活動報告

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大軍拡推進予算が成立/田村政策委員長が反対討論/参院本会議

 敵基地攻撃能力保有など5年間で43兆円の大軍拡を進める岸田文雄政権の2023年度予算案が28日、参院本会議で採決され、自民党、公明党などの賛成多数で成立しました。日本共産党、立憲民主党、国民民主党、日本維新の会、れいわ新選組、沖縄の風などが反対。日本共産党の田村智子政策委員長が討論に立ち、「国民を犠牲にして大軍拡に突き進む戦後最悪の予算だ」と厳しく批判しました。

 一般会計総額は過去最高の114兆3812億円です。田村氏は、防衛関連予算・軍事費で前年度比89・4%、4・8兆円の増加だと指摘。敵基地攻撃能力保有は憲法に違反するとして、導入が狙われる「極超音速誘導弾」は政府が保有を否定してきた「他国の領域に攻撃的な脅威を与える兵器」であり、安保法制の集団的自衛権行使容認のもとで米軍が勝利するまで武力行使をすることになりかねないと強調しました。

 全国の自衛隊基地を核攻撃などに耐えうる地下シェルター化するためのゼネコン関係者の会合が明らかになったとして、敵基地攻撃能力保有と「安保3文書」の撤回を要求。復興特別所得税などの軍事費流用に反対しました。

 田村氏は、物価高騰に対して中小企業支援と一体に全国一律最低賃金1500円の実現と消費税の減税、インボイス(適格請求書)の中止を求め、国の責任による子ども医療費と学校給食の無償化、教育費の負担軽減を主張。原発の新増設、老朽原発の延命から再エネ・省エネ推進に転換し、基幹産業にふさわしい農業支援を訴えました。

 総務省の行政文書は安倍晋三政権の放送法解釈への介入を明らかにしたと指摘。放送局の停波も可能とする政府統一見解は憲法21条の表現の自由の侵害だと批判しました。

 同日の参院本会議で所得税、地方税、地方交付税の3改定法案が賛成多数で成立しました。日本共産党はいずれも反対しました。

 

2023年度予算案/田村政策委員長の反対討論/要旨
 

 日本共産党の田村智子政策委員長が28日の参院本会議で行った2023年度予算案に対する反対討論の要旨は以下の通りです。

 本予算案は、敵基地攻撃能力の保有、5年間で43兆円もの大軍拡を進めるものです。防衛関連予算・軍事費はプラス89・4%、4・8兆円も増額し、社会保障予算は自然増1500億円も抑え込むなど国民を犠牲にして大軍拡に突き進む、戦後最悪の予算であり、断固として反対です。

 第1に、敵基地攻撃能力の保有は憲法に違反します。岸田政権が導入しようという「極超音速誘導弾」は「他国の領域に攻撃的な脅威を与える兵器」でなくて、何なのでしょうか。政府のいう運用とは、安保法制によって集団的自衛権を認めた武力行使3要件であり、この場合の必要最小限の武力行使とは米軍が勝利するまでということになりかねません。

 第2に、日本を米国の戦争に巻き込み、日本に戦火をもたらす道です。「統合防空ミサイル防衛(IAMD)」は米国のミサイル戦略に日本を融合させるものです。すでに防衛省は日本国内の戦闘に備えた全国300カ所の自衛隊基地を生物・化学・核攻撃にも耐えられるよう地下シェルター化する計画を持ち、昨年12月にゼネコン関係者を集めた会合を行っていたことが明らかとなりました。「戦争国家づくり」を断じて認めることはできません。敵基地攻撃能力の保有、「安保3文書」の撤回を強く求めます。

 第3に、5年間で43兆円もの軍事費は暮らしを犠牲にし、日本経済を危機に陥れる亡国の道です。来年度予算でも復興特別税の軍事費への転用などは許されません。

 物価高騰に負けない賃上げには中小企業支援と一体に全国一律最低賃金1500円の実現こそ必要です。消費税減税とインボイス中止とともに、子ども医療費、学校給食の無償化を国の責任で行い、大学授業料半額など教育費の負担軽減などを一日も早く進めるべきです。

