活動報告

活動報告
放送法の解釈変更/真相徹底究明迫る/田村智氏「統一見解の撤回を」/政府判断で電波停止「G7で日本だけ」/参院予算委

 日本共産党の田村智子議員は13日の参院予算委員会で、放送法の解釈変更に政治的圧力がかけられたことを記した総務省の行政文書を取り上げ、「放送の自由への介入が官邸主導で画策された疑惑は極めて重大だ」として、真相の徹底究明を求めました。

 政府は放送法の「政治的公平」について、放送事業者の「番組全体を見て判断する」としていました。しかし、2015年5月に当時の高市早苗総務相が「一つの番組のみでも」判断できると「補充的説明」の答弁をし、政府統一見解を発表しました。

 田村氏は、文書内で解釈変更を求めたのは元首相補佐官の礒崎陽輔氏で、「補充的説明をしてはどうかと意見しました」「総務省とは数回にわたって意見交換」(3日、ツイッター)したと本人も認めるなど、官邸の圧力で解釈変更がなされた外形的事実は明らかだと強調しました。

 松本剛明総務相は、礒崎氏が総務省の聞き取りに「事実だと認識している」と述べたと認めました。田村氏は、特定の番組について礒崎氏が「放送法上許されるはずがありません」(14年11月24日、ツイッター)との立場で総務省に意見し、一番組で放送法違反を判断できる「補充的説明」がつくられたと指摘。同氏の証人喚問を要求しました。

 田村氏は主要7カ国(G7)で「政府の判断で電波停止もあり得るのは日本だけだ」と批判し、統一見解を撤回するよう求めました。

 

 

収入保障する法制度必要/少子化対策、田村智議員求める/参院予算委
 

 「政府は30年にわたって少子化対策を(政策の柱に)位置付けてきたが、少子化に歯止めはかからない」―。日本共産党の田村智子議員は13日の参院予算委員会で、少子化の背景には非正規雇用の増大があるとして、安定した働き方と収入を保障する法制度をつくるよう求めました。

 

家庭諦める事態

 直近の「出生動向基本調査」では、18~34歳の男女8割以上が将来結婚するつもりだと回答。ところが、連合の調査によれば、女性が初めて就いた仕事が正規雇用か非正規雇用かで、配偶者や子どもの有無に大きな格差が生じています。(グラフ)

 田村氏は「非正規雇用という不安定な働き方と低賃金が、家庭を持ちたいと望んでいてもかなわない、諦める、こういう事態を招いている」と指摘。岸田文雄首相は「希望する非正規雇用の方の正規化に向けた取り組みの強化を図っている」と答弁しました。

 田村氏は、日経連(現在の経団連)が1995年に「新時代の日本的経営」を提言し、非正規雇用を増やす方針を示したことで、正社員のリストラ、非正規雇用への置き換えが進んだと指摘。「安定した働き方と収入を保障する新たなルールが求められている」と主張しました。

 

「無期転換逃れ」

 その上で、田村氏は本人が契約更新を望んでいるのに、「雇い止め」する事例が増えているとして「無期転換逃れ」の問題を追及しました。

 10年前につくられた労働契約法の無期転換ルールは、1年契約の労働者が契約更新で5年、研究者であれば10年を超えると、本人の申し出により無期雇用への転換が可能となりますが、無期転換の前に雇い止めされる事例が多発しています。

 田村氏は、全ての国立大学法人がコンサルティング契約をしている民間企業が開発した人事労務のオンライン講義で、問題とされずに雇い止めするためのポイントが徹底され、ある大学では「雇い止め研修」として実施されていると指摘。さらに、厚生労働省が無期転換逃れの雇い止めに対し、理由さえ説明すれば、契約更新に上限を設けて、機械的に雇い止めしていいというような提案まで行っていると批判しました。

 永岡桂子文部科学相は「(雇い止め研修は)承知はしていない」と答弁。加藤勝信厚労相は「紛争防止を目的として、理由の説明義務を課すものだ」と言い逃れました。

 田村氏は「裁判にも訴えさせないようなやり方で雇い止めできるという指南になってしまう」と厳しく批判しました。

 


2023年3月14(火) しんぶん赤旗

 

