日本共産党 田村智子
コラム

【14.01.24】「見たいもの」しか「見えない」のか

安倍総理の所信表明演説に猛烈な違和感

第二次安倍内閣にとって二度目の通常国会。
初日から衆参本会議での施政方針演説が続けて行われました。

予想通りの自己陶酔型。
向いている方向が全く違う政治家から、「世の中は変えられる」と不屈の精神を説かれ、「初心に立ち返ろう」と呼びかけられる。
これは聞くことにかなりの忍耐力が必要です。

演説の前半、何だか不規則発言の声をあげる気にもならない。
変な違和感がモヤモヤと胸に渦巻いていました。それがなんなのか。
配布された演説原稿を読み直して、違和感の原因が見えてきました。

この人は、自分が見たい現実だけを見ている。見たくないものは、初めから眼中にないから、こんな演説をするんだ。

違和感の一つは、東日本大震災からの復興についての演説。
「創造と可能性の地・東北」というタイトルで、次のように東北の現状を描きました。
「三月末までに、岩手と宮城でがれきの処理が終了します。作付けを再開した水田、水揚げに湧く漁港、家族の笑顔あふれる公営住宅。」
そして、高台移転や住宅工事が着々と進んでいると主張し、「やれば、できる」と自画自賛する。
「福島の皆さんにも一日も早く故郷に戻っていただきたい」と、汚染水漏れなどないかのように言う。

演説が描いたものが嘘だとはいいません。希望が見え始めている人や地域もあるでしょう。
しかしそれ以上に広範に、いらだち、苦悩、生活再建が見えない不安が渦巻いてい るのではないか。
福島に戻りたくても戻れない、不安の中で福島に暮らす、そういうみなさんの苦しみは、見えていないのか。

日本の経済についても、昨年から使い続けている「この道しかない」を強調。
アベノミクスで景気は好調、行け行けドンドンの演説が続きました。

止まらない電機リストラ、増え続ける非正規雇用、これは日本が直面している重大問題ではないのでしょうか?

演説前半、不規則発言の声をあげる気にもならず、モヤモヤした気持ちで聞いていましたが、後半、ついに声をあげました。
沖縄についてのくだりです。

「成長の可能性が満ち溢れる沖縄は、21世紀の成長モデル。2021年度まで毎年3000億円台の予算を確保し…」
沖縄は札束ではなく基地撤去を求めている!
基地が成長を妨げているんですよ!

沖縄については、演説の最後にまた出てきました。
「普天間飛行場については、名護市辺野古の埋め立て申請が承認されたことを受け、速やかな返還に取り組みます」
「沖縄の方々の気持ちに寄り添いながら、できることは全て行う」

名護市長選挙の結果は、見ない、見たくない、「基地はいらない」「普天間基地は無条件撤去」の声は聞きたくない、聞こえない。
それでも「寄り添う」と開き直る。

当然、私たちの議席からは轟々たる声があがりました。
これは現代における暴君でなくてなんなのか。
週明けから代表質問が始まります。
安倍総理が見たくない現実を突きつけることになるでしょう。
激突国会の幕開けです。