日本共産党 田村智子
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【14.06.10】文教科学委員会 地方教育行政法改正法案 首長の大綱に関する権限について

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
 初めに、今年一月八日、長崎県新上五島町で起きた中学三年生の自殺事件について一問お聞きします。
 報道や文科省からの説明によれば、男子生徒は学校の中でもリーダー的存在だったが、あるとき、うざいなど本人に聞こえるように陰口が言われるようになり、昨年十一月にはLINEで、これで首つり自殺ができるかとロープの写真を流し、その後も死をほのめかすメッセージを事件当日まで発していたと。少なくない同級生、また中にはその保護者も男子生徒のメッセージを見ていたが学校や男子生徒の家族には何も伝えられなかったと。
 同町の教育委員会は、当初、アンケート調査を踏まえて、いじめはなかったと遺族に報告、その後、生徒たちの声から再調査が行われ、今度は、いじめはあった、しかし自死との因果関係は不明と報告をされた、第三者委員会の設置については決まっていないと、こういう説明を受けています。
 私は、この自殺といじめとの関係を明らかにするためにも、また本人からメッセージが発せられていたのに命が救えなかったのはなぜかということを検討するためにも、専門的な調査が必要な段階ではないかと推察をしています。
 一般論としてお聞きします。
 こうした専門的な調査に取り組む場合、第三者委員会は有力な選択肢だと思うのですが、その際、場合によっては学校、教育委員会側の不十分な対応にメスを入れる必要性も生じるだけに、その構成員は学校や教育委員会との利害関係がないことが大切だと考えますし、同時に、遺族の要望を十分踏まえた人選とすることも必要だと思いますが、大臣に文科省の見解を伺います。

○国務大臣(下村博文君) 昨年十月に文部科学省が策定したいじめ防止等のための基本的な方針におきまして、いじめによるものと疑われる自殺について背景調査を行う場合については、亡くなった児童生徒の尊厳を保持しつつ、その死に至った経緯を検証し再発防止策を講ずることを目指し、遺族の気持ちに十分配慮しながら行うことが必要であるとしまして、遺族が、当該児童生徒を最も身近に知り、また、背景調査について切実な心情を持つことを認識し、その要望、意見を十分に聴取するとともに、できる限りの配慮と説明を行うことを求めております。
 一方、調査を行う組織について同方針では、弁護士や精神科医、学識経験者、心理や福祉の専門家等の専門的知識及び経験を有する者であって、当該いじめ事案の関係者と直接の人間関係又は特別の利害関係を有する者ではない者、つまり第三者について、職能団体や大学、学会からの推薦等により参加を図ることにより、当該調査の公平性、中立性を確保するよう努めることが求められるところであります。
 文科省としては、引き続き、重大事態の調査を始めとするいじめ防止対策推進法を踏まえた対応が各地で適切に実施されるよう取り組んでまいりたいと考えております。

○田村智子君 それでは法案についてお聞きします。
 先日、名古屋市で行われた地方公聴会では、大綱について首長がどこまで書けるのか、決められるのか、これが明確ではないという懸念が何人もの方から示されました。この点について私は、五月二十三日の本会議の代表質問で、首長の判断で教育委員会の専権事項、例えば、愛国心教育に最もふさわしい教科書を採択するなどの内容まで書き込めるのではないかと質問をしました。安倍総理は、教育委員会が適切と判断した場合においては、教科書の取扱いに関することなど、首長の権限に関わらない事項について記載することも可能と答弁をされました。
 教育委員会の職務権限、首長の職務権限は、現行法も法案も一字一句変わっていません。もちろん、教育委員会の権限に属することでも新たな予算措置が必要な事項は首長の予算編成権と重なります。例えば、少人数学級の実施などは予算とセットでなければ計画ができません。しかし、教科書の取扱いに関することなど、新たな予算措置を必要としない事項は教育委員会のみの職務権限に属します。
 総理の答弁は、こうした教育委員会の専権事項については、教育委員会が適切と判断した場合においてと限定して大綱に記載できるというものでした。ということは、教育委員会が適切と判断しない、同意しない場合は、教科書の取扱いなど、首長の権限に関わらない事項を大綱に書き込むことはできないと理解をしますが、そういう認識でいいんでしょうか。

