臨時国会が21日に召集され、自民党の高市早苗総裁が衆参両院の本会議での首相指名選挙で、第104代首相に選出されました。女性の首相就任は初めてです。即日組閣を行い、自民と日本維新の会による連立政権を発足させました。日本共産党の田村智子委員長は同日の党国会議員団総会で、戦後の歴史の中でも最悪の政権となる危険があると指摘。「高市自民・維新政権に対し、断固として対決し、危険な暴走政治を阻止するために全力を尽くそう」と呼び掛けました。
議員団総会で田村氏は、与党を衆参両院で過半数割れに追い込んだ国民の審判を踏まえれば、この臨時国会でまずやるべきは消費税減税であり、裏金問題の徹底追及と企業・団体献金の全面禁止も直ちに進めるべきだと主張。自民と維新の連立合意書はこうした政策を棚上げする一方で、▽憲法9条改悪▽医療費4兆円削減など社会保障改悪▽大軍拡の前倒し▽「スパイ防止法」制定―など、「自民党政治をさらに悪くする悪政のオンパレードだ」と批判しました。
新政権が衆院議員の比例定数1割削減法案の今国会提出をめざし、維新の吉村洋文代表が「その入り口を突破しない限り、社会保障やその他さまざまな改革はできない」と発言していることに対し、田村氏は「悪政推進のために、まず議員定数削減で反対意見を切り捨てるという表明だ」と指摘。自維連立政権はまさに悪政推進の“反動ブロック”であり「戦後の自民党政権の歴史の中でも、国民にとって最悪の政権となる危険をもつ」と警鐘を鳴らしました。
議員定数削減について、田村氏は▽民意を切り捨てる▽政府監視機能を弱める▽国際的にみても少ない国会議員がさらに少なくなる―と問題点をあげ、「政権与党が数の力で悪政推進の突破口として強行するのは許されない」と語り、「今国会の緊急課題として、議員定数削減反対の一点で、国会内外での広範な共同を呼び掛ける」と表明しました。
田村氏は「“反動ブロック”の危険に正面から対決する“新しい国民的・民主的共同”を広げることがいよいよ大切だ」と強調。この間、幅広い団体や個人と懇談し、政治の極右的動きや排外主義の潮流に強い危惧が示され、消費税減税や賃上げ、選択的夫婦別姓はじめジェンダー平等推進などの要求が国民の中に高まっていることを実感したと述べ、国民の切実な要求を実現するために論戦を繰り広げ、それを力にさらに国民の中に共同を広げようと訴えました。
田村氏は、この間「沖縄の風」、社民党と会談し、大軍拡や改憲などの反動的動きに立ち向かい共同することを確認したと報告。「アメリカいいなり」ではなく、憲法と平和を断固として守る共同を国会の中でもつくることは要の力となるとして、市民の中にも広げ、大きな流れにしていくことを呼び掛けました。
現在の情勢について田村氏は「大局的に見れば、この反動政権が国民との矛盾をあらゆる面でいっそう深め、自民党政治そのものを終わりへと導く政権になる可能性があるし、またそうしていかなければならない」と強調。時流に流されず、自民党政治をもとから改革する立場を貫き、国民の要求実現の先頭に立ち、国民とともに新しい政治を目指す立場で大奮闘してこそ政治を前に動かし希望ある新しい政治をつくることができると強調しました。
臨時国会開会/日本共産党国会議員団総会/田村委員長のあいさつ
議員団、事務局のみなさんの連日の奮闘に心からの敬意を表します。臨時国会の開会にあたり、あいさつを行います。
今国会は、自民党・公明党の連立が崩壊し、自民党と維新の会の連立合意という、激動のもとで行われます。
26年の長きにわたる自公連立の崩壊は、裏金を暴き、「政治とカネ」の問題を徹底追及してきた、日本共産党のがんばりがあってこそのものであり、政治を動かすのは、国民の世論の力だということを、まず強調したいと思います。
自民・維新の連立--悪政推進の“反動ブロック”に正面から対決する
衆議院、参議院での与党過半数割れに続き、公明党の連立離脱によって、危機に陥った自民党に、維新の会が「連立に向けた政策要求」を突きつけ、これを自民党がほぼ丸のみする形で、昨日、自民党と維新の会が連立政権樹立で合意しました。
連立政権の合意書を見てみましたが、あまりにもひどい内容です。参議院選挙では全ての野党が消費税減税を大きな公約として掲げ、これを拒否した自民党にノーが突きつけられた。国民の審判を踏まえれば、この臨時国会でやるべきは、なんといっても消費税減税です。また、裏金への怒りの審判に応え、裏金問題の徹底追及と企業・団体献金の全面禁止も直ちに進めるべきです。ところが、維新の会と自民党の合意では、これらの政策は棚上げされました。
