活動報告

活動報告
こども関連法案/教育行政抜本見直しを/田村智氏要求/参院内閣委

 田村智子議員は19日の参院内閣委員会で、こども家庭庁設置法案とこども基本法案について政府の姿勢をただしました。

 田村氏は文部科学省の調査では小学校のいじめ、校内暴力、不登校の認知件数が増加し、19歳以下の自殺件数も上昇傾向で、子どものストレスの強度は高まっていると指摘。こども家庭庁は教育行政にも勧告できるとの答弁があったが、学校にかかわる政策や人権問題について、子どもの権利条約の立場で全国学力テストなどの競争主義的政策にメスを入れるため、権限を行使すべきだとただしました。

 野田聖子こども政策担当相は「教育政策はあくまでも子どもの最善の利益を第一に行っている」などと答弁。田村氏は、教育行政を抜本的に見直す役割を果たさなければ、何のためのこども家庭庁なのかが問われると指摘しました。

 さらに田村氏は、同庁の事務に労働行政は含まれないが、子どもの貧困対策の所管庁だと指摘。労働者派遣の自由化の見直しや、教育費負担の引き下げなど、子どもの権利を尊重する立場からの司令塔機能の発揮が大切だと迫りました。

 野田担当相は「これまでも子育てに関する経済的支援、教育費負担軽減、生活困窮世帯への支援などを推進してきた」などと答弁。田村氏は、特定の子どもへの対策だけでなく、すべての子どもを取り巻く環境が問われるべきだと指摘しました。


2022年5月24日(火) しんぶん赤旗

 

 

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
 岸田政権がこども家庭庁など子供関連法案を今国会の重要法案というふうに位置付けていますので、本会議では大きな筋で岸田総理に質問をしたんですけれども、はぐらかすような答弁がほとんどだったので、改めて同じことをお聞きしなければならないんですね。

 まず、日本の子供の現状について政府がどういう認識なのかということです。これは、こども家庭庁を設置して、あるいはこども基本法が施行されて、一体何をどのように変えていくのかという根本に関わる問題なので、是非しっかりと答弁をいただきたいと思うんです。

 まず、文科省に確認いたします。
 文科省が毎年行っている問題行動調査では、小学校におけるいじめ、校内暴力、不登校の児童数当たりの認知件数、これ、どのように推移しているのか、直近の二〇二〇年調査と十年前の二〇一〇年との比較で示してほしいのですが、お願いします。

○政府参考人(淵上孝君) お答え申し上げます。
 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査におきまして、小学生千人当たりのいじめ、暴力行為、不登校の児童生徒数につきまして二〇二〇年調査と二〇一〇年調査を比較をしました場合には、いじめにつきましては、二〇一〇年が千人当たり五・三件に対しまして六十六・五件でございますので約十二・五倍、暴力行為につきましては、同じく二〇一〇年約一・〇件から六・五件ということで約六・五倍、不登校につきましては、同じく三・二件から十件ということで約三・一倍となってございます。

○田村智子君 小学校の数字に注目をしたのは、中学校と比べても数字が悪化をしているからなんですね。
 では、自殺の件数どうなっているか。十歳から十四歳と十五歳から十九歳までの自殺による死亡率、直近二〇一九年とその十年前二〇〇九年の数字で比較で何倍になっているか、お答えください。

○政府参考人(川又竹男君) 厚生労働省の人口動態統計調査におきます人口十万人に対する自殺死亡率について二〇一九年と二〇〇九年を比較をいたしますと、十歳から十四歳については、二〇〇九年〇・九であったものが二〇一九年は一・七と約一・九倍、十五歳から十九歳につきましては、二〇〇九年は七・六でありましたが、二〇一九年九・九と約一・三倍になっております。

○田村智子君 この十九歳以下の自殺の件数そのものは、この十年間、ジグザグはあるんですけれども、明らかに上昇傾向です。しかも、高校以上が含まれる年代、これ、件数でいうとそこが多いんだけれども、だけど、その年代よりも中学校以下の年代の方の増加率が高いわけですよね。十代の死因のトップが自殺で、こんな国はG7諸国にはない。自殺率で見てもG7の中で最悪。特に、十代前半での自殺の増加というのは、言わば低年齢の子供を取り巻く状況の悪化、これを考えないわけにはいかないのです。

 本会議で、文科省国立教育政策研究所のいじめ追跡調査も示しました。これは三年間、定点調査を行っているんです。仲間外れや無視などをしたことがあるかなど、いじめの加害と被害と両方のことを聞くんですけれども、こういう設問の中で、いじめの加害を経験していないという子供はどの年の調査を見ても二〇%程度なんですね。ということは、被害者だったり加害者だったりという関係を入れ替えながら、八割以上の子供がいじめの加害経験を有しているということも明らかになってくるわけです。

 そして、いじめの厳罰化、いじめの加害者に対する厳罰化という議論が午前中ありましたけれども、何か特定の子供に対する対処という問題ではないと思うんですよ。ほとんどの子供が、やってはいけないと分かっているんだけれど、もちろん程度の差はありますよ、いじめはやっちゃいけないなんてことは何度も教育されているから分かっている。分かっているけれども、八割の子供たちが何らかのいじめを経験しているんですよ、自分がやっているんですよ。

