日本共産党 田村智子
コラム

【11.09.13】「他人事内閣」と名付けたくなりました

野田首相のはじめての所信表明演説

通常国会の閉会から2週間足らずで始まった臨時国会。
初日から、野田首相の所信表明演説(約35分間)が、衆議院・参議院と続けて行われました。

船橋駅前での街頭演説25年という経歴が、一躍有名になった新首相。
どんな演説をするのかと、真剣に聞きました。話し方、エピソードの取り入れ方、確かに自分の演説でいわゆる「官僚の作文」とは違うと思う部分がほとんどでしたが、だが、しかし、です。

大津波からの避難を防災無線で呼びかけ続け、自らは津波にのまれて亡くなられた南三陸町の職員。
自ら被災しながら、復旧活動に懸命にとりくむ自治体職員の姿。
ふるさとから突然追われ、明日の暮らしの希望をどこに見出したらいいのかと、苦悩する福島県民の叫び。
それを自らの言葉で、演説としたのならば、なぜ、その苦しみや悲しみに応える具体的な政策を何一つ語らないのか。

そればかりか、自治体職員への賛辞をおくる一方で「公務員人件費の削減」は具体的に示し、福島の苦しみに心をよせるかのような演説をしたうえで、「『脱原発』と『推進』という二項対立で捉えるのは不毛」などと切り捨てるのか。

今回の大震災で、強引な市町村合併や公務員削減が二次的被害を広げていることも、原発事故への政治の責任にも、一言も言及することはありませんでした。

財政再建についても、巨額の赤字国債を発行したのはなんのためだったのか(社会保障のためではないのは、もう明らかです)、ただの一つの分析もなく、「次の世代に負担を先送りすることなく」と増税を納得させようという。

沖縄・普天間基地問題にいたっては、政権交代時の「最低でも県外」という公約はなかったこととして、日米合意の実現を掲げる。

「愚直に一歩一歩、粘り強く、全力で取り組んでいく覚悟」と最後に強調されると、背筋が凍る思いです。
どんなに国民、沖縄県民が声をあげようと、一歩をゆずらず「愚直に」何が何でも「一歩一歩」自らの政策を進めようというのでしょうか。

震災や原発事故の苦しみは語るが、まるで「他人事」。
国民の生活も、沖縄県民の基地被害も「他人事」。
政権交代のときの国民との約束も「他人事」。
「他人事内閣」だと思えてなりません。

野田氏が民主党代表になった直後は、マスコミ報道は冷ややかでした。
ところが日を追うごとに好意的な報道が増えていったように思います。
まるで「郵政解散」時、小泉首相批判・自民党批判が、一転して「小泉礼賛」に変わっていったときのようです。

「郵政解散」の時、小泉氏を前面的に日本経団連などがバックアップして、マスコミを大々的に活用して「小泉フィーバー」を作りだし、「構造改革」政治を問答無用ですすめる地盤固めをしたことを思い出します。

その後、派遣労働の規制緩和、医療費3割負担、年金切り下げ、保険料の連続値上げ、医療保険症の取り上げなど、すさまじい勢いですすめられたことを考えると、今度はいよいよ、消費税増税を挑んでくる。
自衛隊の武器使用、海外への武器輸出に関わる民主党内の発言を考えれば、憲法9条「改定」もいよいよ大きな動きになるでしょう。

さあ、本気度の勝負です。
政治を動かすのはだれか。21世紀の激動の予感がしています。