○政府参考人(前川喜平君) 大綱の策定に当たりましては、首長は総合教育会議において教育委員会と十分に協議し、調整を尽くした上で策定することが原則でございます。首長の権限に関わらない事項につきましても、教育委員会が適切と判断した場合に大綱に記載するということは十分考えられるところでございます。
 一方、大綱を策定する権限は首長にございますので、教育委員会が合意しない内容を記載することが全くあり得ないとは言えないわけでございますけれども、教育委員会が合意しない内容を仮に大綱に記載したといたしましても、権限を持つ教育委員会が執行しない事項を記載するということは結果として意味がないことになるわけであります。
 したがって、こうしたことがないよう十分に協議し、教育委員会の合意を得られるよう努めることが必要であるというふうに考えております。

○田村智子君 端的に確認しますが、法案そのものによれば、教育委員会のみに権限が属することも首長の判断で大綱に書き込めるということなんですか、教育委員会が適切と判断しなくても。イエスかノーかで。

○政府参考人(前川喜平君) 大綱の策定権限が首長にあるということから、こういうことも起こり得るということでございます。

○田村智子君 起こり得るというか、法案はそれを許しているという法案だということだと思います、起こり得るということは。これ、総理の答弁と百八十度違ってきちゃうわけですよ。
 じゃ、もう一歩踏み込んで聞きます。それでは、愛国心教育に最もふさわしい教科書を採択するなど教科書採択に関する事項も、特定の教科書を採択するということも、あるいは人事に関する事項も、総合教育会議で大綱案を協議さえすれば、教育委員会の判断のいかんにかかわらず首長の判断で大綱に記載できるという法律上の条文になっているということですか。

○政府参考人(前川喜平君) 首長の権限である予算の編成、執行、あるいは条例の提案等、関係のないような事項につきましても、教育委員会が適切と判断した場合には大綱に記載されることになると考えておりまして、教科書採択の方針や人事異動の基準についても記載するということはあり得ると考えております。

○田村智子君 私が聞いているのは、教育委員会が適切だと判断しなかった場合はどうなんですかということです。

○政府参考人(前川喜平君) 首長の大綱を作成する権限ということがございますので、そういった事態も起こり得ると考えております。

○田村智子君 これはもう総理の答弁と全く違うわけですよ。本会議で私は、法案の解釈として、愛国心教育に最もふさわしい教科書を採択するなど、首長の政治的意向を込めた方針も書き込めるのではないですかという質問をしたわけです。総理は、教育委員会が適切と判断した場合においては、教科書の取扱いに関することなど、首長の権限に関わらない事項についても記載は可能ですと答弁をされたわけです。
 私は、この総理の答弁を委員会質疑でも確認しようと思ったんですよ、そうやって言うだろうと思って。法案がそうなっているんですねと、一体どこの条文からそう読めるんですかということを聞こうと思ったんです。ところが、今度は、法案上は教育委員会の判断にかかわらず記載が可能だと、それはあり得るというふうに答弁をされるわけですよね。
 となると、一体総理の本会議答弁は何だったんだということになってしまうわけです、わざわざ限定をしたわけですから……(発言する者あり)そうです。衆議院の本会議では、下村大臣が我が党宮本議員に対して同じように、教育委員会が適切と判断した場合と限定をされる答弁をしている。
 何で本会議と委員会で答弁が違うんですか。

○国務大臣(下村博文君) いや、これは全然違っている話ではないわけでありまして、先ほど愛国教育の教科書云々ということをおっしゃっていましたが、それを教育委員会も適切と判断した場合においては教科書の取扱いに関することなど首長の権限に関わらない事項について記載することも可能だということでありまして、つまり、先ほど局長が答弁しているのは、結論からいえば、総合教育会議の大綱の中において、協議、調整が整ったこと、あるいは整わないことであっても、大綱に書き込むことはいずれも可能なんです。いずれも可能です。
 ただし、教育委員会の権限のある、教育委員会というのは執行機関として残していますから、その権限の範囲内については、教育委員会の同意がなければ、教育委員会は大綱に書き込んであったとしてもそれを執行する責務は負っていないということでありまして、首長がある意味では勝手に書くのは可能であるということですが、できるだけ協議、調整をしていただきたいと思いますが、法律上そういうことでありまして、これは本会議答弁と委員会答弁は全く矛盾する内容ではありません。