 そうすると、いじめ、校内暴力、不登校、自殺など、こういう子供たちの深刻な状況は子供を取り巻く社会環境にこそ原因があって、その状況は悪化傾向にあると、こういう認識を大臣が持っておられるのかどうか、確認したいと思います。

○国務大臣(野田聖子君) お答えします。
 子供を取り巻く状況については、原因は様々であるものの、例えば御指摘の数字もありますし、児童相談所での児童虐待相談対応件数は過去最多の約二十万件、学校におけるいじめの重大事案件数は五百十四件、小中学校の不登校者数は過去最多の約二十万人、二十歳未満の自殺者数は平成以降で最多の七百七十七人など、状況は深刻になっていると認識しています。

○田村智子君 数値で見てもそうなんですけどね。これが、だから社会全体、子供全体を取り巻く社会の状況悪化というふうに見るかどうかなんですよね。

 子供の幸福度とか自己肯定感などが、海外比較で日本の子供の数値がとても低いということはもう周知の事実です。自殺率も含めて考えれば、日本では子供がストレス状態にある、そのストレスの強度が高まっていると、そういうふうに私は見るべきじゃないかというふうに思いますが、これもちょっと大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(野田聖子君) いずれにしましても、数字が悪化していて状況は深刻だということで、私がこのこども家庭庁の創設に向かって取り組んでいることは、それをどうやはり好転させていくか、良くしていくかということに、やっぱりこれからは行政組織の子供政策を一元化させて、集中、解決に当たらなきゃならないという認識をしています。

○田村智子君 もう少し示したいと思います。
 本会議でも、日本財団の調査、示しました。中学校で七人に一人が不登校、不登校傾向、小学校時代に不登校や不登校傾向であったという中学生も七人に一人の割合で、学校に行きたくない理由として、授業がよく分からない、付いていけない、テストを受けたくないなど、まさに学業に関わる理由を挙げる中学生が多いと。

 北欧やヨーロッパの学校教育との比較というのは、もう幾つもの論文や経験談がありますよね。私もフィンランドからの留学生とお話をする機会があったんですけれども、暗記テストというのは全く経験がないと、フィンランドで受けた学校教育の中でね。そうやっておっしゃっていましたよ。

 日本ではどうかと。例えば、今一人一人の到達に応じた授業だといって、小学生でも算数などで到達度別のクラス編制やっている学校少なくないです。そういう少人数教育をやると教員の加配というのもあるのでこういうのが積極的に取られているんですけれども、これどうやってクラス編制するのか。

 例えば、こういう学校がありました。一つの単元が終わるたびにテストをやってクラスの編制変えるわけですよ、固定化しないため。到達度といったときに固定化されると、これいろいろな問題が起きるから。だから、単元が終わるたびにテストやるんですよ。そうすると、いわゆるできるクラスから別のクラスになると、親から、次は頑張れと、何であっちのクラスに行かれなかったんだとプレッシャー掛けられる子供も現にいました。あるいは、どうせ自分は勉強できないからと、もう小学生の中学年ぐらいから学ぶことに意欲が持てなくなるという子供もいます。自己肯定感が持てなくさせられているというふうにしか言いようがないと思うんですね。これが個性に応じた教育なんでしょうか。

 小学生のときから学業や点数で日常的に評価をされる、この日本の教育の特異な在り方が、子供たちがストレスを抱いている、こういう状況に置かれている、こう考えますが、いかがでしょうか。

○大臣政務官(鰐淵洋子君) お答えいたします。
 学習の評価につきましては三つの柱で整理をされておりまして、まず一点目、知識、技能、二点目、思考力、表現力、判断力等、そして三点目、学びに向かう力、人間性等、この三つの柱で整理をされた資質、能力をバランスよく身に付けているかどうかという観点から、一人一人の成長を多面的に捉えて行われるべきものであると思っております。

 各学校におきましても、こうした観点から学習評価が行われていると承知をしております。その際、子供たちが一つの尺度で過度に悩み過ぎることがないよう、各学校におきまして、子供たちに寄り添いながら良い面を見付けて伸ばしていくということが重要であると考えております。

○田村智子君 そうなっているかというので、とりわけやっぱり問題指摘したいのは、やっぱり悉皆方式の全国学力テストなんですよ。これ、学校教育一変させたんですよ。都道府県は平均点で順位が付く。少なくない道府県の教育振興基本計画で全国と比較した数値目標が現に掲げられている。市町村ごとの平均点は公表が当然です。まさに一つの指標でやられているんですよ。学校の平均点というのは公表はされなくとも学校や教員には知らせられますから、子供たちへの言葉の端々にそれは表れるんですよ。それが子供にどういう影響を与えているかですね。

 大阪府は、全国学力テストの学校の平均点を偏差値化して、中学三年生の内申点の標準化に使ったんですよ。文科省は、それは趣旨が違うと言って翌年から使えないようにしたんだけれど、そうしたら、大阪府は、独自の試験でやっぱりその学校の平均点の偏差値化をやって、それを内申点で読み込むようにしているんですよ。

 文科省は、点数主義をあおるなとか、学校ごとの公表は認められないとか、全国学力テストを入試に使うのは趣旨と違うとか、こういう点数競争につながるような事態が発生するたびに火消しを図ってきたんじゃないでしょうか。これはつまり、裏返せば、点数主義、競争主義が現に起きているということなんじゃないのかと思いますが、いかがですか。

