチャイナ・イニシアティブについて、本イニシアティブが非寛容と偏見に基づく見方を助長しているとの懸念が人権団体から示されていること、学術研究界から、こうした取締りが科学者たちの雰囲気を萎縮させ、米国の科学研究にダメージを与えて、与えるとの声が出ていること等を挙げた上で、昨年十一月に同次官補が就任した直後に本イニシアティブの戦略的な見直しを開始した旨発言したものと承知しております。

 また、見直しについて同司法次官補は、中国政府がもたらす重大な脅威を引き続き注視していくが、より幅広いアプローチが必要であると述べていると承知しております。

○田村智子君 事実上、科学者の取締りとしてのチャイナ・イニシアチブは終了するという旨が語られたという報道なんですね。
 チャイナ・イニシアチブは、科学者や大学に何をもたらしたか。ネイチャーダイジェスト版、二〇二〇年三月十二日に、FBIとの関係を深める米国の大学という記事が掲載されています。長いものですので、抜粋して事実だけ紹介します。

 ワシントン州立大学など四校の副学長は、FBIの担当者と定期的に会合を持っていることを明らかにした。FBIによる突然のドアノックを避けるのに役立つためだという。サウスアラバマ大学では、引退したFBI捜査官を情報技術とリスク管理、法令遵守の責任者として雇用した。また、米国エネルギー省は、同省の研究者に中国の人材募集計画に参加することを禁止した。こういった、もっとたくさんの事例が書かれているんです。

 千人計画に参加した米国研究者が逮捕、起訴されたことは本委員会でも取り上げられました。これ、多額の研究資金などを報告していなかったことが理由です。

 一方で、捜査の根拠の曖昧さが米国内では問題になってきました。MIT、マサチューセッツ工科大学テクノロジービューの調査では、起訴された被告のうち有罪は三分の一にも満たない、特に、研究不正に関わる事件の多くは腰砕けに終わっている、ピュー研究所が連邦政府の統計を分析したところ、通常は大多数が有罪答弁に終わる連邦政府の刑事事件の結果とは著しく対照的だなど指摘しています。また、容疑者、被告となった百四十八人のうち八八%が中国系であることも指摘をして、人種プロファイリングとの批判を退けていないんです。

 十九日の委員会質疑で、私は、大川原化工機事件を取り上げて、経済安全保障の名の下に大学や企業への警察、国の情報機関による監視が強まるという懸念をただしました。大臣は否定された。しかし、アメリカで経済安保の名の下で何が起きているか。研究者への監視、規制、これ大臣はどういう認識を持たれますか。

○国務大臣(小林鷹之君) お答え申し上げます前に、ちょっともう中国の方、チャイナ・イニシアチブの方に話題が変わってしまいましたが、ちょっと誤解をいただくとちょっとまずいと思いまして、よろしくないと思いまして、先ほどちょっと学術会議との関係について、一点だけちょっと申し上げさせていただいてよろしいですか。

 学術会議と政府が歩調を合わせて社会の大きな課題に取り組んでいくことが私は重要だと思っていて、そのことが国民のためにもなるし、国際社会における我が国のプレゼンスを高めることにもなると考えています。

 したがって、梶田会長とはこうした問題意識共有してコミュニケーションを今未来志向で取っていまして、例えば、先日、政府からの分野横断的なテーマとして研究力の強化というテーマと、オープンサイエンスやデータ利活用の観点から研究DXの推進ということで、学術会議の知見をお借りしたいということでボールをお渡しさせていただきました。そういう形でキャッチボールしていくということは、ちょっと委員にはそこは御理解をいただければと思います。

 その上で、チャイナ・イニシアチブの今米国の話がございました。他国の刑事司法につきまして私の立場で論評することは差し控えさせていただきますが、いずれにしても、経済安全保障の推進の名の下に不当に企業等の活動に対する規制、監視を広げるようなことがあってはならないと考えております。

 この法案におきましても、安全保障の確保と経済活動やイノベーションとの両立、これを図ることの重要性を十分念頭に置いておりまして、この法案によって研究者などの活動が不当に規制されたり監視されたりするということはございません。

○田村智子君 先行しているとも言われるアメリカの状況をもうちょっと見てみたいんですけど、MITテクノロジーレビューは、中国イニシアチブの、チャイナ・イニシアチブの結果、中国系の研究者が米国を避けるようになっており、これは科学の発展のためにも米国のためにも良くないとの専門家のコメントを載せています。実際、アメリカでスター級の研究者となっていた中国の研究者が中国に戻るという、こういう事例がいろいろに報道されているわけですよ。