○田村智子君 いや、これは矛盾しないのかなんですね。
 教育委員会の権限に属する事項は教育委員会が適切と判断した場合に大綱に記載できるというのと、教育委員会の権限に属する事項でも教育委員会の判断のいかんによらず大綱に記載できると、これがどうして一緒になるかなんですよ。同じだなんて言われちゃったら、これはもう法案の審議なんかできなくなってしまいますよね。法案の解釈に関すること、中心点なんですから。
 これ、私も宮本議員も、まさに首長の独断的な教育への介入を懸念して質問を行っているんです。当然、教育委員会の合意がない下でどうなるのかということについて含んで聞いているわけですよね。その教育委員会の判断で適切ではないという場合においてはあえて答弁しなかったということになるんじゃないですか。どうですか。

○国務大臣(下村博文君) ちょっと、本会議の答弁とそれから衆議院の答弁をちょっと一緒にされていると、ちょっとその内容によって、どう言われているのかと詳細をちょっと読んでいただかないとちょっと明確に答弁できませんが、しかし、先ほど私が答弁したとおりであって、その場その場によって方針を変えているとか言い方を変えているということは全くございません。
 ただ、この御懸念といいますか、五月二十三日の本会議において、大綱について、総理は、教育委員会が適切と判断した場合においては、教科書の取扱いに関することなど、首長の権限に関わらない事項について記載することも可能ですというふうに答えているから、判断しなかったら書けないんじゃないかと、そういう立場でおっしゃっているわけでしょう。でも、それはそういう意味での言葉ではないということを申し上げているわけであります。

○田村智子君 もう法案の解釈に関わる問題なんですよ。
 これ、大綱というのは、これ全自治体に策定が義務付けられるわけです。法案の条文に則して一体首長がどこまで記載が可能なのかというのをはっきりさせるというのはこの法案審議の中で当たり前のことで、だから、私は本会議の場でそのことを総理にお聞きした。そうしたら、教育委員会の判断で適切であると判断された場合と限定をされた。
 公聴会でやはりこの点が集中したわけですよ。東海市の市長さんは、このことがはっきりしなければ混乱が生じると、首長がどこまで記載できるのかと、そういう発言をされています。法律を理解している首長ならば、当然、自らの職務権限と教育委員会の職務権限とがどうなるかと、こういうことは大きな疑問を抱かざるを得ないと思うんですよ。
 教育委員会が同意していない下で首長がどこまで大綱に記載ができるのか。首長の権限に関わる範囲だけなのか、それを超えるものなのか、まさに法案の焦点なんです。教育関係者が一番懸念している点なんです。この重要な問題に対して、私は、総理の答弁はこれはごまかしだと思いますよ、わざわざ限定したんですから。これはやはり総理にこの答弁の真意をたださなければならないと思います。
 改めて総理の委員会への出席を求めたいと思いますが、理事会で諮っていただきたいと思います。

○委員長(丸山和也君) 後刻、理事会で協議します。

○田村智子君 それでは、私、与党合意との関係でも見たいと思うんですね。
 これ、法案は与党の側から審議を尽くして提出されたんだと、自民党の議員からはですね、法案審議の冒頭で強調されました。では、その与党合意ではどうなっていたのか。今日は、私、その与党合意の文書と別添資料というのを配付をしました。
 この別添資料の図では、大綱、法律上の協議・調整の対象というのは予算措置が必要な事項、条件整備が必要な事項という範囲に書かれていて、これは教育委員会と首長とで権限が重なる事項について大綱で定めるというふうにやっているんですね。これと区別をして、教育委員会の権限に属すること、つまりは首長の権限には属さないことは教育委員会の判断を受けて書くことが可能だと、こう明記されているわけです。
 これ見れば、大綱には、そりゃ、教育委員会の判断で適切ではないということになったらそれは大綱には書けないよなと、これ、図はそうとしか読めないと思うんですけれども、これ、与党合意と法案というのはこれ中身が違っちゃったということなんですか。