○政府参考人(出倉功一君) お答えいたします。
 全国学力・学習状況調査でございますけれども、全国的な児童生徒の学力・学習状況を把握、分析をいたしまして、各教育委員会や学校等において教育施策や教育指導の改善充実、学習状況の改善等に役立てる、これを目的として実施しているものでございます。

 この調査結果の取扱いにつきましても、実施要領におきまして公表に当たっての配慮事項といたしまして、単に平均正答率等の数値のみの公表は行わず、分析結果や改善方策を公表することを定め、序列化や過度な競争を招くことがないよう配慮をしているところでございまして、委員がお話になりましたような点数のみによる過度な競争を助長するものではないというふうに考えてございます。

 私たち文部科学省といたしましては、本調査の目的を踏まえまして、引き続き適切にこの調査を実施していきたいというふうに考えてございます。

○田村智子君 いつも目的の説明はあるけれど、子供に何がもたらされているのかって何回聞いたって答弁出てこないんですよね。

 二〇〇七年に今に続く悉皆調査始まりました。実は、私の子供はその対象学年の六年生でした。東京都はその前年に全都一斉学力テストも実施をして、居住自治体の平均点が低いということはすぐに子供たちの中に広まって、僕らはばかだからと、自己肯定感どころではない事態が子供たちの中に広がりました。

 テスト直前には、四十ページにもなる模擬テストプリントの束を持ち帰って、全部やらなくてもいいけれど、学力テストがあるからできるだけ頑張れと、こういう指示も受けました。保護者の一人としては、こんなことやったら学ぶことが嫌いになると思いましたよ、叫びたいくらいでしたよ。算数の授業時間使って算数の全国テストやるくらいなら、その時間使って、好奇心刺激するような、みんなで考えて何か発見するような、学ぶことが楽しいと実感できるような、そういう授業をしてほしいと今も私は切実に願っています。

 国連子どもの権利委員会は、最初の日本への勧告で、過度に競争的な教育システムが子供の身体的及び精神的健康に悪影響を与えていると厳しく指摘をしました。これは一九九八年のことです。ところが、改善どころか全国学力テストまで行って、点数主義は現場であおられているんです。それが現実です。

 政府の教育政策が子供たちにストレスをもたらし、子供たちにとって学校を息苦しくしている、そう思いますが、いかがですか。

○大臣政務官(鰐淵洋子君) お答えいたします。
 文部科学省では、教育基本法における、個人の価値を尊重して、その能力を伸ばし、創造性を培い、自主及び自律の精神を養うなどの目標を踏まえまして、各教育政策に取り組んでまいりました。

 御指摘の全国学力・学習状況調査は、全国的な児童生徒の学力や学習状況を把握し、その結果を教育施策や学校における個々の児童生徒への教育指導の改善に生かすことを目的としておりまして、序列化や過度な競争を招くことのないよう配慮して実施をしてきているものでございます。

 また、学校教育においては、知識、技能、思考力、判断力、表現力や、学びに向かう力、人間性等、子供たちが未来社会を切り開くための資質、能力を確実に育成できるよう取り組んでいるところでございまして、点数至上主義といった御指摘は当たらないものと考えております。

 文部科学省としては、引き続き、子供の最善の利益を第一として各教育施策の充実に取り組んでまいります。

○田村智子君 相も変わらず子供の姿は全く答弁の中に見えてこないんですよね。

 さっき不登校の理由の中で、授業が分からない、付いていけない、これはテストやればやるほどそうなっちゃうと思うんですよ。テストで悪い点取って、分からなかったら分からない、学校嫌になるって。だけど、分からないって、本当に学びの絶好のチャンスですよね。

 これも個人的経験で申し訳ないんですけど、例えば、面積というのに四角形だったら縦掛ける横と、これが分からないとつまずいた子供がいたんですね。何でそれが分からないのかということがなかなか表現ができないんですよ。いろいろいろいろ聞いていったら、面積という概念が分からなかったんですよ。何でこうやって縦掛ける横という計算をさせられているのかが分からなかったんですよ。これ、私たちだったら概念という言葉で表現できるけど、子供はそれは持っていないですよね。だから、その分からないということをつかむのも体験ですよ、何が分かっていないのか。

 これね、もし教えようと思ったら皆さんどう説明します。面積とは何か、何で縦掛ける横なのか。だってこれが分からないんだもの。これってすごい学びのチャンスですよね。分かっている子供は、じゃ、どうやって教えるんだろう、どうやって説明するんだろう。これ、一時間、二時間と授業できるんじゃないでしょうか。

 あるいは、地図を見て経度、緯度習ったときに、この線が何で引かれているのかが分からないと、ここでつまずいて先に進めなくなるんですよ。これだって皆さん説明できますか。私もこれ頭抱えましたよ、こうやって言われたときに。だけど、物すごいこれって、何というんですか、学びのチャンスですよね。すごく発展的に学べるんですよ。

 だから、そういう授業ができていますかなんですよね。私は本当に、総理は全国学力テストについての昨日の私の質問に、こうした国の施策はあくまで子供の最善の利益を第一として行っているものであり、過度な競争を助長するものではありませんという答弁だったんですけど、私は、学校が楽しい、学ぶことが楽しい、今言ったみたいな、私の出したような事例が分かったときって、子供は物すごい発見だと思いますよ、ああ、そうだったのかって。そうなることが子供の最善の利益だと思います。