その一方で、憲法9条の改悪に向けて「両党の条文起草協議会の設置」は今国会中に、医療費4兆円削減の具体化は今年度中に行う。大軍拡は前倒しで実施し、「スパイ防止法」の制定は今年中に検討をはじめ、速やかに法案を策定・成立させる。選択的夫婦別姓の要求を封じ込める通称使用の法制化、「外国人政策」という排外主義など、自民党政治をさらに悪くする悪政のオンパレードとなっています。
そしてきわめて重大なことは、衆議院議員定数の1割削減の法案を今国会に提出し、成立を目指すというものです。維新の吉村代表は、「その入り口を突破しない限り、社会保障やその他さまざまな改革はできない」と述べています。憲法改悪をはじめとする、悪政を推進するために、まず議員定数の削減によって反対意見を切り捨てるという表明にほかなりません。
わが党は、9月に行った第6回中央委員会総会で、「“反動ブロック”が形成され、社会保障など国民生活の破壊、大軍拡の暴走、憲法と民主主義の蹂躙(じゅうりん)、ジェンダー平等への逆流など、日本の政治に深刻な逆行をもたらす危険が生まれている」と警鐘乱打しましたが、まさに、発足するであろう自民・維新の連立政権は、悪政推進の“反動ブロック”そのものであり、戦後の自民党政権の歴史のなかでも、国民にとって最悪の政権となる危険をもつ政権です。高市自民・維新政権に対し、断固として対決し、危険な暴走政治を阻止するために全力を尽くそうではありませんか。
議員定数削減を断固阻止する広範な共同を
今国会の緊急の課題として、議員定数削減を断固阻止する広範な共同を呼びかけるものです。
定数削減のターゲットが比例定数であることは、吉村代表のこれまでの発言からも明らかです。国民の1票が、最も議席に反映するのが比例代表選挙です。この定数を削減することは、民意の切り捨てであり、国民の声がますます国会に届かなくなるとともに、議会による政府監視の機能を弱めることになります。国民世論を無視し、裏金の真相解明にふたをした自民党にとっても、これほど都合のよいことはありません。
すでに、衆議院の定数は465にまで削減され、1925年の普通選挙制度以降、最も少ない水準となっています。国際的にみても、OECD(経済協力開発機構)加盟38カ国の中で3番目の少なさであり、議員定数を削減する合理的な根拠は何もありません。
そもそも、議員定数をふくめ、選挙制度は民主主義の土台であり、そのあり方は、全ての政党による国民的な議論が不可欠です。一部の政党、まして政権与党が数の力で、しかも悪政推進の突破口として定数削減を強行するなど、断じて許されません。
この場から、議員定数削減反対の一点で、緊急の共同を呼びかけるものです。政党・会派、議員個人と、「議員定数削減反対」の一点での国会内での共同、また、国会の外でも、民主主義破壊に反対する広範な世論を結集することを心から呼びかけます。日本共産党国会議員団一丸となって、議員定数削減を阻止するために全力をあげようではありませんか。
“反動ブロック”の危険に正面から対決する“新しい国民的・民主的共同”を広げよう
自民・維新の連立に加え、国民民主党も事実上の協力関係となり、参政党も協力的な態度をとることが予想されるもとで、6中総が呼びかけた“反動ブロック”の危険に正面から対決し、平和、民主主義を擁護・発展させる“新しい国民的・民主的共同”をつくり、広げることが、いよいよ大切となっています。
この間、中央でも、また全国各地でも、切実な要求に基づいて、幅広い団体や個人との懇談を進め、その中で私たちは“新しい共同”を呼びかけてきました。私も、政党・会派、労働組合、女性団体などとの懇談を行ってきましたが、どこでも、政治の中に生まれている極右的な動き、排外主義の潮流に対して、強い危惧が示されるとともに、消費税減税、賃上げや労働時間短縮、選択的夫婦別姓をはじめジェンダー平等の推進など、要求が国民の中に高まっていることが実感できました。また医療の基盤崩壊の危機を、日本医師会、医療6団体が共同で訴えるもと、全国医学部長病院長会議との懇談が行われ、あさってには国立大学病院長会議との懇談も予定されています。
自民党政治と国民との矛盾は限界点に達しています。また、排外主義の潮流に対して、弁護士や大学人、音楽プロデューサーらの呼びかけで、「差別とデマが蔓延(まんえん)する社会を許さない」という、政党に向けた署名が、4万3000を超えて届けられるなど、市民的な共同も大きく広がっています。