○政府参考人(前川喜平君) 教育委員会の権限に属する事項で首長の権限に関わらない事項、こういった事項につきましては、教育委員会が適切と認める場合にはこれを大綱に記載して、それを尊重して教育委員会が事務を執行すると、これは通常考えられるところでございます。
 仮に、首長が教育委員会の了解のないものを、教育委員会の権限に属し首長の権限に関わらない事項であって教育委員会が判断していないものを記載するということがありましても、それは結局のところ教育委員会はそれを実施するという意思がないわけでございますから、記載すること自体が意味がないということになりますので、そういったことは通常起こらないだろうと考えているところでございます。

○田村智子君 これ通常行われないかどうかじゃないんですよ。法案がどういう中身になるかというのの図なんですよね。だから、これ私、与党議員の中にもこういう答弁に驚く方がいらっしゃるんじゃないかと思うんですよ。どう考えたって、教育委員会の判断を受けて書くことが可能というものと教育委員会がどう判断しようと書くことが可能というのは、これ百八十度意味が違ってきちゃうとしか思えないですよね、法案の説明ですから。文科省がこうやって運用してほしいというイメージじゃないんですよ、法案についてのものなんですから。これは、与党合意と法案というのは、法案の大事な点で違うものになっちゃったんだというふうに私言わざるを得ないんですね。与党の皆さん、このままでいいんでしょうかということを私は問いたいぐらいなんですよ。
 この合意の文書を見ても、会議においては、これ総合教育会議ですね、予算の調製、執行や条例制定など首長の権限に属する事項等を協議の対象とするというふうに書いてあるわけですから、これは首長の権限に属さないことは基本的には協議の対象外と、そうとしか読めない書き方になっているわけですよ。この「等」の中にまさか首長の権限に属さないことが入りますなんて説明されちゃったら、もうこれ何でもありという話になっちゃうわけですね。
 この文書と資料というのは自民党のホームページに掲載をされていまして、今回の法案を国民に知らせるものともなっているわけです。実際、この資料を見て、教科書採択や人事など、教育委員会の専権事項は首長の判断だけでは大綱に記載できないんだと、こう理解している教育法の研究者が何人もおられるんです、私も話をして。だから、そのことを確認する委員会の質問を準備したら、いや、そうじゃないんだという答弁返ってくるわけですよ。これ、首長が自らの権限に属さないことまで自分だけの判断で総合教育会議の協議事項にできるのか、大綱に書き込めるのか、これは教育の自主性、教育の政治的中立性に直接関わるまさに法案の核心部分です。それを国会にも国民にもごまかしてきた、隠すようにして議論を進めてきた、こういうやり方は極めて重大だというふうに私は指摘をせざるを得ないんです。
 なぜ私がそう言うか。それは、実際に首長の権限に属さない事項でも協議を行って大綱に書き込みたいんだという、そういう首長が現におられるからなんですね。いるんですよ、想定外のことじゃないんですよ。
 これ、静岡市での地方公聴会で、静岡県知事は、全国学力調査、いわゆる全国学力テストですね、この結果の取扱いについて協議の対象とし、大綱に書くつもりがあるというふうに表明をされました。この発言が翌日の地元紙でも大きく報道がされましたように、全国学力テストが総合教育会議や大綱でどう扱われるのか、これは大変大きな問題になってくると思います。
 静岡県知事は、昨年四月実施の全国学力テストで、小学校六年生の国語A問題で正答率が全国平均を上回った学校の校長名を県教委との協議は行わずに公表しました。知事は当初、成績下位百校の校長名を公表しようとしたのですが、県教委だけでなく県民からの批判や、下村大臣もそれはふさわしくないと記者会見で話をされたと、逆に平均点を上回った学校の校長の氏名を公表したということなんです。しかし、地元紙では校長名に学校名を付記して報道をしたので、これは市町村教育委員会の了承もないままに部分的とはいえ学校にランクを付けるという結果になってしまったわけです。さらに、昨年十月二十四日には、県教育委員会主催の学力向上集会で来賓として知事が出席をして、小中学校の校長先生らを前に、学力の推進校に指定されていた二校が全国平均を下回っている、問題だと、二校の県内順位まで明らかにしたというんです。
 こういう下で、この知事の圧力で県教委もテストの点数を上げるんだという教育方針にかじを切ることになっちゃった。五年生では一日使って試験対策、六年生になってからも全国学力テスト直前に一日試験を行うなど、必要な授業が全国学力テスト対策の試験に置き換えられてしまいました。
 これは静岡だけではありません。沖縄県、学テ対策が激しく行われています。県教委は、全国順位を意地でも上げると言って、学校に次々と通知を出して、授業時間を増やすため学校行事は簡素化せよ、十二月までに終われ、一月から三月は学テ対策強化期間、四月に行われてきた家庭訪問の時期を見直せと、こういうことを相次いで求めていったわけです。那覇市では、実際、特別期間には、朝、昼、放課後、補習を実施をし、総力戦、動員令、こういう言葉まで飛び交っているということなんです。
 これ、強弱はあれ、こうやって学テ対策というのは今各地の自治体で指摘がされています。中には、四月に新学期が始まっても、四月下旬の全国学力テストの日までは国語も算数も過去問題の練習だと、こういう学校まで出てきています。こういう実態をどう見るか。
 学力テストの実施要領には、「序列化や過度な競争が生じないようにするなど教育上の効果や影響等に十分配慮する」とありますが、既に県ごとの順位競争が引き起こされているんじゃないかと思いますが、大臣の見解を伺いたいと思います。