 じゃ、全国学力テストで子供は学校が楽しくなっていますか。そして、現状が競争の助長になっているのかどうかということは総理は答弁もされなかった。これ以上やっても、ちょっともう水掛け論というか先に進まないので。

 こども家庭庁は、子供の人権擁護のために事務を行う、各府省への資料の提出権なども持っている。子供の成長、発達の場が学校であって、家庭と並んで長い時間過ごすのも学校です。こども家庭庁は教育課程には関われない。だけど、学校に関わる政策や人権問題で子どもの権利条約の立場で司令塔機能を果たせるかどうか、これが問われてくると思います。

 総理は本会議で、教育に関することについて調査や勧告は可能だと答弁をしました。ならば、全国学力調査への子供のありのままの意見、これを子供はどう受け止めているか、そして子供にどのような影響を与えているか、これは私、直ちに調査も必要だと思います。

 また、いじめ、自殺、不登校、校内暴力の拡大等、政府の進める政策の影響など構造的な背景にメスを入れるために権限行使することが必要ですし、それはもうこども家庭庁設置待たずに直ちにもう取り組んでほしいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(野田聖子君) まず、全国学力調査のことは、先ほど文科省の政務官からの答弁があったとおりであります。

 昨日、総理から答弁があったように、政府においては、これも御答弁ありましたけど、教育基本法における個人の価値を尊重して、その能力を伸ばし、創造性を培い、自主及び自律の精神を養うなどの目標を踏まえて、子供たちが未来社会を切り開くための資質、能力を確実に育成するため、各教育政策に取り組んできたものと承知をしているところです。

 こうした教育政策については、あくまでも子供の最善の利益を第一として行っているものと承知していますけれども、所管する文部科学省においては、引き続き現状や課題を分析しながら適切に取り組まれるものと考えています。

 こども家庭庁が設置された際には、文部科学省等の関係省庁とともに連携して、子供の視点、委員先ほど子供の意見がこの全国調査でも聞かれていないという話もございましたが、あくまでも私たちは子供の視点に立って子供政策を強力に推進してまいります。

 子供の置かれている状況というのは多様であります。困難を抱える課題はもう複雑化しているし、重層化しています。ですから、このため、子供や家庭を取り巻く状況等に関するデータや統計など様々なエビデンスに基づいて、多面的に政策立案、評価を改善してまいりたいと考えます。

○田村智子君 子供の最善の利益というのは、文科省はそうだといって全国学力テストやっているんですけど、先々教育を改善してとかなんとかってね。じゃ、今このときその子供たちは幸せですかが最善の利益なので、そういう視点で是非抜本的に教育行政の在り方についても私は見直してほしい。こども家庭庁がその役割を果たさなければ、何のためにつくるのかということが問われるというふうに指摘をしておきます。

 子供の指標悪化の背景には家庭の養育環境の問題も大きいと思います。子育て世代の、世帯の格差の拡大や貧困化は、虐待も含め子供の状況悪化に大きな影響を与えていると考えます。

 大臣の見解を伺いたいんですが、この格差の拡大、貧困化の原因について、私はやっぱり最大のものは非正規雇用の拡大ではないかというふうに考えますが、いかがですか。

○国務大臣(野田聖子君) 低所得世帯では、子供の学習や生活、心理面など様々な面で相対的に多くの困難に直面しているものと承知しています。

 また、例えば国民生活基礎調査では、平成三十年時点で一人親世帯の約半分が相対的貧困状態であったり、令和三年子供の生活状況調査では、保護者が働いていない場合、その理由を自分の病気や障害、家族の介護とした割合が低所得世帯では三割以上を占めるなど、低所得世帯の状況は様々であり一概には言えませんが、正規職員の割合が少ないというデータもあり、保護者の雇用形態も世帯の貧困に関係しているものと認識しています。

○田村智子君 それも要因だと。
 こども家庭庁の事務には労働行政も含まれていません。しかし、子供の貧困対策は所管することになります。

 超党派議連では、親の貧困解決なくして子供の貧困は解決できないという議論もして、子どもの貧困対策基本法の改正も行ってきたんですね。

 子育て世帯、子育て世帯になり得る世代の若者たち、この雇用環境の改善というのは急務だと思います。これらの世代の雇用環境の悪化につながった政策、労働者派遣法の自由化の見直し、あるいは家計を圧迫する学費や教育負担そのものの引下げ、こういう格差の是正、若い世代の貧困の解消、これも子供の人権を守るために司令塔の機能を果たすということが大切だと思いますが、いかがですか。

○国務大臣(野田聖子君) 労働規制の在り方を含む労働政策や教育に係る家庭負担の在り方を含む教育政策などの各政策については、厚生労働省、文部科学省など各所管省庁がそれぞれの政策目的を実施しているところですが、これまでも少子化社会対策大綱や子供の貧困対策に関する大綱等に基づいて、若い世代が将来展望を持てる雇用環境等の整備や、子育てに関する経済的支援、教育費負担の軽減、生活困窮世帯への支援等について政府を挙げて推進してまいりました。