 

 

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
 放送法の政治的公平性について、一つの番組だけで判断するのではなく、放送事業者が放送する番組全体を見て判断する、これが一九六四年以来、放送法第四条の解釈とされてきました。ところが、二〇一五年五月十二日、参議院総務委員会で高市総務大臣が、一つの番組のみでも極端な場合においては政治的公平性を確保しているとは認められないという補充的な説明を行い、翌年、従来の解釈に補充的な説明を加えたものが政府統一見解とされました。

 一つの番組だけで政治的公平性を確保していないと政府が判断する場合がある、放送事業者を行政指導できる、電波の停止もあり得るという政府統一見解は、報道の自由、表現の自由を侵害する重大な放送法の解釈変更にほかなりません。総務省が公表した文書は、官邸の圧力で解釈変更、政府の言う補充的説明がなされたことを示しており、真相の徹底究明が求められています。

 まず、政府の言う補充的説明が行われた経緯について、外形的な事実を確認いたします。
 二〇一四年十一月から二〇一五年にかけて、安倍総理の総理補佐官であった礒崎陽輔氏が政治的公平性の解釈について総務省に説明を求め、複数回の意見交換をした、これは事実ですね。

○国務大臣(松本剛明君) 今お問合せがあった当時の総理補佐官、礒崎補佐官から放送法に関するお問合せがあって、それに対応したということは関係者の聞き取りなどで確認をさせていただいておりますが、今回行政文書として皆様に公表させていただいたものの一つ一つについては確認をさせていただいているところで、その文書の中の内容であるとか回数であるとかについてはまだ関係者の皆さんも正確な記憶はないということでございました。

○田村智子君 立憲民主の小西議員がこの問題で質問に立った三月三日、礒崎氏はツイッターに次のように投稿しています。(資料提示)私が総理補佐官在任中に放送法が定める政治的公平性の解釈について総務省と意見交換をしたのは事実です、昭和三十九年の政府解釈では分かりにくいので補充的説明をしてはどうかと意見しました、総務省とは数回にわたって意見交換し、それらの経緯も踏まえ、後日、責任者である総務大臣が適切に判断したものと。

 一方の当事者が文字で明確に説明をしています。昭和三十九年の政府解釈、政治的公平性は、一つの番組ではなく、放送事業者の番組全体を見て判断する、これが分かりにくい、補充的説明をしてはどうかと礒崎氏が総務省に意見し、補充的説明について意見交換を行ったということですね、松本大臣。

○国務大臣(松本剛明君) 御指摘の文書の一つ一つの経緯についての正確性は確認が必要でございますので、その経緯で行われたかはあれですが、今お話があったように、平成二十七年の五月かな、に総務委員会で当時の高市大臣が答弁をさせていただいたことは、当然のことながら、国会でのことで、確かであります。

 その上で、この経緯でということでありますが、政府の統一見解、二十八年の統一見解は、番組全体を見て判断をするというこれまでの解釈を補充的に説明するものであり、極端な場合については一つの放送番組のみを見て判断するとされていますが、これは、一つ一つの番組、放送番組の集合体が放送番組全体であるから、放送番組全体のバランスを見つつ行うものであるということでございます。(発言する者あり)

○委員長(末松信介君) 速記を止めてください。

   〔速記中止〕

○委員長(末松信介君) 速記を起こしてください。
 それでは、これに基づく答弁でございます。
 松本総務大臣。

○国務大臣(松本剛明君) 大変失礼をいたしました。
 補佐官が意見交換をしたのは事実ですと述べていることは承知をしておりますが、私どもとしては放送法の解釈について御説明をさせていただいたと理解をしております。

 なお、礒崎元総理補佐官御本人にも聞き取りをさせていただいているようですが、ツイッターの内容は、御本人は事実だと認識しているとおっしゃったというふうに報告を聞いております。

 私どもとしては、文書に記載されている打合せの回数や個々の発言について各参加者等にも確認をいたしておりますが、正確であるとの認識は示されていないというふうに理解をいたしております。

