活動報告

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子らの意見表明権こそ/田村智氏、こども関連法案ただす/参院本会議

 日本共産党の田村智子議員は18日の参院本会議で、こども家庭庁設置法案と同法整備法案について政府の姿勢をただしました。

 田村氏は、子どもの貧困、いじめや不登校、自殺などの件数が高止まりか上昇傾向にあると指摘し、日本の子どもがストレスにさらされている、その最たるものが、悉皆(しっかい)式の全国学力テストだとただしました。

 岸田文雄首相は、あくまで子どもの最善の利益を第一としているなどと述べ「過度な競争を助長するものではない」と答弁。競争主義的な教育政策が、深刻な影響を与えているとは認めませんでした。

 田村氏が、こども家庭庁の設置で新たに置かれる大臣は、学校教育での競争主義や労働法制の規制緩和など、格差拡大政策の調査や是正を求める勧告ができるかとただすと、岸田首相は「資料の徴求、勧告などの関与が可能だ」と答えました。

 子どもの権利条約の生存及び発達に関する権利に「子どもが子ども時代を享受すること」が含まれると考えるかとの田村氏の質問に岸田首相は、具体的な明文規定がないとして「答えるのは困難だ」と述べました。

 子どもの意見表明権について田村氏は、意見表明が脅かしや罰、否定的な評価を受けず、対話へつなげることが不可欠だと指摘。学校教職員や保育士の配置基準の見直し、長時間労働の是正などで、子どもの意見を聞くための環境づくりを求めました。


2022年5月19日(木) しんぶん赤旗

 

 

○田村智子君 私は、日本共産党を代表し、こども家庭庁設置法案、同法の施行に伴う関連法律整備法案について、岸田総理に質問いたします。

 子供の貧困、いじめ、不登校、校則見直しなど、子供をめぐる現状を変えようと、市民の皆さん、子供や若者自身の運動が多面的に取り組まれています。こうした運動を受けて、子供に関わる法律が幾つも作られてきました。しかし、現状は抜本的な改善に向かわず、予算の倍増を、専門的な人の配置をなど要求が広がり、政府・与党がこれに押されて今回の法案提出に至ったものと思います。運動に取り組まれてきた皆さんと、我が党も問題意識や要求を共有するものです。

 こうした経緯を踏まえれば、こども家庭庁の設置によって子供の状況がどう変わるのか、直ちに問われなければなりません。

 まず、総理に、子供の現状について認識をお聞きします。
 いじめ、校内暴力、不登校、自殺は、いずれも把握された件数が、この十年間、高止まりあるいは上昇傾向さえ示しています。中でも子供の自殺は、この数年、過去最多を更新する深刻な事態です。十代の死因のトップが自殺、G7諸国でこのような国はありません。これらは、日本の子供たちが高度なストレスとプレッシャーにさらされていることを示していますが、政府にその認識がありますか。

 文部科学省国立教育政策研究所のいじめ追跡調査では、八割以上の子供がいじめの加害経験をしていることが明らかになりました。いじめ、校内暴力、不登校、自殺など、子供たちに現れている深刻な状況は、特定の子供の性格や特質が問題ではなく、子供を取り巻く社会環境そのものに原因があることは明らかだと考えますが、総理の認識を伺います。

 子供が抱えるストレスの原因として、学校教育の競争主義の強化を指摘せざるを得ません。その最たるものは、悉皆方式による全国学力テストです。第一次安倍政権によって導入され、民主党政権で抽出方式としたものを、第二次安倍政権が再度、悉皆方式として今日に至ります。学力テストの平均点が都道府県ごとに公表され、その順位を上げようと、少なくない道府県が教育振興基本計画に数値目標を掲げました。市町村の平均点の公表、中には学校の順位まで公表する県知事も現れました。

 点数至上主義による自治体間競争、学校間競争が子供にどのような影響をもたらしたか。十歳から十四歳までの自殺率は二〇〇九年に底を打ちましたが、二〇一九年にはそこから一・九倍となりました。十代後半の深刻な状況が十代前半に広がっているのです。同時期、小学校における不登校の認知件数は二・八倍、校内暴力五・八倍、いじめは十一・四倍にもなっています。学校が子供たちにとって息苦しいものになっていることを如実に表しています。

 このように、全国学力テストを始めとする競争主義的な教育政策が子供たちに深刻な影響を与えていることを総理は認めますか。答弁を求めます。

 もう一つの大きな問題は、子供の置かれた経済状況が悪化していることです。
 子供の貧困率は、直近の調査で減少したものの、いまだ一〇%を超えています。一人親家庭の貧困率は五割を超え、コロナ危機の下でその影響は更に深刻となっています。

 先日、内閣委員会の視察で訪ねたNPO法人では食料支援を行っており、お礼のはがきを見せていただきました。お弁当のおかずを持っていくことができる、就学前の娘は初めて桃を食べたというはがきもありました。旬の果物を食べさせることさえぜいたくな食事になっているのです。