 常に子供の視点に立ち、子供の最善の利益を第一に考えるこども家庭庁の下、これらの取組を一層強力に推進してまいります。

○田村智子君 だから、貧困対策も、特定の子供への対策ではなく、その背景にある全ての子供を取り巻く環境をどうするかと、ここを問うていかなければならないと。

 次になんですけど、野田大臣、五月八日のNHKの「日曜討論」で、子供の政策について、親を支えることが重要だというふうに強調されました。発言を若干紹介したいんですけど、家庭というのは別に親だけのものじゃなくて子供の居心地のいい場所にしなきゃいけない、親が苦しいときにちゃんとその親が真っすぐ歩けるような支えを今まで社会や国、政治レベルでは基本的にしていなかったと。全く同感なんです。とても大切な指摘をされたと思います。

 しかし、自民・公明政権の下で、支えるどころか苦しい状況にある親への支えを外すようなやっぱり冷酷な制度改革が幾つも行われてきたと。ここは見なきゃいけないと思うんですよ。一人親の子供への支援である児童扶養手当制度、これ後で詳しく取り上げたいんですけど、所得制限によって支給対象を狭めるということをやられてきました。二〇〇二年の制度改定では、働いて収入を得るほど十円刻みで手当額が減額されるという改定がシングルマザーの皆さんの強い批判の下で強行されました。生活保護制度では、第一次安倍政権による母子加算の廃止もありました。これ、民主党政権で復活されましたけどね。第二次安倍政権では、二〇一七年、生活保護基準の引下げをやって、これは多子世帯ほど引下げ幅が大きかったという改定だったんです。

 これら経済的に苦しい家庭への支援を減らす方向での制度改悪が行われた、こういう政策がまずかったという反省の弁なのかなと「日曜討論」の発言を聞いたんですけれども、いかがですか。

○国務大臣(野田聖子君) これ自体、その具体的な政策のジャッジということではなくて、やはり自らも母親となったときに、障害を持っても、さっとこう手を差し伸べてくれるところが見付からなかったとか様々経験をした上で、親が苦しいときというのは、必ずしも経済的な理由ではなくて、精神的だったり知識がないがゆえにどうしていいか分からないとか、様々踏まえて、やはり子供を支えていく一番身近な人にリーチできていたかなというと心もとなかったなということを申し上げて、さらに、やはり子供をしっかり支えていくためには一人親家庭を始めとする家庭への支援が重要だという趣旨を述べた次第です。

 これまでも、子育てに希望を持ち、子供が安心して生まれ育つことのできる社会、これを実現していくために、幼児教育、保育の無償化、そして新子育て安心プランの着実な実施、高等教育の修学支援等、政府一丸になって様々な子育て支援には取り組んできてまいりました。また、一人親家庭への支援についても、児童扶養手当等による経済的支援のほか、それぞれの家庭の状況に応じて生活支援、子育て支援、就労支援と適切な支援を実施してきたところであります。

 こども家庭庁においては、こうした取組を引き続きしっかりと行う、子育てを社会全体でしっかりと支える、個々人が子育てに希望を持ち、子供が誰一人取り残されることなく健やかに成長することのできるこどもまんなか社会、これを実現してまいりたいと考えています。

○田村智子君 こどもまんなかの政治にというときには、じゃ、今まではどうだったのかということはやっぱりちゃんと見るべきだと思うんですね。

 さっき言った児童扶養手当なんですけど、一九九八年に一部支給の所得基準が四百七万八千円から三百万円に一気に百万円以上引き下げられたんですよ。これで六万四千人の支給が打ち切られた。さらに、二〇〇二年、制度の抜本改正だとして自立に向けた努力義務を課したんです。そして、シングルマザーへの支援は就労支援が基本とされて、受給五年後には支給を最大半減できるという制度も盛り込まれたんですよ。養育費の八割を所得算入するという制度も導入をされました。さらに、全額支給の所得制限は二百四万八千円から百三十万円にこれまた大幅引下げと。就労所得が増えると小刻みに支給額の減額を行っていくという制度になって、これは厚労省の試算でも、受給者の約半数が減額になったんですね。これで増額になる人もいるって厚労省言ったんだけど、増額となったのは三%だということも示されたんですよ。

 その後、子供の貧困が問題となる中で、父子世帯への拡大とか所得制限の引上げは行われました。だけど、一九九八年の水準にまだ戻っていないです。受給後五年後の一部支給停止という制度も法律上残されたままになっています。

 厚労省に確認したいんですけれども、この法改正の基になった二〇〇二年の母子家庭等自立支援対策大綱、ここではどういうふうに説明をしていましたか。

○政府参考人(岸本武史君) お答えいたします。
 児童扶養手当の一部停止制度の導入に当たりまして、母子家庭等自立支援対策大綱におきまして、離婚の増大に伴い受給者が増大する中、合理化、効率化を行い、自立を促進する制度とし、将来にわたり機能できるよう、離婚後などの生活の激変を一定期間内で緩和し、自立を促進するという趣旨で施策を組み直すという観点から、きめ細かい配慮を行いつつ、支給期間と手当の額の関係を見直すというものでございました。

○田村智子君 離婚が急増して国の財政負担が大変だから支給対象を絞ったということなんですね。

 この制度改正について、自民党厚労部会母子寡婦問題等小委員会報告の文書、ここには、親の子に対する養育の責務を厳しく問いかけながら実施することが重要と、一方で子供は歴史の希望であり、社会全体で支えていく観点も重要と。これを基本的な考え方として記して、やっぱり受給者が増大していると、だから合理化、効率化、自立支援をする制度として将来にわたり機能できるよう整備というふうにまとめているんです。

