活動報告

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気象庁の定員増必要/田村智子氏 災害対応で主張/参院国交委

 防災情報提供の充実に向けて、国・都道府県の予報業務の高度化や民間の予報業務への参入拡大を図る気象業務法・水防法改正案が7日の参院本会議で全会一致で可決されました。

 日本共産党の田村智子議員は6日の参院国土交通委員会での質疑で、民間気象事業者からの情報提供の取り扱いについて質問。実際に防災対応を担う現場の自治体に混乱が起きないか、民間気象事業者との契約の有無によって安全確保に格差が生じないかとただしました。気象庁の大林正典長官は「国民の生命に関わる防災気象情報は、気象庁が責任を持って広く国民に向けてしっかりと提供していく」と答えました。

 さらに田村氏は、国による定員削減の強行で、気象庁の定員が1977年時と比べ1564人の純減となっているとして、「しっかりと漏れなく人命が守れる体制が本当に構築されているのか」と指摘。定員減のまま防災体制を強化したため、地方気象台では観測業務を担う人員が減り、きめ細かい記録や情報提供ができないなどの現状を示し、「自然災害が激甚化するなか、このまま人の削減を続けては、気象庁の役割や責任が果たせなくなる可能性がある」とただしました。

 斉藤鉄夫国交相は「必要な体制の確保に取り組む」と答弁。田村氏は過去には災害多発を受けた定員増員もあったとして、「必要であれば増やせる」と主張し、大幅な定員増を重ねて求めました。


2023年4月15日(土) しんぶん赤旗ホームページ

 

 

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
 本法案によって、民間気象事業者が、気象予報だけでなく土砂崩れや洪水についての情報を契約した者に限定して提供することが可能となります。気象庁の体制を弱めて民間に任せるということではなく、現行の体制ではカバーし切れないピンポイントの災害予測ということであり、国民の命と安全を守るという観点から反対するものではありませんが、幾つか確認をいたします。

 洪水及び土砂災害の予報のあり方に関する検討会では、自治体が把握していない予報が住民に広がったり、問合せが自治体に殺到したり、未開設の避難所へ住民が避難を始めてしまうのではなどの懸念が市区町村から示されました。住民の避難に責任を負うのは自治体ですから、これは当然の懸念です。

 法案では、民間気象事業者が利用者に対して事前説明を行うことを義務付け、二次拡散を防止する条項がありますが、例えば民間気象事業者から情報を得た人が、隣近所や友人、あるいは同じ地域に住む親戚などに命や生活に関わる災害の可能性を黙っているということは考えにくいと思うんです。このことも踏まえて、自治体からの懸念にどう応えますか。

○政府参考人(大林正典君) お答え申し上げます。
 委員御指摘のとおり、土砂崩れや洪水の予報に関しては、有識者で構成される洪水及び土砂災害の予報のあり方に関する検討会において、自治体から、複数の発信元からの異なる予報が住民等に伝わることについての懸念が示されたところです。本法案では、こうした懸念を踏まえて、許可事業者に対して利用者への事前説明を義務付けるとともに、事前説明を受けていない人に予報事項が伝達されることを防止する措置を求めることとしております。

 さらに、気象庁としては、自治体から懸念されているような防災上の混乱が生じることのないよう、特定予報業務に関するルールについて、そのルールだけではなく、その目的も含めて分かりやすく事業者に周知をしていくほか、事業者における措置の実施状況について定期的な立入検査等を通じて把握するなど、防災に関する情報の適切な提供の確保に取り組んでまいります。

○田村智子君 ちょっと更問いになるんですけど、例えばその契約している工場とかホテルとか、そういう施設が災害発生の可能性があるという情報を得れば、当然従業員とかお客さんを避難させますね。そうすると、そういう避難要請を受けた人、あるいは避難しているのを見た人が間接的に情報を知ってその情報が拡散されるということは当然起こり得ると思うんですけれども、この辺りはどうでしょうか。

○政府参考人(大林正典君) お答え申し上げます。
 避難に直結する例えば洪水警報のような情報は、国が責任を持って提供してまいります。また、民間の許可事業者に対しては、気象庁等が発表した警報を利用者に対して伝達するよう、これは現行法でも求めているところでございます。
 こうした措置により、避難に関する混乱が起こらないように措置してまいりたいと思っております。

○田村智子君 そうしますと、そうなんですよ、避難の警報とかそういう情報を出すのは気象庁であり自治体なんですよ。だけど、そこでカバーし切れないところのピンポイントで洪水が、あるいは土砂崩れが起きる可能性がありますよということを民間事業者が出すわけですよね。そうすると、やっぱりここかなり懸念がやっぱり起きると思うんです。