 アメリカのサイエンスのソープ編集長は、科学的進歩は、協力、可能な限りの最高の才能を重要な科学的問題のために採用すること及び全世界にこれらの発見を公表することによっている、科学を他国の有能な科学者らとの競争であり広く共有されるべきでない秘密を隠すものであると設定することは科学界の核心的価値に真っ向から対立していると述べて、米国連邦政府が直ちにチャイナ・イニシアチブを緩和して、少数の正当な課題を事例ごとに管理することに回帰することを求めるという論説まで出しているんですよ。具体に起きた問題は具体に解決をする、私もそれが当然だと思います。

 ところが、日本でも、在中国日本人研究者を国益に反すると言ってやり玉に上げるような傾向が、インターネット上でも、また国会議員の発言でも強まってしまいました。この法案の審議の中でもそうした傾向が拍車を掛けていると思います。既にそれらが在中国日本人研究者や中国人留学生の活動に悪影響をもたらしているという指摘も聞きます。

 経済安保政策によってアメリカで起きた問題が日本でも引き起こされるのではないのか、それは日本の科学技術の発展にとってむしろ阻害要件になるんじゃないかと危惧しますが、いかがですか。

○国務大臣(小林鷹之君) まず、これまでも繰り返し申し上げておりますけれども、我が国が今進めている経済安全保障政策というのは、特定の国を念頭に置いたものではございませんし、ましてや特定の国との研究協力というものを忌避するといったものでもございません。

 また、アメリカが日本に先行して取組をやっているということでございましたが、その評価は私から申し上げることはしませんが、それぞれの国の実情に応じて政策を決めるわけであって、我が国は我が国の立場として正しいと思う、その我が国の実情に応じた政策を進めていくということだと考えています。それが基本的なスタンスです。

 その上で、留学生や研究者などの受入れ時の審査強化などの技術流出対策を含めまして、経済安全保障に関する様々な取組を進めるに当たりまして我が国の国益確保の観点から主体的に判断することは当然の前提だと考えています。

 なお、今、田村委員御指摘の留学生について申し上げますと、コロナ禍におきまして、我が国の高等教育機関、これは高専以上ですけれども、この外国人留学生の総数は減少している一方で、留学生全体の四割強を占める中国人留学生の数につきましては減少していないものと承知をしています。

 いずれにしましても、経済安全保障に関する様々な取組を進めると同時に、科学技術の更なる発展を図る観点から、留学生や研究者の受入れ、また国際共同研究の促進などに取り組んでいきたいと考えます。

○田村智子君 特定の国ではないと言いながら、なぜこの委員会でこれほどまでに中国の千人計画が自民党から指摘されるんでしょうか。

 二〇二一年九月に、光触媒反応の発見で知られ、ノーベル賞候補にも挙がる東京理科大学名誉教授の藤嶋昭氏が研究チームごと上海理工大学に移籍することが明らかになると、すぐに自民党の甘利明氏や当時科学技術政策担当大臣だった井上信治氏が危機感を表明し、中国への頭脳流出だとして大騒ぎにされました。国益という言葉も使われました。

 しかし、日本学術振興会が二〇一八年四月、中国の高度人材呼び戻し政策に関する調査レポートを出しています。二〇一五年までに千人計画によって海外の研究機関から中国に呼んだ五千人超の研究者のうち、九五%は中国人。客観的に見ると、中国は、研究環境整備によって海外に流出していた自国の人材を呼び戻したということになります。

 東洋経済、こういう、この問題も詳しく報道していまして、上海の名門大学、復旦大学に渡っている服部素之氏が取材に答えているんですけど、同大学の生命科学学院の場合、約百ある研究室で外国人研究者は二人だけと、三十代から四十代の若手、中堅の場合、年収は日本円換算で五百万から八百万円程度で、日本の教授職より高額ということはないとも述べておられます。

 私たちが考えて議論すべきは、日本の研究者が第一線のベテランも若手も中国を含めて海外に渡っているのはなぜかということだと思うんですよ。この間、私何度も質問してまいりました。

 中国は、流出した研究人材呼び戻すために二十年ほど前から研究環境に莫大な投資を行って、研究者の常勤ポストを増やしてきた。復旦大学では五年間で五割ぐらい増えたと言っているんですよね。日本では、同じ時期、国立大学や研究所を独法化し、運営費交付金を減額し、研究力を奪い、国立大学では二万人もの常勤ポストが奪われてしまった。働ける場がなくなってしまった。

 私は、日本の研究力の自律性、不可欠性、これを議論するならば、万単位で常勤職を減らしたことの反省に立って、万単位で増やすという政策転換、これまでの政策への反省こそが求められていると思いますが、いかがでしょう。