 公明党厚労部会単親家庭(母子家庭)等対策小委員会の文書、ここでもやっぱり、自立を支援する経済支援制度として、児童扶養手当制度について、増大する受給者などに対応し将来にわたって維持できる制度となるようというふうになっているんですよ。

 元々、夫と死別したら支援は当然だけど、離婚は自己責任という考え方が根強くあったところに、離婚が増えている、それで受給対象が増えた。そうすると、必要な児童扶養手当の予算の増額をしないで、制度の抜本改正だといって自立だというふうにやっちゃったわけですよ。で、五年後、手当額の減額という政策、これも持ち込んだんですよ、まさに自立しろと。

 親が苦しいときにちゃんとその親が真っすぐ歩けるような支えを今まで社会や国、政治レベルでは基本的にしていなかった、大臣が言われたようなことはまさにこういうことじゃないかと、典型例じゃないかというふうに思うんですけど、大臣、どうでしょうか。

○国務大臣(野田聖子君) 平成十四年、二〇〇二年の母子家庭等自立支援対策大綱決定以降、厚生労働省においては、累次、一人親の実情に寄り添った児童扶養手当の見直しを行ってきたものと承知しています。

 具体的には、一定の事由に該当する場合の児童扶養手当の一部支給停止の適用を除外、多子加算額の倍増、全部支給の所得制限限度額の引上げ、一人親の障害年金受給者についての併給調整の方法の見直し等の改善等を実施してまいりました。また、児童扶養手当受給者を含めた一人親の自立を促進するため、厚生労働省において、教育訓練給付の経費の一部を補助する自立支援教育訓練給付金の支給、看護師、保育士やIT関係の資格などを取得するために養成機関在学中の生活費の負担を軽減する高等職業訓練促進給付金の支給などによる支援を行っております。

 一人親家庭への支援について、こども家庭庁においては、こうした取組を引き続きしっかり行っていくことにより、誰一人取り残さず、抜け落ちることのない支援を行っていきます。

 児童扶養手当の更なる拡充については、現行制度の趣旨、目的を十分に踏まえる必要があるとともに、安定財源の確保と併せて、その必要性を含め、慎重な検討が必要と考えています。

○田村智子君 これ、二〇〇二年のことをなぜ今問題にしているかというと、やっぱりこの自立をキーワードにされたんですよ。制度の維持のためには、だから、その受給者が困っても、その受給の縮小とか、額の縮小とか、こういうことがあっても、制度の維持、これもう社会保障改革のときの常套句ですもの。二〇一三年の社会保障制度改革推進法も、自助、自立のための環境整備を進めることを目的として少子化対策を進めることなどというふうにされているんですよね。

 ずっとこの自立、自助、この言葉で自己責任、家庭責任、これを求める政治の流れが続いていると。で、公的な支援というのは、真に必要な者という言葉で対象が絞られると。給付金も、高等教育の無償化、これも、真に必要な、こういう言葉が繰り返されてきたわけですよね。困難を抱える大人に対する支援も、自立や自己責任の強調、これがやられると孤立や分断を生んでしまいます。子育て家庭であれば、子供も含めて孤立をしてしまう。

 私はやっぱり、この自立、自助ということを強調する政策の在り方、これは見直しが必要だと思いますが、この大きな考え方ですよ、ここはいかがですか、大臣。自立、自助、この見直し。

○国務大臣(野田聖子君) 一人親であっても自立をしたいという、そのためにスキルを身に付けたいということで、今般も、男女局の方になりますけど、デジタル女性人材の育成ということで御議論をいただいて、その方向に進んでいるところです。

 ですから、二〇〇二年にあってもITという話が出ているということは、やはり一定数、ITという中で確実に安定した収入を得ることで、一人親であろうと子供をしっかり育んで、育てていきたいという希望は自立としてありではないかと、それを応援していくことは当然政府としてもやるべきことだと思っています。

 ただ、それ以外でなかなかそこまで到達できない事情がある方に対しては、十分に子供を支えるという観点から、今後は、これまでもやってきているはずですね、子育て支援の相談支援、あっ、子育て家庭の相談支援、また一人親家庭等の支援。子育て家庭の支援として必要な取組はしてきているわけで、自立、自助と対立させることではないと思うんですね。一人親であっても様々な生き方を模索しているわけですから、そういう多くの声に、様々な選択肢とか取組に手を差し伸べることがやはり政治の必要性だと思っています。

 昨年十二月に閣議決定している基本方針、ここにおいても、今後の子供政策の基本理念の一つが、誰一人取り残さず、抜け落ちることのない支援を掲げているところであります。困難を抱える子供や若者、家庭が困難な状態から脱する、あるいは軽減することができ、生育環境にかかわらず子供が健やかに成長できるよう、子供と家庭に対するアウトリーチ型、伴走型の支援などに取り組む、そういうこととしているわけです。

○田村智子君 これね、大切なところなのでね。子供に関する施策の在り方として、私は、支援は子供の最善の利益ということを目的とすべきだと思います。自立を目的にしちゃいけないと思う。自立は結果だと思う。