 原発の新増設、老朽原発の延命と再稼働は、福島の原発事故に無反省で新たな安全神話で国民の命と安全を脅かす愚策です。再エネ、省エネの100%自給を目指すべきです。農業の危機に対する基幹産業にふさわしい支援策を強く求めます。

 総務省の行政文書によって安倍政権が放送法の解釈に介入し、政府が番組の「政治的公平性」を判断でき、(放送局の)停波も可能とする政府統一見解がつくられたことが明らかとなりました。憲法21条の表現の自由への侵害です。政府統一見解の撤回と真相究明を求めます。立憲主義の回復、戦争国家づくりを止めるため、市民と野党の共闘の再構築に全力をつくすことを決意します。


2023年3月29日(水) しんぶん赤旗

 

 

 

○田村智子君 私は、日本共産党を代表し、二〇二三年度予算三案に対し、反対の討論を行います。

 本予算案は、専守防衛を投げ捨てた敵基地攻撃能力の保有、五年間で四十三兆円もの大軍拡を進めるものです。防衛関連予算、軍事費はプラス八九・四%、四・八兆円も増額し、その一方で、社会保障は自然増による必要額を一千五百億円も抑え込む、中小企業対策も農業支援である食料安定供給もマイナスとするなど、国民を犠牲にし、大軍拡に突き進む戦後最悪の予算であり、断固として反対するものです。

 第一に、敵基地攻撃能力の保有は、憲法に反します。
 岸田政権は、他に全然方法がないと認められる限り、誘導弾などの基地をたたくということは、法理的には自衛の範囲に含まれると従来の政府答弁の一部を切り取り、憲法の範囲内だと強弁していますが、国民へのごまかしにほかなりません。

 他に全然方法がないとは、国連の援助もなく、安保条約もないような場合であり、このような事態は今日においては現実の問題としては起こり難い、こういう仮定の事態を想定して、その危険があるからといって平生から他国を攻撃するような、攻撃的な脅威を与えるような兵器を持っているということは、憲法の趣旨とするところではない、これが歴代政権の政府答弁です。憲法九条二項が保有を禁ずる戦力についても、他国の領域に対して直接脅威を与えるものは禁止されているとし、ICBM、中距離誘導弾などを日本が持つことのできない武器だと明示してきました。

 岸田政権が導入しようという長射程ミサイル、極超音速誘導弾は射程距離三千キロと言われており、沖縄に配備した場合、日本近隣諸国の主要都市を全て射程に捉えます。これが他国の領域に攻撃的な脅威を与える兵器でなくて何なのでしょうか。

 憲法解釈との整合性について総理は説明ができず、運用上の問題と答弁しました。政府の言う運用とは、安保法制によって集団的自衛権を認めた武力行使三要件です。日本が攻撃をされていなくとも、在日米軍が日本周辺で軍事行動を起こしたとき、我が国の存立危機事態として米軍の相手国への敵基地攻撃があり得る、そして、この場合の必要最小限の武力行使とは、米軍への攻撃を排除するまで、つまりは米軍が勝利するまでということになりかねません。

 これら運用についても総理はまともに答弁ができず、個別具体的な状況で判断すると開き直りました。一たび他国の領域を攻撃できる兵器を持てば、その運用は時の権力に委ねられるというのでしょうか。

 二度と再び政府の恣意的な判断によって戦争を起こさないために憲法があり、歴代政権は慎重に憲法九条の解釈を引き継いできました。これさえ投げ捨てることは余りにも乱暴な立憲主義のじゅうりんと言うほかありません。

 第二に、日本をアメリカの戦争に巻き込み、日本に戦火をもたらす道だということです。 安保三文書が明記するIAMD、統合防空ミサイル防衛は、中国との覇権を争う米国のミサイル戦略に日本を融合させるものです。岸田総理は日本独自の運用だと言いますが、米軍は、インド太平洋軍のIAMD能力の拡大、同盟国などとの一体的な運用の重要性を強調しています。しかも、米国の戦略はちゅうちょなく先制攻撃を行うことであり、日本の安全保障どころかアメリカの戦争に巻き込まれると言わなければなりません。