 私どもとしては、放送法を所管する立場から放送行政を適切に運営することが大切であると考えており、そのようにさせていただいていると御理解をいただきたいと思います。

○田村智子君 もう一方の当事者が文字で記録として残しているんです、つい最近。
 礒崎総理補佐官がなぜ総務省に意見をしたのかということも、二〇一四年一月二十三日の礒崎氏のツイートで見てみたいと思います。日曜日恒例の不公平番組が今日も放送されています、仲間内だけで勝手なことを言い、反論を許さない報道番組には法律上も疑問があります、特定秘密保護法でも集団的自衛権でも、番組に呼んでいただければいつでもきちんと説明します。翌二十四日、礒崎氏のツイート。偏向した報道番組はたくさんありますが、一切の反論権を認めないような番組は最悪です、放送法上許されるはずがありませんと書いています。二十六日のツイートは、総務省の言う放送法の総合的な公平論についてはもう少し論点を詰める必要があると。

 この二〇一四年十一月二十三日というのは、安倍総理が突然衆議院を解散した二日後です。総選挙目前の時期、集団的自衛権や特定秘密保護法について触れた特定の番組について、法律上疑問がある、放送法上許されるはずがないとして、総務省に放送法四条、政治的公平性について説明を求めた。これは、礒崎氏のツイートからも、また総務省の文書からも、特定の番組について放送法上疑問だとする問題意識を前提とした説明や意見交換が行われたということ示されていると思いますが、大臣、いかがですか。

○国務大臣(松本剛明君) 礒崎元補佐官がそれぞれどのような意見を発表されているかについて私どもとして申し上げる立場にないかというふうに思いますが、総務省としては、御説明を申し上げた上で、しっかりと、お話もありますように、放送法の政治的公平性は表現の自由、国民の知る権利に関わる大変大切なものでありますので、解釈を変えることなく必要な補充的な説明をさせていただいた。

 是非御理解をいただきたいのは、二十八年政府統一見解を示しました後の総務委員会におきましても、当時の高市総務大臣が解釈を変えたものではないと国会において御答弁をさせていただいておりまして、放送行政を変えたものではないと私は認識をいたしております。是非その御理解をと思っております。

○田村智子君 私は外形的事実をまず確認しているんですね。
 総務省の出した文書も、その平成二十六年十一月二十八日、一番最初に礒崎総理補佐官とのやり取りが始まったときの資料ですね。ここで、その経緯というところでは、特定の番組について礒崎氏がツイートをたくさん行っていますという事実が書かれているんですよ、事実が、総務省の文書で。だから、こういう問題意識の下で行われた意見交換であるということは外形的事実です、これはもう。

 総務省に説明を求められた、礒崎氏に説明を求められた総務省は、当然、従来の政府解釈を説明します、一つの番組ではなくという。それでは特定の番組を放送法四条違反とはできない。一つの番組のみで四条違反とできる補充的説明が必要だったということですよ。

 二〇一四年五月十二日、高市大臣がその補充的な説明を行った日にも礒崎氏はツイートを行っています。従来はその放送事業者の番組を総合的に見て判断するとしていたのですが、極端な場合は一番組でも、政治的公平性に反する場合があるとしたのですと。従来の解釈では、放送法四条、政治的公平性違反にならないものを四条違反にできるという重大な解釈変更が行われたということにほかなりません。礒崎氏自身がそういうこと説明しているに等しいです。

 総理は放送法の解釈について様々な議論が交わされるのは当然のことという答弁もされていますが、しかし、特定の番組を放送法上許されないとした総理補佐官が、一つの番組だけで放送法四条違反をできるとする議論を進めて、これが政府の統一見解となったんですよ。これが当然の議論ですか。当然のことですか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) まず、御指摘のこの行政文書についてですが、これ、元総理補佐官からの問合せをきっかけとして、総務省が放送法を所管する立場から、放送法の解釈について従来の解釈を変更することなく補充的な説明を行ったものであると認識をしています。

 そして、総理補佐官について再三指摘がありますが、総理大臣補佐官というのは、総理大臣の命を受け、内閣の重要政策のうち特定のものの企画及び立案について総理を補佐することをその職務としており、もとより政策を決定したり行政各部を指揮監督したりする立場にはありません。