 この自立、自助というのは自己責任ということになるわけですけど、子供の場合は家庭責任の強化と表裏一体なんですね。

 こども基本法案の提案者にお聞きします。
 基本法案第三条、この基本理念で、一号から四号は子どもの権利条約の四原則に基づいています。ところが、五号で、「こどもの養育については、家庭を基本として行われ、父母その他の保護者が第一義的責任を有する」、「家庭を基本」という文言が入ったんですね。

 子どもの権利条約第十八条は、政府訳で、父母又は場合により法定保護者は、児童の養育及び発達についての第一義的な責任を有するとしています。英語の正文ではプライマリーリスポンシビリティーと、第一の責任、最初の責任という意味ですね。責任を負っているのは保護者だけではないし、子どもの権利条約には家庭を基本とするということはないんですよ。子どもの権利条約では、締約国に保護者が責任を果たせるように支援することを求めて、適切な養育ができない場合は国家の介入やその第一の責任を果たすための支援を締約国に義務付けているわけです。

 なぜ保護者の第一義的ということだけでなく、責任ということだけでなくて、あえて「家庭を基本として行われ、」という文言が追加されたんでしょうか。
○衆議院議員(木原稔君) お答えいたします。
 三条の話でございましたけれども、五号について、まず子供の養育の主体として、主体とその支援について定めておりまして、「こどもの養育については、家庭を基本として行われ、父母その他の保護者が第一義的責任を有するとの認識の下、これらの者に対してこどもの養育に関し十分な支援を行う」としているところであります。

 この点、家庭での養育については、児童の権利に関する条約の是非前文を見ていただきたいのですが、そこには、児童が家庭環境の下で幸福、愛情及び理解のある雰囲気の中で成長すべきであることを認めとしているところであります。また、児童の権利に関する条約は、先ほど委員おっしゃっていただいたように、十八条その一項において、父母又は場合により法定保護者は、児童の養育及び発達についての第一義的な責任を有すると定め、二項において、これらの者に対して適当な援助を与えるものとしているところであります。

 このように、三条の五号は子供の養育に関し十分な支援を行うことを基本理念として定めたものであり、このような支援が行われる背景として、子供の養育については家庭を基本として行われるという認識を述べたものでありまして、あくまでも子どもの権利に関する条約の考え方を反映したものであるということであります。

○田村智子君 その権利条約の言う家庭の環境、それは、子供の最善の利益を保障するために、やはりそういう家庭環境の下で育つというのは子供の権利の上で大切ということの意味だというふうに思うんですよね。

 この十八条は二項で、締約国は、この条約に定める権利を保障し及び促進するため、父母及び法定保護者が児童の養育についての責任を遂行するに当たりこれらの者に対して適当な援助を与えるものとし、また、児童の養護のための施設、設備及び役務の提供の発展を確保するというふうにしているんですよ。この保護者が責任を果たせるように支援するということは書いているんだけど、家庭が基本だから家庭でやってねというスタンスはないと思うんですよ。

 私は、これは条約と大事なところでずれがあるように受け止めています。保護者が子供に対する責任を果たすことができるように援助する、そこに国の責務があるんですよと。まして、今、自立、自助を強調する政府の政策によって、実際に家庭が孤立をしたり、子育て家庭が孤立をしたり、分断もされている。子育てに家庭責任の強調のようなことではなくて、その責任を緩和して、重荷を下ろして、国が支援をしますよということを強調することが必要ではないのかというふうに考えますが、そういう議論ではなかったんでしょうか。

○衆議院議員(木原稔君) お答えいたします。
 先ほど三条五号についてはもうその条文を申し上げましたけれども、その三条の五号とその児童権利条約の考え方というのは軌を一にするものでありまして、この条項は家庭にのみ子育ての責任を全て押し付けるものではないということをまずは申し上げておきたいと思います。

 また、本法案の立案から提出に当たっては、この提案者の元、私どものところに多くの子育て世代の方々から、子育ての現実として、子育てには喜びを感じる場面もある一方で負担を感じる場面も多いという、そういった様々な御意見をいただいたところであります。こうした御意見を踏まえまして、その三条の六号では、子育てに関する基本理念として、子育てをする者、しようとする者が家庭や子育てに夢を持ち、子育てに伴う喜びを実感できるよう、家庭における子育てをしっかりと支えるための社会環境の整備について定めているというところであります。

○田村智子君 これが子育て支援の法案なのか、それとも子供の最善の利益の法案なのか、これは密接不可分だけれども、私は違いがあると思うんですよ、そこは。「こどもの養育については、家庭を基本として行われ、」ということが、じゃ、子供にとってどういう意味になるのかということを考えなければいけないと思うんです。子供にとってどういうことになるのか。

 実際に、家庭で養育をされていて虐待を受けている子供が残念ながら少なくありません。家庭にいることが苦痛という子供もいます。家庭で養育を受けていない子供もいます。それらは、子供の責任ではないし、何というんでしょう、それは普通の在り方の家庭じゃないよというふうにしちゃいけないんですよ。現実としてそういう全ての家庭があることを前提にして子供の権利をどう守るかと。そのときに、親に対して、あなた、責任果たしていないよねと、責任果たせるようにと、これ叱咤激励とか罰則とかじゃないですよ。支援するというのは、それは子供に対する責任なんですよ。だけど、子供、家庭が基本ですよというふうにしてしまうと、その家庭にいること自体が苦痛という例えば子供、それはどう受け止めるかと。私は、それは子供を傷つける考え方でもあると思うんですよ。こういう議論が必要だと思うんですよ。