 そうすると、やっぱりそういう懸念に応えるためには、民間事業者がそういう重大な土砂崩れ、洪水の可能性があるという情報を出すときには、やっぱり当該自治体とか気象庁に対する情報提供というのをセットで行うということは必要ではないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

○政府参考人(大林正典君) お答え申し上げます。
 国民一般の防災活動に必要となる防災気象情報の提供は、気象庁の重要な責務でございます。他方、予報業務許可事業者から提供される洪水や土砂崩れの予報は、契約の相手方の多様なニーズに応じて個別に作成し提供されるものでありまして、気象庁が全国各地を対象に、一般向けに発表する防災気象情報とは目的や役割が異なるものとなっております。このため、本法案においては、予報業務許可事業者が洪水や土砂崩れの予報を行うに当たって、その都度、気象庁などに情報提供することを求めることは考えておりません。

 いずれにしましても、気象庁としては、引き続き、観測及び予報技術の向上を図ること等により、国民の防災行動に資する適時的確な防災気象情報の提供に努めてまいります。

○田村智子君 そこは、でも私、ちょっと疑問が残るんです。今後、そのルール決めるときに、本当に混乱が起きないためにはどうするかということはやっぱり考えるべきだというふうに思うんですね。

 で、もう一つ、これが情報格差になって安全確保に格差が生じるということになってもいけないと思うんですよ。お金を出して契約をした人にだけ土砂崩れがあるよ、洪水の可能性があるよという情報が行くと、そうではない経済的弱者が取り残されるというようなことがあってはならないと思いますが、その点はいかがでしょうか。

○政府参考人(大林正典君) お答え申し上げます。
 繰り返しとなりますが、国民の防災活動に必要となる防災気象情報の提供は、今後とも変わらず気象庁の重要な責務でございます。提供する情報の高度化を継続的に進めながら、広く国民に向けてしっかりと防災気象情報を提供してまいります。

 一方、例えば工場における資材の避難の準備というようないわゆる企業BCP対応などの観点から、気象庁が提供している情報よりも更にきめ細かい情報へのニーズが高まっております。本法案により、気象庁が一般向けに提供する防災気象情報に加え、予報業務許可事業者によるきめ細かな予報が提供されるようになり、こうした個別的で多様なニーズに応えることも可能となってくると期待しております。

 いずれにしましても、国民の生命に関わる防災気象情報については、気象庁が関係機関と連携し、責任を持って広く国民に向けてしっかりと提供し続けてまいります。

○田村智子君 今の御説明でなるほどと思ったんですが、人間の避難だけじゃなくて時間の掛かる資材等々をもっと早めに動かさなきゃいけない等のニーズもあるのでというようなことだというのは今の御答弁で理解はしたんですけれども、やはりそうなりますと、気象庁の体制でしっかりと漏れなく人の命が守れるような観測と予報とそして災害に対する対応ですね、これが行わなければならないんだというふうに改めて確認をしたいというふうに思うんですね。そうすると、その体制が本当に構築されているかどうかというふうになると思います。

 資料をお配りしました。気象庁の定員の推移です。一九七七年時と比べると一千五百六十四人という大幅な定員削減になっています。測候所の廃止、空港出張所の民間委託、業務集約による地方気象台の体制縮小などが行われてきたためです。

 ある地方気象台、二〇一六年、三十一人体制から、一九年に二十七人へと縮小をされたとお聞きしました。防災業務を担う人員は三人増員になったが、観測予報業務を担う予報官や技術専門官等が七人の削減と。二〇二二年に防災業務の担当が四人増員になって三十一人体制に戻ったけれども、観測予報業務の増員はないままなんですね。

 そうするとどういうことになるかといいますと、三百六十五日二十四時間の予報業務と目視観測を行ってきたものが、観測業務は自動化される、予報業務は中枢官署に集約される、夜勤が廃止され、二十四時間体制で実施してきた地方気象台による自治体等への解説業務、これは原則日中のみというようになる。特に、夜勤がなくなったので、平時は連絡要員として宿直が一人いるだけとなって、夜中に突発的な災害が発生した場合、対応が遅れるのではないかという懸念の声が現場から上がってきています。
 こうした実態、大臣はどのように認識されるでしょうか。

○国務大臣(斉藤鉄夫君) 気象庁では、近年相次いでいる自然災害を踏まえ、地方気象台が市町村等と一体となり地域の防災に一層貢献するための体制移行を令和元年度から進めてきたところでございます。お示しの資料でも、この令和になってちょっとですが持ち直しております。具体的には、平時からの市町村等に対する地域防災支援や、管区気象台等と地方気象台が連携した予報業務実施の体制を強化してきたところです。