○国務大臣(小林鷹之君) まず、この基本的な研究者の移動などにつきまして申し上げれば、若手研究者が海外で研究するということは、それ自体は海外の優れた研究者とのネットワークが構築できますし、また、異なる研究文化や環境で研さんあるいはその経験を積むということは、私は国際頭脳の循環の観点から望ましいものだと考えています。

 一方で、近年では、あらゆる研究活動がグローバル化している中で人材の国際的な獲得競争というものが非常に激化している。その中で、我が国として若年研究者の方が腰を据えて研究できる環境に課題があるということは感じておりまして、その点では、この環境の改善というのが重要だと考えております。そこは委員と問題意識は共有できていると思うんです。

 今御質問をいただいた、この万単位で減少した、反省と転換こそが必要ではないかという点につきましては、例えば、量子などの先端技術というのは進歩が目まぐるしくて、かつ国家的ニーズの極めて高い研究を推進するためには、プロジェクト期間の都度最適な人材を集めて知見を結集することが求められておりますので、人材の流動性をやはり一定程度確保するということと同時に、優秀な研究者の方がふさわしい境遇を得て我が国で研究したいと思うような環境を整備することが重要だと考えています。

 したがって、政府としては、研究の魅力向上を図りつつ、また大学などにおいて研究者が良好な環境で研究に専念できる環境の構築に取り組んでいきたいと考えておりますし、我が国が何で勝負するのか、育てるべき重要技術分野を明確化して、効果的に先端技術の研究開発を推進していきたいと考えているところであります。

○田村智子君 研究開発環境を崩してきたことについては、日本学術会議も始め、繰り返しの批判をしてきた。そういうことに耳を傾けずに、そういう政策に反省もなく、国家安全保障に、まさに研究閉じていくかのようなこういう議論が本委員会で行われていたということはとても残念です。

 まだまだ質問しなければならないことは多々あるということを申し上げて、質問を終わります。


 

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
 経済安全保障については、我が国の経済構造の自律性の向上、技術などの優位性、不可欠性の確保ということが強調されていますが、かつて日本の強みであった半導体産業がなぜ衰退したのかの検証抜きには、この議論、あり得ないと思うんです。

 日本は一九七〇年代に、将来のコンピューター産業の礎となる超LSI、大規模集積回路を日本が独自開発するという目標を掲げ、七六年には富士通、日立、NEC、三菱電機、東芝、電総研で構成する超エル・エス・アイ技術研究組合を立ち上げるなど、官民共同でこの分野の推進をしてきました。一九八〇年代には、世界の売上げトップテンのうち六社が日本企業、半導体市場の五三%のシェアを占めるまでになりました。

 ところが、日本脅威論が浮上し、米国半導体工業会が日本メーカーによるダンピングをUSTRに提訴し、その後約一年にわたる日米の協議の上で、八六年、日米半導体協定が締結されました。その中身には、日本政府は外国製の半導体購入拡大を勧奨すること、日本製半導体のコスト、販売データの開示を前提として米国政府が公正販売価格を決定することなどが含まれていたわけです。九一年の新協定では、外国製半導体購入二〇%という数値目標まで明記をされました。

 これで何が起きたかと。例えば、企業の中では、半導体部門が同じ企業内の他部門に互換可能な外国製品を紹介するという屈辱的なことまで起こった。また、当時、韓国の半導体産業が成長を始めていて、日本メーカーが日本の顧客に対して弊社製品よりもお得な韓国製の方をお勧めしますという光景まで見られたというんですね。

 こういう分析はたくさんの本の中に示されていますよ。資料でお示しした数字も見てみてください。日米半導体協定が存在した十年間で日本企業から海外市場へのシフトは金額ベースで三兆円と、こういう試算まであります。この十年間がボディーブローとなって、協定終了後も更なる半導体産業の凋落を招いたのは明らかです。

 経済構造の自律性と言うとき、では、この日米半導体協定をどう評価しているのか。アメリカの圧力によって戦略的産業である半導体産業の凋落を招いてしまった、この検証、反省はあるのでしょうか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 日米貿易摩擦を契機に積極的な産業政策を後退させたことが、半導体産業の凋落の一因でもあったと考えております。一方で、当時の日の丸自前主義に固執したこと、あるいは当時の関連企業が世界の半導体産業の潮流を見極められなかったことなど、そうした様々な要因もあったと認識をしております。

 半導体産業はグローバルなサプライチェーンが構築されており、全ての工程を日本国内で整備をするということは現実ではないと思います。このため、半導体の安定供給の確保に向けては、米国を含めた有志国、地域との連携を強化していくことが重要です。こういった観点を踏まえて、安全保障の観点から、不可欠な技術を他国に依存するリスクをいかに低減できるか、これがまず鍵であり、政府としては、まずは我が国のミッシングピースとなっている先端半導体の製造基盤整備に取り組んでいるということであります。