 これ、礒崎元総理補佐官の担当事務、これは国家安全保障に関する重要政策及び選挙制度です。これ、幅広い重要、情報収集の一環として放送法の解釈等について総務省に照会するということは考えられると思います。しかしながら、総理補佐官が総務省を含む行政各部に対して指示をしたり指揮監督を行う、こういったことはそもそもできないわけであります。そういった総理補佐官の問合せをきっかけとして、あくまでも総務省がこの解釈について変更することなく補充的な説明を行ったものであると認識をしております。

○田村智子君 今まで示したとおり、礒崎氏は特定の番組を放送法上許されないと自ら記録しているんです。その直後に総務省に問合せをした。そのことの事実を認めて何と自分で書いているか。意見をしたんですよ。補充的な説明が必要ではないかと意見をしたと御本人が文字で記録をしているんですよ。
 これ、権限がなくても意見をしたと自分で書いているんですよ、権限がないことについて。これが当然のことなんですかと聞いています。(発言する者あり)

○委員長(末松信介君) 静粛にしてください。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 先ほど申し上げたように、この政策を決定したり行政各部を指揮監督したりする立場には、この総理補佐官という立場の人間はありません。ただ、そうした総理補佐官が幅広い情報収集の一環としてこの放送法の解釈等について照会する、これはあり得ることだと思います。

 その問合せをきっかけとした議論ではありますが、総務省があくまでもこれ放送法の解釈についてその補足的説明を行った、こういったことであります。総務省が自らの判断で放送法の解釈について従来の解釈を変更することなく補充的な説明を行った、こういった経緯であったと認識をしております。

○田村智子君 放送法を所管する立場には全くない総理補佐官が、特定の番組について放送法上許されないとして総務省に説明を求め、補充的な説明が必要だと意見をして議論をしたんですよ。これ当然なんですか。これが当然なんですか。

○国務大臣(松本剛明君) 礒崎補佐官がどのような意見をしたか、そして先ほどツイートでも申し上げたように、礒崎補佐官はそのようなことを言ったと御自分では認識しているというふうにはおっしゃっておられましたが、是非御理解をいただきたいのは、先ほど停波、電波を止めるという話がありましたが、この政府統一見解の直後の平成二十八年三月三十一日の参議院総務委員会で、「業務停止命令の要件として公共の電波を使って繰り返されている場合と明確に述べていらっしゃいますので、一つの番組のみの判断で業務停止命令がなされることはないということでよろしいですよね。」という質問に対し、高市総務大臣は「それは一〇〇%ございません。」と答弁をしておりまして、放送事業者が自律的にしっかりと放送法を守っていただくことが基本でありますが、私どもとしても、その放送行政を変えていないということ、当時から答弁をさせていただいているというふうに理解をいたしております。

○田村智子君 もう聞いてないことをべらべらと答弁するのやめてほしいんですよね。私はこの経緯について聞いているんです。

 それで、皆さんがその正確性を今確認中だというこの文書の中には、その補充的な説明の案を作ったのは礒崎氏だというものも出てくるわけですよ。まさに官邸の圧力によって、官邸の介入によって、放送法全く関係ない、所管もしていないその総理補佐官が、特定の番組に対して、放送上許されないという自らの見解の立場に立って総務省との意見交換をし、補充的な説明が作られていったということは、礒崎氏のツイートとこの総務省の行政文書から余りにも明らかだと思います。

 今聞き取りをしているということでしたけれども、これは総務省の聞き取りだけで終わらせることなんかできない問題です。やはり首相補佐官であった礒崎陽輔氏の証人喚問を求めます。

○委員長(末松信介君) 後刻理事会で協議をいたします。

○田村智子君 そして、今の政府統一見解です、二〇一六年二月十二日。一つの番組のみでも政治的公平性の判断ができると言うにとどまらず、放送事業者への行政指導、指導に、繰り返し指導しても従わない場合の電波停止にまで言及する。この政府統一見解、これ、大変国民からも報道関係者からも強い抗議の声が当時も上がりました。

 日本弁護士連合会は、同年四月に意見書を提出しています。その中で、戦前、政府批判を政府が抑圧した強い反省を踏まえるということにも言及して、報道の対象となっている政府自身が、政治的な言論について政治的公平性を判断して、放送事業者に対して行政指導を行ったり、さらには電波停止の措置をとることができるとすれば、憲法二十一条一項が保障する放送事業者の報道の自由に抵触する事態となると、大変重い指摘をしています。