 これは、子育て支援と密接不可分だけど、子育て支援の法案とは私は違うと思うんです。違うと思うんです、そこは。親の立場は大切だけれども、だけど、よって立つのは子供なんですよ、子供の視点。そう考えたときに、今私が提起した問題、これ大切な議論だと思うんですけど、もう一度、いかがでしょうか。

○衆議院議員(木原稔君) 本法案の三条五号について、先ほどから申し上げておりますが、子供の養育は家庭を基本として行われるとの認識との部分については、児童の権利に関する条約の前文に同様の趣旨の記述があるということを先ほど申し上げました。

 すなわち、家族が児童の成長及び福祉のための自然な環境であるとされて、また、児童は家庭環境の下で幸福、愛情及び理解のある雰囲気の中で成長すべきであるとされているところを改めて確認いたします。

 その上で、この条文では、家庭での養育を受けることが困難な子供、先ほど委員御指摘の、そういった子供に対してもその健やかな成長のためにできる限り家庭と同様の養育環境を確保することを子供施策の基本理念として定めさせていただきました。

 そして、御指摘の子供の最善の利益の考慮とは、その子供の利益が保護者その他の者の利益よりも先に考慮される要素であるという、そういう意味であります。申し上げるまでもないことでありますけれども、先ほど虐待の話がありましたが、保護者による虐待などの事情を有する、そういった子供たちまでもが保護者とともに家庭にいることが基本であるという、そういった規範を示すものではございません。

 すなわち、「家庭を基本」という文言から導かれているものは、家庭を基本にできない事情のある子供たちにもその健やかな成長のために望ましい養育環境が確保されるようにするというのがこの基本法案の考え方であります。

○田村智子君 家庭は基本ということと家庭環境を保障するというのは意味違いますよ、これ。家庭環境と家庭はイコールじゃないですよ。こういう辺りの議論も、私とても大切だと思うんですよ。家庭というと個別具体的なんですよ。自分の家庭になるわけですよ。そのことが息苦しいという子供は現にいる。それから、そのことが強調されて、家庭が基本だよというのは、親の立場から見てもそれが子育てを重苦しくしているという現状があるんですよ。

 ちょっと大臣にもお聞きしたいんですけれども、総理が、私の本会議の質問の中で、いろんな方からお話聞いて、子育て家庭が今孤立をしているというふうに答弁をされたわけですよ、まず最初に。そうすると、子育て家庭は孤立している、自立、自助を強調する政府の政策によって特定の、本当に、真に困っているところは支援するけれども、そうじゃないところは頑張れと言われちゃって、コロナをめぐる給付金なんかでもいろんなことが起きるわけですよ。お互い苦しくても、給付金が行くところと行かないところ、そこでまたいろんな分断が起きると。非課税世帯には支援があるけれど、そこをちょっと超えると大学等々の教育費や奨学金等々も、そのちょっと超えたところが一番苦しいんですよ、支援なくなっちゃうと。あるいは、この委員会で度々議論になっている中間所得層はどうなんだという議論とかがあるんですけれども。

 こういう自立、自助を強調するようなやっぱり政策によって、子育ての責任というのが家庭に本当に強調されてきたと思うんです。それが子供も追い詰めているし、大人も追い詰めている。やっぱりそこを緩和する支援策ということがこういうことを議論するならば進められるべきだというふうに考えますが、子育ての自己責任、家庭責任、そこを緩和するという方向が、支援が必要だと思いますが、いかがですか。

○国務大臣(野田聖子君) 家庭が何であるかということで、これは大人の視点でなく子供の視点で申し上げるとするならば、子供の権利だと思います。家庭に、という居場所に子供が常にいれる権利だと思います。子供の権利です。

 家庭がいい悪いじゃなくて、家庭を担っている人、それが一番近い保護者になるんですね。大人の保護者、これが大体は親なんですね、生物学的に親だったり。そこが、先ほど申し上げたように苦しんでいたり、何か立ち止まってしまうと子供に負荷が掛かるという考え方を持つべきではないかと思います。

 常に、子どもの権利条約の中にある家庭養護の下というのは子供の権利なんです。だから、家庭というのは、子供がいつも居心地いい場所として得なければならない権利のところであって、それの阻害要因は、そこにいる一番身近な保護者たる、まあ大体は父母に何か問題があったとき、それが例えば貧困であったり、例えばメンタルなものであったり、例えば障害であったり、様々それはあります。そこをしっかりサポートすることで子供にとってのその居場所をちゃんと確保するという意味で、こども家庭庁というのはその両方が相まって子供の権利をしっかりと支えていける、そういう私は位置付けとしてこども家庭庁の家庭というのはあるのであって、大人がどうのという話ではなかろうと思います。

○田村智子君 通告したのを大分積み残したので次回に回していきたいと思いますけれども、一つだけ。問題があったときに支援するんじゃないんだと思うんですよ。全ての家庭で子供たちが居心地がいいようにできるように支援をするのが国の責務なんですよ。それは、全ての保護者に対して第一義的な責任が果たせるようにと。これは、この辺とても大事な議論なので、また続けていきたいと思います。

 今日はこれで終わります。ありがとうございました。


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