 委員御指摘のような現場の声があることは承知しておりますが、宿直体制に関しては、事前に災害が予想される場合等においてはあらかじめ人員を増強した体制をしくほか、応援者が迅速に参集可能な体制、地震などの場合は前もってという具合にいきませんので、しかし、迅速に参集可能な体制としており、防災対応においてこれまでに特段の問題は生じていないと聞いております。
 引き続き、地方気象台における適切な防災対応について体制の確保に努め、地域防災力の向上に一層貢献してまいりたいと思っております。

○田村智子君 大きな問題が起きないように体制を取らなきゃいけないわけで、今日の気候変動による異常気象はあちこちで起こることを見ても、果たしてここまで減らされた体制がそのままでいいのかということは問題提起せざるを得ません。

 地方気象台の観測業務の自動化、ここに伴って定時の目視観測が廃止をされたんです。目視観測では、例えば雨について、地雨、凍雨、霧雨、中雨など細かく分類して記録していたものが、自動になってからは時間ごとの雨量のみになったといいます。で、降ってくるのが氷である場合、その粒の大きさに応じて、ひょう、氷あられ、雪あられというような分類もある。雲も、種類や量など目視でなければ記録できないわけです。

 現在、自動観測の分類の項目は、晴れ、曇り、雨、雪、みぞれ、霧、もや、煙霧、雷、この九種類のみになっているというんですね。もちろん、機器の開発は更に進むとは思います。しかし、現状、きめ細かい予報が自動化によって後退しているというふうに言わざるを得ません。気象の記録の積み重ねは、予報の精度を上げ、災害予測にもつながります。気候変動を考えても、目視による細かな観測の記録は、予報業務だけでなく研究の上でもより重要になっているというふうに思います。
 地方気象台の目視観測を復活させて、観測業務を担う人員、これ増やしていくべきだと思いますが、いかがでしょうか。

○政府参考人(大林正典君) お答え申し上げます。
 委員御指摘のとおり、気象業務において予測の基となる観測は極めて重要であり、気象庁では観測の強化に継続的に取り組んできており、予報精度の向上につながってきております。

 一方、地方気象台で実施していた目視による観測については、近年の気象レーダー、衛星観測等の技術の進展により、現在は自動観測で実施しています。また、地方気象台が予報等を発表する際には、引き続き、官署周辺の現象を必要に応じて目視で確認しつつ、様々な観測データや予測資料を基に判断を行っており、目視観測の自動化による予報精度等への影響はありません。

 気象庁では、引き続き、観測業務に必要な体制を確保するとともに、最新の技術を導入し、観測の強化及び予報精度の向上に取り組んでまいります。

○田村智子君 やっぱり、予報、警報、こういうのを行うに当たっては、現象の進行に応じた観測、これ強化するべきだし、現況との比較検証といった作業が必要になってくるわけですよね。だから、今その防災の方で人増やすけれど観測の方で人減らすというのはちょっと違うと思うんですよ。観測と予報、警報というのは一体的に運用されるべきで、技術水準の維持向上、次世代の人材育成にもつながっていくというふうに思います。

 先ほど指摘のあった気象予報士の森田正光さん、目視観測は判断力や表現力を養う文化である、引き継ぐ義務があるというふうに話されております。技術が進歩し自動化をしても、それを取り扱うのは人であり、その情報によって判断をするのも人です。このまま人の削減を続けるということは、自然災害が激甚化する中、気象庁の役割や責任、これ果たせなくなる可能性もあると思うんです。
 観測業務含めた増員、必要だと思います。大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(斉藤鉄夫君) 近年、自然災害が激甚化、頻発化する中で、災害時には自治体に対して迅速にJETT、気象庁防災対応支援チームを派遣することが求められるなど、地方気象台等の役割や地域防災力向上への期待はますます大きくなっております。また、先ほどのような観測についても同様です。また、線状降水帯による豪雨災害が頻発し、線状降水帯の予測精度向上や情報の改善が喫緊の課題となっております。

 こういう状況を踏まえまして、気象庁におきましても防災対策の強化や技術開発に必要な体制強化に取り組んでおり、それらに必要な人員を確保しております。

 引き続き、地域防災支援などの喫緊の課題に対応し、国民の命と暮らしを守るため、必要な体制の確保に取り組んでまいりたいと決意しております。

○田村智子君 配った資料の赤いところが増員なんですけれども、二〇一六年は御嶽山の噴火を受けて増員、二二年は線状降水帯による災害多発を受けての増員。やっぱり、必要があれば増やせるんですよ。

 だから、その必要性をよく見て、是非定員の大幅なやっぱり増員に向かうことを求めて、質問を終わります。

 


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