 そもそも、放送法は、その第一条で、放送の自律を保障することによって放送の表現の自由を確保するとしています。政治的な公平性というのは、放送事業者の自律的な、倫理的な規範であると、事業者の独自の努力の中でこれは保たれていくんだと、確保されていくんだと。それは、憲法二十一条、表現の自由の保障、ここに立ってのことだということなんですよね。

 改めて見てみますと、G7に加盟する国ではどこでも、放送における言論、表現の自由を徹底する観点から、政府が放送に介入しないように、放送事業者への免許あるいは監督、これは第三者機関に委ねているんですよ。政権が放送の内容に介入できるかのような政府統一見解を出す、政府が政治的公平性を判断する、番組内容によっては行政指導を行う、電波停止もあり得る、こんな国は海外では異常であり、G7では日本だけなんです。

 総理、まずG7サミットに向けても、この二〇一六年政府統一見解は直ちに撤回すべきではないでしょうか。いかがですか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 我が国は議院内閣制を採用しており、内閣の一員である各省大臣が責任を持って行政を執行することが原則であると認識をしています。また、放送を含む情報通信分野は、技術革新や国際競争が激しく、国家戦略的対応が求められます。したがって、機動的、総合的な判断が可能となるよう、内閣の構成員である大臣の責任の下において規制と振興の両輪で迅速に取り組んでいく体制が有益であり、我が国のこうした体制は適当であると考えております。その総務省が判断したということであります。

 撤回、そして、前の前の内閣において総務省において判断したこと、これを政府として今踏襲している、引き継いでいるということであります。これを撤回することは考えておりません。

○田村智子君 放送の自由、これをどう保障するかと。世界各国から、余りに異常ですよ。そのことが分からない。この政府統一見解が本当にどのように作られたか、その経緯の異常さも分からない。これは、私、本当、岸田政権は民主主義の根幹というものをどう考えているのかというふうに指摘せざるを得ません。

 こういうことが行われたとき、どういう政治情勢だったか。特定秘密保護法が強行採決される。集団的自衛権の行使容認が閣議決定だけで、国会で何の議論もされずに決められてしまう。そして、その具体化として安保法制の強行が行われていったと。こういう、安倍政権が憲法を踏みにじって戦争する国づくりを進めていたその裏側で、放送の表現の自由への介入、これが官邸主導で画策をされていたということが、この総務省の文書からも、礒崎氏のツイートからももはや明らかです。この疑惑は極めて重大であり、真相の徹底究明を重ねて求めます。

 次に、少子化対策についてお聞きします。
 政府は三十年にわたって少子化対策を位置付けてきましたが、少子化に歯止めは掛からないどころか、出生数の急激な減少が続く深刻な事態となっています。

 既に政府からも、市民団体や有識者からも、その要因というのは共通して指摘されていることがあるんです。先ほどもありましたその教育費の負担の重さ、あれ、そうですよね。それから、若年層の収入の減少。出産、育児が女性の重い自己責任となっている。もう共通して指摘されているんです。この分析に立てば、一つには若年層への収入の保障、二つには経済的な支援、高等教育含む教育費の負担の軽減とか、先ほどの奨学金返済の減額や免除、あるいは住宅手当の創設などなど、そして三つ目にジェンダー平等に本気で取り組むと、こういう三つの分野全てにおいて従来の枠を突破した政策が求められているのは明らかです。

 今日は時間の関係で、一つ目の若年層の収入の保障に関わって質問いたします。
 直近の出生動向基本調査を見ますと、十八歳から三十四歳の男女の八割以上が将来結婚をするつもりだというふうに回答しています、八割以上が。しかし、この資料を見てください。正規雇用と非正規雇用とで配偶者がいるかどうかに大きな格差が生じているんです。三十歳から三十四歳の男性、正規雇用では約六割が配偶者がいる。しかし、非正規の職員は二二・三%、パート、アルバイトでは一五・七%にとどまります。