 子どもの貧困対策基本法から間もなく十年、いまだ子育て家庭の貧困は深刻であり、子供の養育に悪影響をもたらしていると考えますが、政府としての認識をお示しください。

 二〇〇〇年代以降の新自由主義に基づく雇用政策によって非正規雇用割合が増え、とりわけ若い世代に不安定な働き方が広がりました。最低賃金の大幅引上げにも踏み出さないまま、国民の所得格差は拡大の一途です。労働法制の規制緩和など、新自由主義の経済政策が子供の貧困に直結していると考えますが、総理、いかがですか。

 こども家庭庁設置によって新たに置かれる大臣は、学校教育における競争主義、労働法制の規制緩和など格差を拡大させた政策について、子供の最善の利益という観点から調査や是正を求める勧告ができるのでしょうか。総理の答弁を求めます。

 子どもの権利条約は、生命、生存及び発達に対する権利、子供の最善の利益、子供の意見の尊重、差別の禁止という四つの一般原則を掲げています。法案では、こども家庭庁の任務として、この四原則を全て盛り込み、政府の司令塔として各省庁より一段高い立場から子供政策を推進するという答弁がなされています。

 しかし、こども家庭庁の事務に関わらないところでこの原則の取扱いがどうなるかが明確ではありません。四原則は、教育行政を含め、子供に関わる政府の施策全てに貫かれるべき原則と考えますが、総理、いかがですか。

 国連子どもの権利委員会は、日本政府に対する第四回、第五回審査の最終所見で、生命と生存の権利について、社会の競争的な性格により子供時代と発達が害されることなく子供が子供時代を享受することができるようにすることを日本政府に求めています。政府は、生存及び発達に関する権利に子供が子供時代を享受することが含まれると考えますか。

 日本財団の調査では、中学校で七人に一人が不登校か不登校傾向という結果が示されています。学校は本来、学齢期の子供たちがそのときしか過ごすことのできない子供時代を享受する場であるはずです。ところが、少なくない子供にとって学校にいることが苦痛になっている。これは特別の子供の問題ではなく、子供全体の生存、発達に関わる構造的な問題として見るべきではありませんか。

 同調査では、高い割合で、授業がよく分からない、テストを受けたくないなど、学業に関する理由が挙げられています。学校こそが変わらなければ、全ての子供に子供時代の享受を保障することはできないのではありませんか。

 子供の意見の尊重についてお聞きします。
 二〇一九年、不登校について、NHKがLINEを使って子供への直接アンケートを行いました。文部科学省の調査と質問項目をそろえて実施したところ、大きな食い違いとなったことが注目されました。NHKの調査では、不登校の理由として、先生との関係、いじめを受けた、決まりや校則になじめないという理由がそれぞれ二〇%ですが、文科省の調査ではいずれも数%。文科省調査は学校が回答者であり、子供の認識との違いがあらわになったのです。

 子供の意見にありのままに向き合うこと、意見表明が脅かしや罰、否定的な評価を受けないこと、その意見が無視されず対話へとつながっていくことなどが意見の尊重に不可欠と考えますが、いかがでしょうか。

 また、子供たちの意見を聞くための環境づくりが求められます。学校教職員や保育士の配置基準の見直し、長時間労働の是正などは不可欠ですが、政府は子供の意見の尊重のためにいかなる施策に取り組むのか、こども家庭庁はどのような総合調整を行うのか、総理の答弁を求めます。

 最後に、現下の物価高への対策として、消費税減税、生活保護の引上げ、児童手当増額など、子供の貧困対策として切実に求められていると考えますが、総理の見解を求め、質問を終わります。(拍手)

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 田村智子議員の御質問にお答えいたします。

 子供を取り巻く状況の現状認識についてお尋ねがありました。
 先日、現場の第一線で子育て支援を担っている民生委員、児童委員の方々との車座でもお伺いいたしましたが、新型コロナの中で子育て世帯は孤立化し、また、児童虐待、いじめなど、子供をめぐる課題は一段と複雑化している、このように認識をしております。人は国の礎であり、特に未来を担う子供たちが様々な深刻な状況にあるということはあってはならないと考えております。

 こうした子供たちをめぐる様々な課題に適切に対応するためにも、常に子供の視点に立ち、その最善の利益を第一に考え、子供に関する取組、政策を我が国社会の真ん中に据えたこどもまんなか社会の実現に向けて専一に取り組む独立した行政組織、こども家庭庁が必要であると考えております。

 全国学力・学習状況調査など、教育政策の在り方についてお尋ねがありました。
 政府においては、教育基本法における個人の価値を尊重して、その能力を伸ばし、創造性を培い、自主及び自律の精神を養うなどの目標を踏まえ、子供たちが未来社会を切り開くための資質、能力を確実に育成するため、各教育政策に取り組んできたところです。