 過去を検証しろという御指摘でありますが、引き続き、過去の教訓を踏まえて、国内での産業基盤の確立と国際連携、これを組み合わせながら、そして自律性を確保していく、こうした目的に向けて努力をしていきたいと思っています。

○田村智子君 アメリカが日本を脅威と言ったのは、半導体というのはやはり兵器にも使われると、国防上の問題でもあるということで、まさに日本が標的にされて、経済安全保障政策をまさに仕掛けられたんですよね。やっぱりアメリカとの関係での自律性ということをしっかりと検証することが私は求められていると思います。

 同時に、アジアの半導体産業の立ち上げに日本の優秀な半導体技術者が深く関わったことも周知の事実です。昨年の東洋経済に、富士通で半導体部門のトップを務め、現在は半導体の設計ベンチャーの経営者である藤井滋氏のインタビューが掲載されました。

 サムスンや現代、現SKハイニックスですね、の半導体事業は、当時の日本の技術者が週末に韓国へ行って指導して立ち上げた。ただ、中国に関しては、早期退職で首になった日本の技術者が現地に渡って立ち上げた。そうした構図は液晶もプラズマディスプレーも同じ、エレクトロニクス全般に当てはまる。技術者が持つノウハウを将来にわたって国がどうキープするかは労務政策であり、産業政策でもある。日本はそれを各社に任せてきた。そして、各社は年寄りの技術者を要らないと捨ててきた。TSMCの創業者モーリス・チャン氏は、新技術を立ち上げるためにIBMや日立などからキーマンを大金で一本釣りしたと。

 バブル経済の崩壊後、人件費をコストとみなしてリストラの嵐が吹き荒れました。リーマン・ショック後も同じです。電機情報産業での大規模リストラは、技術者にも早期退職を迫り、圧迫面談、追い出し部屋まで問題になって、産業の衰退をもたらすということを私も含めて我が党は繰り返し国会で質問してきましたが、政府はまともな対策を取ろうとしませんでした。今国会で、私は、研究者の非正規雇用化、大量の雇い止めの問題を質問しましたが、まともな対策が取られようとしているとはとても思えません。

 技術者、研究者の使い捨て、不安定雇用、ここを規制しないで、どうして日本の技術の不可欠性、これが確保できるんでしょうか。いかがですか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) まず、人材育成の重要性についての御指摘については、私も同感であります。そして、近年、イノベーションの源泉として人材の重要性が高まる中、世界的に研究者や技術者の獲得競争、これますます過熱していると認識をしています。

 この半導体産業について言うならば、我が国産業界の凋落によって、今や若い世代にとって必ずしも魅力的な仕事として映らなくなっていること、これは大きな問題であると認識をいたします。

 このため、まずは国がコミットメントを示し、大胆な支援策を講じていくことで優れた人材を国内外から引き付けるとともに、支援対象の企業には、技術者等に対する大幅な処遇改善、これを働きかけてまいります。さらに、大学や高専と政、産業界の距離を縮め、即戦力となる人材、次世代技術の研究開発を担う人材、これを育成してまいります。

 こうした取組を通じて、我が国に半導体産業の基盤を根付かせ、イノベーションの中心地とすることで、人材を育み、外からの人材を引き付け、それが更なる人材の厚みにつながる、こうした好循環生み出していきたいと考えております。

○田村智子君 目の前で行われようとしている研究者の使い捨てに対しても、いまだまともな対策は取られようとしていないんですよ。理化学研究所、六百人を超える雇い止め、このままだったら進みますよね。研究者や労働者、この人の力こそが日本の経済の自律性であり、技術やその産業の不可欠性、優位性、それはもちろん総理の言うように私も閉じられた世界の話じゃないと思う。開かれた世界の中で、海外からの人材も含めて、日本の中で成長できるよという環境が必要だと思う。

 ところが、経済安全保障の議論というのは、今度は中国の経済力、軍事力の急拡大の下でアメリカが中国の脅威を唱え、対立を深める下で急浮上しているんです。中国に対して外交的に物を言うこと必要です。しかし、脅威をあおって対立を深めるという道を日本も歩むのかということが問われていると思います。その対立に企業活動や研究、技術開発まで巻き込んでいけば、それは政府による監視、介入をもたらし、その活動を萎縮させ、経済も研究も発展が阻害されかねないということを強く危惧します。

 ここでもう質問の時間終わってしまいましたが、私、基幹インフラの問題、重要物資の確保の問題についての質問に届きませんでした。更なる質問が本来求められているということ申し上げて、質問を終わります。


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