外国人差別を公言する候補者や政党にたいし危機感を覚えた弁護士や音楽プロデューサーらが呼びかけた「デマと差別が蔓延(まんえん)する社会を許しません」アピールの2回目となる街頭宣伝が17日、東京・新宿駅前でおこなわれました。
12人の呼びかけ人のうち弁護士の太田啓子さん、音楽プロデューサーの松尾潔さん、法政大学元総長の田中優子さん、元文部科学事務次官の前川喜平さん、東京大学教授の隠岐さや香さん、DJ・音楽プロデューサーの沖野修也さんがあいさつしました。
ゲストとして登壇した、ノンフィクション作家の安田浩一さんは関東大震災はじめ過去の歴史にふれ「デマと差別は人を殺す。だから反対する」と訴えました。いまクルド人差別の現場を取材していることを話し、「だれも殺したくない、殺させたくない。そう声をあげていきたい」と話しました。
東京大学4年生の金澤伶さんは非正規滞在で強制送還されている子どもの存在を紹介し、「日本で生まれ、日本語を話し、勉強したいと希望を持っている子どもたちは権利がある。差別でその夢を奪っていいのか」と訴えました。
在日コリアン3世の金正則さんは「在日の半分は本名で暮らすことが怖いと思っている」と話し、昔よりも今の方がもっと恐怖を感じていると言います。「でも未来は開けると思っている」と訴え拍手が起こりました。
ファンクバンド「オーサカ=モノレール」の中田亮さんは「“あなたは何人”っていう言い方やめませんか」「違いを見つけるのではなく、同じものを見つけていこう」と呼びかけました。
飛び入りでジャーナリストの鈴木エイトさんが登壇。ライムスターのラッパー宇多丸さんのメッセージが読み上げられました。
最後に日本とパレスチナにルーツをもつラッパーのDANNYJIN(ダニージン)さんがイスラエルによるジェノサイドに抗議するラップを披露。多彩で、にぎやかな街宣に橋の上に参加者がすずなりになり、注目が集まりました。
街宣には日本共産党から田村智子委員長があいさつし「差別はまさに戦争につながる」とのべ、「みなさんと一緒に差別に反対し、社会をかえていきましょう」と訴えました。吉良よし子参院議員、辰巳孝太郎衆院議員が登壇、小池晃党書記局長が参加しました。また、立憲民主党、社民党、れいわ新選組の国会議員があいさつしました。
「デマと差別が蔓延する社会を許しません」街宣での田村委員長のスピーチ
みなさんのスピーチで本当に胸が熱くなりました。「デマ、差別は命にかかわる問題だ」―そうですね。デマや差別で追い詰められる、いまは主に外国の人たちが、「日本の社会にいてはならない存在なのか」という思いを抱かざるをえなくさせられています。
政府までが差別
みなさんが抗議の声をあげなければならない状態がつくられてしまった。「デマと差別が蔓延する社会を許しません」というのは当たり前ではないですか。そのために政治があるのに、一部の政党がデマで外国人への差別をふりまいた。そこに他の政党もくっつき、政府まで外国人差別の政策を打ち出すまでになってしまった。
私たち日本共産党も、この状況を何としても変えなければならないと思っています。その共同を国民のみなさんと広げたいし、国会のなかでも、この反動的な動きと対決する確かな力をつくっていきたい。その決意で、いま頑張っているところです。
なぜ政党や政治家によって、また自民党の総裁選まで、デマと差別がふりまかれるまでになったのか。解決しなければならない問題を、外国人へ攻撃の矛先を向けることでごまかす、すりかえる、こういう動きがあると指摘せざるをえません。
外国人の問題でいえば、この国が、長きにわたって外国人を差別的に受け入れてきたことが一番問題ではないでしょうか。人手が足りないところの人材(として受け入れる)、低賃金、不安定な働き方、家族が離れて暮らすのが当たり前、日本語の教育もまともにやらない、人材としか人をみない―こういう差別的な受け入れでいいのかと、国際社会からも批判された。ところがまともに向き合おうとしない。
私の学生時代、まだ在日コリアンのみなさんは、指紋登録が義務づけられていました。まさに管理、監視の対象だった。この差別的な取り扱いをなくそうというたたかいがあって、やめさせたのです。ところがいま、例えば自民党とくっつこうとしている日本維新の会が、いち早く外国人政策を掲げました。「排外主義ではない」と書いているのですが、国益にかなう外国人は受け入れたらいい、そうでない外国人は排斥するという内容です。これを排外主義と言うのではないでしょうか。外国人を監視、管理の対象にし、自分たちに都合のいい外国人は受け入れます。こんな排外主義は許されないと、すべての政党、政治家に突きつけていかなければなりません。
自己責任の政治
そして新自由主義です。これが私たちを苦しめている。大学に進学することも自己責任にして高い学費を押しつける。これをそのままにして、ごく一部の優秀な留学生が学費無償、生活費の支援があるのは差別だという。違います。憲法が、教育を受ける権利を保障し、経済的に差別してはならないと掲げているにもかかわらず、学費値上げを止めようともしない政治が問題です。また、京都ではどんどんホテルを建てて、お寺が見えなくなって、民泊までやって、市民生活をおびやかすような規制緩和で、もうければいいんだとやってきた。こうした新自由主義の経済、政治のありかたが問題なのではないでしょうか。
今日も、平和の問題と一体のスピーチがあることに感銘を受けました。外国の人への差別、排外主義をはびこらせ、敵がい心をあおることで、戦争する国づくりを進めているのではないのか。「差別とデマが蔓延する社会をただしてほしい」という4万3000を超える署名の受け取りを拒否したり、その場に出てこない政党は、すべて軍事費の増大をもっとやれと求め、戦争する国をつくろうとしています。
この国は、デマと差別が最も蔓延した時代に、侵略戦争と植民地支配で徹底的にアジアの人たちを差別し支配した。いまも外国とたたかうとなったら、その国に対する敵がい心をあおることが必要です。戦争への道、戦争をしないという憲法を変えようという動きのなかでの差別、デマではないのかと指摘しなければならない。
平和と人権を掲げ、この国に働き住み暮らす、すべての人たちの人権を守る。そういう社会、政治をつくるために、私たち日本共産党も、皆さんとの連帯を大いに広げてがんばりぬきます。一緒に力を合わせましょう。
2025年10月18日(土)、19日(日) しんぶん赤旗