 女性については、日本労働組合総連合の非正規雇用で働く女性に関する調査二〇二二を見てみたいと思います。初めて就いた職が正規雇用か非正規雇用かで、やはり配偶者がいるかどうか、子供がいるかどうかが大きな格差となって表れています。

 非正規雇用という不安定な働き方と低賃金が、家庭を持ちたいと望んでいてもかなわない、諦める、こういう事態を招いているのではないかと考えますが、総理、いかがですか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 少子化の問題は、結婚や出産、子育ての希望の実現を阻む様々な要因が絡み合って生じています。若者の経済的な不安定さを始め、希望の実現を阻む障壁を一つ一つ取り除いていくことが重要です。

 若い世代の非正規雇用労働者の未婚率は特に男性で正規雇用に比べ顕著に高くなっており、雇用の安定を図り経済的基盤を確保することで若者が将来にわたる希望を描けるようにすることが重要です。

 若者の雇用の安定等に向けては、ハローワーク等での安定就労に向けた就職支援、同一労働同一賃金の遵守の徹底や、希望する非正規雇用の方の正規化に向けた取組の強化、これを図っているところですが、これらに加えて、L字カーブの解消などを含めた男女共に働きやすい環境の整備、構造的賃上げなどを進め、日本の未来を担う若い世帯の可処分所得の向上を実現し、未来に希望を持って生きられる社会をつくっていくことが重要であると考えております。

 こうした取組によって、この若い世帯の可処分所得の向上を図り、未来に希望を持って生きられる社会実現に向けて取り組んでいきたいと考えています。

○田村智子君 資料を見ていただきたいんですけど、一九九〇年がいわゆる一・五七ショック。政府は、九四年に初めての総合的な少子化対策、エンゼルプランを打ち出しました。一方で、一九九五年、日経連、今の経団連ですね、ここが新時代の日本的経営という非正規雇用を増やす方針を示して、政府も、正社員のリストラ、非正規雇用への置き換えを政策的に進めました。

 少子化が問題になった九〇年代と比べて、二十代から三十代、非正規雇用は割合でも人数でも本当に大きく増えたままになっているんですよ、今も。働いていても、親と同居しなければ生活が成り立たない、貯金ができない、六か月とか一年の短期契約を更新しながら働くので将来を見通せない、こういう非正規雇用を必要とする経済、若者の将来不安を必然とする経済でいいのかと。やはり、安定した働き方と収入を保障する新たなルールが求められているというふうに思うんですね。

 ちょっと時間がないので先に進みたいんですけれども、じゃ、その非正規雇用をもっとなくしていこうよと、正規化していこうよと、安定雇用にしていこうよということでは、実は十年前に新たな法制度が作られたんです。それが、労働契約法の無期転換ルールです。例えば、一年契約で働いている人が、契約更新をしながら五年、研究者の場合は十年なんですけれども、ここを超えたら本人の申出によって無期限の雇用契約に転換されるというルールです。

 ところが、このルールができたことで、本人が働き続けたいと希望しているのに雇い止めされてしまう、こういう事例が増えています。民間企業でも起きていますが、国の足下、国立大学や理化学研究所などでは、今まさに数千人規模で研究者が雇い止めされようとしています。研究プロジェクトの途中の方、継続雇用を希望している方、多数おられます。

 総理、不本意非正規をなくすというならば、政府の足下で不本意に雇い止めされている、この事態は直ちに止めるべきではないですか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 国立研究開発法人や国立大学における研究者等の雇用管理については労働関係法令に基づき自律的に対応すべきものでありますが、仮に無期転換ルールの適用を意図的に避ける目的でいわゆる雇い止めを行うようなことがあれば、労働契約法の趣旨に照らして望ましくないものであると認識をしています。

 このため、文部科学省において、先般、各機関における研究者の雇用状況等について調査を実施し、調査結果を踏まえ、本年二月、キャリアサポートに関する取組例も併せて周知するなど、改めて各機関に適切な対応を求めたところであると承知をしています。

 引き続き、各機関における労働契約法の特例ルールの適切な運用について、関係府省で連携して対応させてまいりたいと考えます。

○田村智子君 意図的に避ける目的でやったら駄目だよと、無期転換を意図的に避ける目的でと、そうやっていてこの三月で数千人規模で切られようとしているんですよ。数千人規模で切られようとしているんですよ。止まっていないんですよ。