 御指摘の全国学力・学習状況調査は、義務教育の機会均等とその水準の維持向上の観点から、全国的な児童生徒の学力や学習状況を把握し、その結果を教育施策や学校の指導改善に生かすことを目的として実施をしているものであります。

 こうした国の教育政策は、あくまで子供の最善の利益を第一として行っているものであり、過度な競争を助長するものではありません。引き続き適切に実施をしてまいります。

 子供の貧困についてお尋ねがありました。
 低所得世帯や一人親世帯の子供は、コロナ禍で一層多くの困難に直面しているものと認識しており、こうした状況を踏まえ、これまで、低所得の子育て世帯への臨時給付金の支給や、地域子供の未来応援交付金を活用した居場所づくり支援などを重層的に実施をしてまいりました。

 今後、こども家庭庁の下、子供政策を我が国社会の真ん中に据えて進めていく中で、子供の貧困という社会課題にもしっかりと対応してまいります。

 また、経済政策の視点から見ると、いわゆる新自由主義は、世界経済の成長の原動力となった反面、市場に依存し過ぎたことで、格差や貧困が拡大するなど、弊害も生んだものと承知をしております。

 岸田政権では、新しい資本主義の下、市場や競争に全てを任せるのではなく、官と民が協働して、賃上げ、人材投資といった人への投資などを強力に推進することで、子供の貧困を含む社会課題を克服しながら、持続可能な経済成長を実現してまいります。

 勧告権についてお尋ねがありました。
 こども家庭庁は、総理大臣のイニシアティブの下、各省庁より一段高い立場から政府部内の総合調整を行うこととしており、関係行政機関の長に対し、必要な資料の提出や説明を求める権限、勧告を行う権限などを有することとしています。

 したがって、こども家庭庁は、子供の権利利益の擁護等の任務の下、子供政策を推進するに当たり、総合調整の観点から必要に応じ教育政策や労働政策に対して資料の徴求、勧告などの関与をすることが可能です。

 児童の権利委員会が掲げる児童の権利条約の四つの一般原則についてお尋ねがありました。
 児童の権利委員会が、児童の権利に関する条約の第二条、第三条、第六条及び第十二条の規定を同条約の一般原則を示すものと述べていることは承知をしており、引き続き、児童の権利条約の趣旨を踏まえ、政府全体として同条約を誠実に遵守し、子供政策を進めてまいります。

 また、お尋ねの総括所見については、児童の権利条約第六条は、生命に対する固有の権利を有することを規定し、締約国に対して児童の生存及び発達を可能な最大限の範囲において確保する措置をとることを求めておりますが、生命に対する固有の権利に児童が幼少期及び発達を社会の競争的性質によって害されることなく享受することが含まれるかについては、具体的な明文規定がないことから、お答えするのは困難です。

 いずれにせよ、我が国としては、常に子供の最善の利益を第一に考え、子供に関する取組、政策が我が国社会の真ん中に据えられるこどもまんなか社会の実現に向けて、児童の権利条約の趣旨を踏まえ、子供政策を主体的に進めてまいります。

 学校の在り方等についてお尋ねがありました。
 学校は、未来を担う子供一人一人にとって、先生や友人など様々な人と出会い、学び、そして、それぞれの個性や能力を最大限に伸ばすためのかけがえのない場所であるべきものと考えます。

 このため、多様な子供たち一人一人に対応した個別最適な学びの実現とともに、学校が全ての子供たちが生き生きと通うことができる安全、安心な居場所となるよう、引き続き、学校の人的配置の充実やICTの活用などの様々な施策にしっかりと取り組んでまいります。

 子供の意見の尊重のための取組についてお尋ねがありました。
 子供の声に耳を傾けることは、子供を大切にする第一歩であり、こども家庭庁において、子供にとって身近なSNSなど、子供から直接意見を聞く仕組みや場づくりについて検討していくこととしております。その際、子供の意見にありのままに向き合うことなど、子供が意見を言いやすい環境づくりが重要であると考えております。

 また、引き続き、教職員や保育士の働き方改革を進めるとともに、教職員定数、保育士配置の改善について検討してまいりますが、そうした取組においても子供の意見が尊重される体制が適切に確保されるよう、こども家庭庁において総合調整を行うことが考えられます。

 そして、物価高への対応策についてお尋ねがありました。
 コロナ禍において物価高騰等に直面し、生活に困窮する子育て世帯への支援については、今般の総合緊急対策において、食費等の物価高騰等に直面する低所得の子育て世帯に対して子供一人当たり五万円の給付金をプッシュ型で支給するとともに、地方創生臨時交付金を大胆に拡充し、地域の実情に応じたきめ細かな生活困窮者対策ができるようにしています。

 このように、現下の物価高を受けて真に困窮されている方々にきめ細かく必要な支援を迅速にお届けしていきたいと考えており、御指摘の消費税率の引下げについては考えてはおりません。(拍手)


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