切実な要求に基づく連帯、共同を引き続き大きく広げ、国民の声を力に、消費税減税・インボイス廃止、政治の責任での大幅賃上げ・労働時間短縮、医療・介護の危機を打開する緊急の財政措置、選択的夫婦別姓制度の実現、大学学費値上げを止める、また大軍拡反対など、切実な要求実現のために、堂々と論戦を繰り広げましょう。国会論戦を力に、さらに国民の中に共同を広げていこうではありませんか。
社民党・「沖縄の風」との会談で、確かな共同が確認された
こうした共同の努力の中で行われた、16日の参議院会派「沖縄の風」との会談、17日の社民党との会談は、大変重要な内容となりました。
参議院沖縄選挙区の2人の議員からなる「沖縄の風」とは、「安保3文書」に基づく大軍拡が、いかに危険か、これは沖縄だけの問題ではなく、日本全国の問題だということを共通の認識とし、大軍拡や改憲を進める危険な動きに対し、憲法と平和を守り、「戦争する国づくり」に立ち向かって共同していくことを確認しました。
また社民党とは、同じく、大軍拡や改憲などの反動的な動きに立ち向かい、安保法制廃止、憲法や暮らしを守る共同をつくるために力を合わせることを確認するとともに、議員定数削減や「スパイ防止法」制定に反対してたたかっていくことでも一致しました。
来週には、アメリカ・トランプ大統領と新総理との首脳会談も予定されており、ここでGDP(国内総生産)比3・5%、年間21兆円もの大軍拡が直接要求されるのかどうか、大問題となります。このもとで、大軍拡に立ち向かう確かな共同が確認されたことはとても重要です。
「アメリカいいなり」ではなく、憲法と平和を断固として守る立場での共同を、国会の中でもつくることは、“反動ブロック”に立ち向かう上でも要の力となっていくものと確信します。現時点では議会勢力としては小さくとも、この共同を強固なものとして広げ、市民の中にも広げ、大きな流れへとしていこうではありませんか。
大局的に情勢をとらえ、時流に流されない党としての役割を発揮しよう
いよいよ、この後の本会議を経て、高市自民・維新新政権の発足となるでしょう。戦後の自民党政治の歴史のなかでも、国民にとって最悪の政権になる危険をもつ新政権の発足にあたって、私たちはその深刻な危険をいささかも軽視せず、正面から立ち向かい、この逆流をうちやぶっていくために全力をあげます。
同時に、現在の情勢を大局的に見れば、この反動政権が、平和でも、民主主義でも、暮らしでも、国民との矛盾をあらゆる面でいっそう深め、自民党政治そのものを終わりへと導く政権になる可能性があるし、またそうしていかなければなりません。
衆議院に続き、参議院選挙でも自民党が大敗北を喫し、公明党との連立が破局した。このもとで、自民党が、これまでも利用してきた維新の会と国民民主党という補完勢力を、自らの延命のために、一つひとつ取り込み、使い果たしていくというプロセスが始まりました。今後、参政党もそれに近い状況になることが、党首の発言からも見えてきます。自民党政治を変える本当の改革の党はどの党なのか、霧が晴れたように明らかになるプロセスが進むという展望を、私たちはもつことができます。
もちろん、このプロセスは自然に進むものではありません。時流に流されず、自民党政治をもとから改革する立場を確固として貫き、国民の要求実現の先頭に立ち、国民とともに新しい政治を目指す--こうした立場で日本共産党が大奮闘してこそ、日本の政治を前に動かし、希望ある新しい政治をつくることができます。
国会での奮闘と一体に、今とりくんでいる、党を強く大きくする「集中期間」をなんとしても成功させましょう。党員と日曜版電子版を含む「しんぶん赤旗」読者の拡大、世代的継承のとりくみを推進し、大きな反響を広げ、またこの議員団・事務局共同で学習会にもとりくみました『Q&A 資本論』(赤本)の学習もさらに進め、広く国民に広げましょう。国民の切実な要求実現の先頭にブレずに、断固として立って奮闘する日本共産党の土台には、たしかな理論があること、この理論が現代に生きて大きな力を発揮していることを、大いに国民に語り、対話をしていきましょう。その先頭に立って、国会議員団が奮闘されますことを心から呼びかけまして、私のあいさつとします。ともに頑張りましょう。
2025年10月22日(水) しんぶん赤旗