 今、全ての国立大学法人が人事コンサルティングの契約をしている民間企業が、人事労務のオンライン講義というのを開発したんです。ある大学では、このオンライン講義の一つを雇い止め研修と呼んで、新たに非常勤職員を雇い入れる契約更新をする前には、必ず雇い止め研修を受けるようにと教授などに徹底しているんです。契約更新に上限があること、契約更新の可能性を慎重に説明すること、合意を得て記録を残すことなどですね、今言ったこれは意図的じゃないよと、いや、意図的じゃないよと示すかのような、だけど無期転換の権利を与えない、その期限のうちにスムーズに雇い止めをするというポイント講義になっているんですよ。

 例えば、その中では、同じ職場に更新上限に達した後も継続雇用されている事例が多数あると、更新上限を設けていてもこれは形骸化しているとみなされて雇い止めが無効になる可能性が高いと、こんな指摘まであるんですよ。これでは、例外的に、機械的に雇い止めしなさいよと誘導しているのと同じですよ。
 文科省、このような雇い止め研修が行われていることを承知しているんですか。

○国務大臣(永岡桂子君) お答え申し上げます。
 国立大学の労務管理やその研修につきましては各法人の判断により行われているものでございまして、文部科学省におきましては、それぞれの具体的内容については承知はしておりません。

 文部科学省といたしましては、各種会議や通知等を通じまして、無期転換ルールの適用を意図的に避ける目的でいわゆる雇用止めを行うことは労働契約法の趣旨に照らしまして望ましくないことにつきまして周知に努めてきたところでございます。

○田村智子君 この雇い止め研修の中には、妊娠や出産等以外を理由とする雇い止めまで禁止されているものではありませんとも述べています。この間の法改正を全く踏まえない、妊娠、出産を契機に仕事を辞めざるを得なかった女性たちの苦悩を歯牙にも掛けない、こんな中身になっていますよ。

 この無期転換逃れの雇い止めについては、労働政策審議会でも議論されています。その上で、厚労省の提案は、契約の更新回数に上限を定めたり、その回数を引き下げるときには労働者に理由を説明しなければならない、つまり、理由さえ説明すれば、契約更新に上限を設けて機械的に雇い止めしていいですよというような提案まで行っているんですよ。今まさにそれが問題になっているんです。上限設けられてしまって、雇用継続望んでもそれが認められない。

 今後、こんなこと徹底されたら、若者が五年で、あるいは研究職では十年で辞めさせるということを前提に働かせてよいというルールが蔓延しかねないと思いますが、労働大臣、厚生労働大臣、どうですか。

○国務大臣(加藤勝信君) 今御指摘は、最初の有期労働契約の締結の後に新たに更新上限を導入することは、締約時点で更新の期待を有する労働者に不利益をもたらすこととなり、紛争の原因にもなりやすい。

 こうしたことから、昨年十二月に取りまとまった労働政策審議会の報告書に基づき、有期労働契約の変更や更新に際して更新上限を新たに定める場合、更新上限を引き下げる場合には、その理由を説明するよう使用者に義務付けることとする告示改正を行う予定であります。ただ、この告示改正は、委員のおっしゃるような趣旨ではなくて、紛争防止を目的として理由の説明義務を課すものであります。更新上限の設定を促進する趣旨ではないということでございます。

○田村智子君 だから、裁判にも訴えさせないようなやり方で雇い止めできますよという指南になっちゃうんですよ、これは。

 そのほか、非正規の公務の方々、三年で切ると、こういうことももう大量にやられようとしています。やっぱり、業務が継続するのに短期間で雇うと、これを見直すべきだと私は思います。それこそが安定した働き方、安定収入にやっぱりなっていきます。

 是非、やっぱり非正規雇用を、率としても割合としても人数としても減らしていくんだと。そのためには、長く続く仕事は長く雇って、その中で自らの力を伸ばして働ける、将来が見通せる働き方を法制度として、ルールとして作ることこそ求められている、このことを申し上げまして、質問を終わります。

 


 |