国会会議録

国会会議録
2013年5月7日 参議院予算委員会 子ども医療費の窓口無償化を求める

○委員長(石井一君) 次に、田村智子さんの質疑を行います。田村さん。
○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
 医療費の三割負担は国民生活に大変重くのしかかっています。そこで、子供の医療費無料制度について質問をいたします。
 国民健康保険料や保険税の滞納を理由に保険証が取り上げられて病院にかかれないという問題を我が党はこれまで何度も国会で取り上げてきました。現在は、中学生以下の子供さんについては健康保険証の取上げは禁じられています。しかし、保険証はあっても窓口三割負担が払えないために必要な治療が受けられない、こういう子供さんの事例は学校の保健室の先生や医療機関から度々報告がされています。
 例えば、学校健診で視力が弱くて斜視も指摘をされた小学二年生の女の子、検査の結果、手術を勧められたが、医療費を負担できないために踏み切れない。女の子は、手術したい、このままは嫌だと保健室で気持ちを打ち明けていると。小学生のある男の子は、自宅で調理中の鍋に背中が当たって手のひら大のやけどを負ってしまったと。シャツに血や体液がにじんでいることに担任の先生が気が付いて保健室へ連れていくと、家族に連絡しても病院には連れていかないでほしいと言われて、本人も家計の苦しさを知っていて痛くても我慢している。保健室で連日ガーゼ交換をして何とか治すことができた。また、新型インフルエンザが疑われてもお金がなくて病院に連れていかれない。お母さんは不安でいっぱいになりながらも、学校を休ませて様子を見るしかなかったと。
 厚労大臣にまずお聞きします。これらは本来、一つもあってはならないことだと思います。経済的な理由で必要な治療を受けられない子供が現にいる、こうした実情をどう受け止められますか。
○国務大臣(田村憲久君) もう委員御承知だと思いますが、小学校入学前のお子さんに関しては二割負担という形になっておるわけでありますし、それから未熟児の方々に関しての支援、それから小児の特定慢性疾患、こういうものに対しても支援策があるわけであります。
 今のお話ですと、高額療養費という話になると思います。高額療養費の中で多数該当等々に当てはまる方々の医療費の上限額というものが月々二万四千六百円という形でございますので、低所得の方々に関しましてはそのような制度の中で対応をさせていただいておるということでございます。
○田村智子君 大臣が今言われた制度では、私が挙げた事例はほとんど救済ができないんですよ。新型インフルエンザが高額治療になるわけないわけですからね。だから、私は今のお話で大臣からは、子供たちがお金の心配なく必要な治療を受けられるようにしたいと、制度の改善したいという答弁をやっぱりお聞きしたかったなというふうに思います。
 既に自治体の方は、経済的な理由で病院に行かれない子供はなくさなくちゃいけないと、こういう努力をやっています。厚生労働省の調査によれば、全国全ての自治体で子供を対象とした医療費負担の無料化、軽減策、これ何らかの形で行われています。
 群馬県では、二〇〇九年十月に医療費窓口無料の対象を就学前までから一気に中学卒業までに広げました。その効果は県議会でも報告をされています。資料としてもお配りしました。パネルを見てください。(資料提示)この施策の前と後では、一か月当たり、ぜんそくの受診件数は二〇%増えています。アトピー性皮膚炎も一六%増えています。こうした慢性的な疾患というのは、重症化を予防するために、症状を改善して治癒に向かわせるためにも、これ定期的な受診というのが欠かせないわけですね。非常に効果があった。逆に言えば、窓口三割負担のときには必要な治療が受けられない子供さんがこれだけいたということの証明だと思います。これ、効果明らか、必要性も明らかだと思います。
 国としても、子供の医療費の窓口無料化、これもう踏み出すときだと思いますが、大臣、いかがですか。
○国務大臣(田村憲久君) 非常に財政的に厳しい今現状、日本の国はということは御理解いただいておるというふうに思います。それは、財政的に余裕が十分にあれば、そういうことを考えていくということも検討に値するわけでありますが、例えば、子育てに関しましては、児童手当の拡充もやってまいりました。それから、待機児童の解消ということも、これも今力を入れております。病児・病後児保育、さらには放課後児童クラブ、それぞれに対して対応をしっかりやっていく、いろんな子供に対する総合的な施策がある中において、これを無料にするということがなかなか財源的に厳しいということでございまして、今の状況の中においてはなかなか検討できないというふうに御理解をいただければ有り難いと思います。
○田村智子君 私は、命にかかわることなので、ほかにいろいろ子育て施策やっていますからということで、これ済まされるわけにいかないと思うんですよ。
 国に試算をお願いしますと、就学前まで無料にして国が負担二分の一にしたら幾ら掛かるかと、一千二百億円だと。これ多いと見るか少ないと見るか。私は、いろんな予算の使い方を、これを考えていけば踏み出すことできるはずだと思いますし、自治体の側もいろいろ財政が大変な中でも既に医療費無料化に踏み出している、この姿勢に学ぶべきだと思います。
 私、許せないのは、今日とりわけお聞きをしたいのは、こうやって、国がやらないから自治体は財政的にいろいろ工面しながら無料化の制度を広げている、頑張って取り組んでいる。ところが、国は、それに対して奨励もしない、逆に国民健康保険の国庫負担分を削るという事実上のペナルティーまで科して自治体の窓口無料の取組の足を引っ張っているんですね。これは本当におかしいことだと思います。