 日本が集団的自衛権を行使し敵基地攻撃を行った後、相手国からの武力攻撃を受ける危険性について浜田防衛大臣は、大規模な被害が生じる可能性があると認めました。既に防衛省は、日本国内の戦闘に備えて全国三百か所の自衛隊基地を生物、化学、核攻撃にも耐えられるよう地下シェルター化する計画を持ち、昨年十二月からゼネコン関係者を集めた会合まで行っています。

 今、石垣島など南西諸島では、自衛隊基地に他国領土を攻撃するミサイルが配備されれば島に戦火が及ぶ、この島に住み続けることができるのかと悲痛な声が上がっています。加えて、佐賀空港への自衛隊オスプレイ配備の強行、広島湾での自衛隊と米軍の共同訓練など、民間港湾の軍事利用、また殺傷能力のある武器輸出も狙われています。

 このような戦争国家づくりを断じて認めることはできません。敵基地攻撃能力の保有、安保三文書の撤回を強く求めるものです。

 我が党は、平和の対案を提起してきました。米国、中国、ロシア、日本、韓国、インド、オーストラリア、ニュージーランドとASEAN十か国の首脳会議、東アジア・サミットは毎年開催されています。これも活用して、米中双方に軍事的緊張を高める行動をやめるよう働きかける、ロシアのウクライナ侵略も国連憲章違反を許すなの一点で共同を広げることこそ求められます。価値観や国の体制の違いで分断、対立するのではなく、ASEANと協力し、東アジア全体を平和と安定の地域にする外交努力を行うことこそ日本が果たすべき役割です。

 第三に、五年間で四十三兆円もの軍事費は、暮らしを犠牲にし、日本経済を危機に陥れる亡国の道です。復興特別税を軍事費に転用し、医療体制の強化に充てるべき国立病院機構と地域医療機能推進機構の積立金を大軍拡に流用することは断じて許されません。コロナ危機の教訓を踏まえ、医師、看護師の処遇改善と体制強化こそ進めるべきです。

 物価高騰への対策も部分的、一時的であり、暮らしそっちのけと言わなければなりません。物価高騰に負けない賃上げには、中小企業への思い切った支援と一体に、全国一律最低賃金千五百円の実現こそ必要です。消費税減税、インボイス中止は言うまでもありません。

 異次元と言いながら、少子化対策を本予算に盛り込まず、予算審議が終わってからたたき台を示すというのは、余りに遅く、国会軽視です。子供医療費と学校給食の無償化を国の責任で行い、大学授業料の半額など教育費の負担軽減、奨学金返済の思い切った減額措置、非正規雇用を増やした政治の反省に立って正規雇用を原則とする新たな雇用のルールを作るなど、一日も早く進めるべきです。

 また、原発の新増設、老朽原発の延命と再稼働は、福島の原発事故への反省をなきものにし、新たな安全神話で国民の命と安全を脅かす愚策であり、撤回を求めます。地域分散型の再エネと省エネに集中的な投資を行い、エネルギー一〇〇%自給を目指すべきです。

 農業の危機への無策も許されません。牛を殺すためではなく、牛を生かし酪農に希望が持てる予算こそ必要です。せめて輸入飼料、肥料の価格高騰分を全額補填し、基幹産業にふさわしい支援策を講ずることを強く求めるものです。

 総務省の行政文書によって、安倍政権が放送法の解釈に介入し、二〇一六年、政府が番組の政治的公平性を判断でき、停波も可能とする政府統一見解が作られたことが明らかとなりました。

 放送法第一条は、放送の自律を保障することによって、放送による表現の自由を確保するとしています。放送法は、ラジオ放送を利用して大本営発表を国民に広げ、侵略戦争を推し進めた痛切な反省に立ち、政府など公権力の放送への介入、干渉を禁止するために作られました。

 政権批判の番組を偏向しているとして官邸主導で政府統一見解が作られたことは、憲法二十一条、表現の自由を侵害するものです。政府統一見解の撤回と真相究明を求めるものです。

 安倍政権を引き継ぐ岸田政権が、民主主義の根幹を踏みにじり、大軍拡に突き進む今こそ、立憲主義の回復、戦争国家づくりを止めるため、市民と野党の共闘の再構築に全力を尽くすことを決意し、反対討論を終わります。

 


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