 群馬県では、窓口無料を理由に本来支払われるべき国庫負担金が年間十一億円も削られてしまう。これに対して、県議会ではこういう意見書が上がっているんです。ペナルティーは地方自治体の努力や独自性を阻害するものだ、社会的弱者を支援するという地域福祉向上の観点からも断じて見過ごすことができない、国庫負担金削減等の措置を直ちに廃止するよう強く要望すると。いかがでしょうか、この要望にこたえるときだと思いますが、大臣。
○国務大臣(田村憲久君) まず、先ほど委員、無料化した場合の財政どれぐらいの影響があるかという話でありましたが、確かに国全体で、国費では千三百億円ということでございますが、これ、保険料に六千八百億円ほどの影響が出てくるわけでございまして、保険者という意味からすれば無料化にした場合に国以上に影響が出てくるということが事実としてございます。
 それから、今のところでございますが、無料若しくは軽減をすれば、当然その分だけ受診される方々が増える、受診が増える効果というものが考えられるわけでありまして、そのために国庫の負担分でありますとか調整交付金の部分を国がお支払いするという話になりますと、自治体間のやはり不公平というものが生まれてまいるでありましょうし、やはり全体で考えた場合に、国が一定の方向で政策的な判断をすれば、それはそれに対して国費を使うということはあるのでありましょうけれども、地方自治体の御判断でやられているものに関して、それによって増えた分を国が税金で見るということになるというのは、やはりなかなか公平性の問題でこれは実行できないということでございます。
○田村智子君 これに取り組んでいる自治体からは効果が幾つも言われているんですね。先ほど医療費が掛かるとおっしゃいましたけれども、一人当たりの医療費でいえば、先ほど言ったみたいに、慢性的な疾患を継続的に診てもらえるようになるので重症化が防げるから、そう考えると重症化して医療費が膨らむということが抑えられるんだと、こういうこともしっかりと報告がいろんな自治体からされているわけですね。
 それから、今地方の公平性ということを言いました。しかし、もう全都道府県が今三歳未満の子供たちは無料にしているんですよ。これに全都道府県に対してペナルティー科しているんですよ。それをやめてくれという意見書が全国知事会からも上がっています。市長会からも町村長会からも上がっているわけです。こういう全国の自治体なんというのは、恐らく私たちが応援した知事さんよりもはるかに自民党さんたちが応援した知事さんが行政を行っていると思いますけれども、そういう知事さんたちがもうやめてくれと言っているんです。これもう地方の公平性というのは理屈にならないと思いますが、いかがですか。
○国務大臣(田村憲久君) 今の部分も含めて、公平性という部分と、もう一方はやはり財源という問題がございますので、その点考えたときに、今すぐこれを実行するというわけにはいかないというお話でございます。
○田村智子君 これ、財源というのでもう本当に腹立たしいのは、消費税増税で十三兆五千億円、これ増税になるんですね。ところが、こういう医療費の三割の窓口負担、小学生以下は大人とみんな一緒ですよ、三割負担。これに対して何の手だても取らない。私、今大変深刻な事例を紹介しても、やはり財政上の理由でできないと言う。私、これは余りにも子供たちの命、健康を守るという立場の厚生労働大臣の答弁とは思えないんですね。
 少なくともペナルティーについては、これ過去の大臣は慎重に検討したいという答弁をされた大臣もいます。ペナルティーについては、これ検討すると、それはお約束できませんか。これ全部の自治体からの要望です。いかがでしょうか。
○国務大臣(田村憲久君) 当時、検討されてもできなかったんであろうというふうに思いますが、検討することを検討いたします。
○田村智子君 大変情けない。
 総理にお聞きしたいと思います。
 例えばドイツでは、二〇〇四年に外来の医療費負担導入しました。でも、その際にも、医療費負担を理由に親が子供を病院に連れていくことをちゅうちょしてはならないとして、十八歳未満の医療費は無料にしたんです。フランスでは、僅か一ユーロの定額負担も十六歳未満の子供については無料としているんです。
 片や日本では、ゼロ歳の子供も二割負担、小学生以上は大人と同じ三割負担と。その上、自治体独自の無料化制度にペナルティーまで科して足を引っ張ると。これでいいんだろうかと。子供に対する国の姿勢が問われていると思いますが、総理、いかがでしょうか。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 我々としても、できる限りお子さんたちの医療費について支援をしていきたいと考えておりますが、財源の問題と、また先ほど田村大臣からも答弁させていただきましたように、国民健康保険の国庫負担の調整措置については、この限られた財源の中で公平性を担保していくという上からも実施をしているところでございまして、基本的に厚生労働大臣の答弁したとおりでございます。
○田村智子君 全国の自治体と一緒に引き続き頑張りたいと思います。
 終わります。
○委員長(石井一君) 以上で田村智子さんの質疑は終了いたしました。(拍手)


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