○国務大臣(下村博文君) まず、今回の地教行法の改正はこの法案が全てですから、これに対して今まで何か隠すようなこともそもそもしていないわけですし、衆議院でも四十時間の議論がされ、参議院においても相当な議論がされているわけでありまして、これは質問されればそれに対してきちっとお答えをしているということであります。
 それから、本会議とか、それから衆議院と参議院で説明が異なっているということは全くないわけでありまして、これは当然法の立て付けの中での議論についてきちっと答えているというふうに考えております。
 それから、学力テストについては、基本的に学力を上げるということは、これは何ら否定すべきことではないと思います。ただ、その方法論については、これは過剰にならないような配慮は必要だというふうに思いますし、それから、そもそも勉強だけできればいいというようなことであってはならないわけでありまして、知徳体あるいは食育を含めたバランス的な教育というのは人格の陶冶ですから、トータル的に子供を育むためにどうしていったらいいかということについて、各教育委員会についてはそういう配慮もしながら、学力テストは学力テストとして有効に活用していただきたいと思います。

○田村智子君 先ほどの法案の答弁については、是非総理に対して私もただしたいというふうに思います。
 学力テストなんですけれども、この都道府県の教育振興基本計画、今度は大綱にどう書かれるかということになるんですけれども、その目標をずっと調べてみたものも、これも資料でお配りしました。その目標には、全ての正答率が全国平均を上回るとか、全国の平均プラス三%など、目標設定が次々と出てくるわけです。これ、全ての都道府県が平均点を上回るなんてことはあり得ないわけですね。となれば、これ、果てしのない競争地獄になっていくことになる。
 ところが、文科省は、今年実施の学力テストから、これまで学校の同意を得なければ平均点の公表をできないという要件だったのを、これ、小中学校を管理する教育委員会の判断で学校ごとの平均点の発表を可能だというふうにしてしまった。都道府県の平均点を発表するだけでも、さっき言ったような競争の激化が起きている。これに輪を掛ける、子供たちと学校が競争の激化の中に投げ込まれることに私はなってしまうというふうに思うんですね。
 文科省は教育的判断と説明責任ということを教育委員会に求めているんですけれども、それでは、子供に重大な悪影響を与えると、こういう判断があったとしても、説明責任ということを問われれば、例えばそういうことを首長が圧力掛ければ、これは学校ごとの平均点というのは公開しなければならないということになるんでしょうか、局長。

○政府参考人(前川喜平君) 本調査は、保護者や地域住民の関心の高い学校教育の改善のために実施しているものでございますので、適切に説明責任を果たすということは重要でございます。一方、序列化や過度の競争による弊害が生じないようにするなど、教育上の効果や影響等に十分配慮することも重要であると考えております。
 このため、今年度の実施要領におきましては、個々の学校名を明らかにした公表を行うことについては、その教育上の影響等を踏まえ、必要性について慎重に判断すること。公表内容や方法等は、教育上の効果や影響等を考慮して適切なものとなるよう判断すること。児童生徒個人の結果が特定されるおそれがある場合は公表しないなど、児童生徒の個人情報の保護を図ること。学校や地域の実情に応じて、個別の学校や地域の結果を公表しないなど必要な配慮を行うことなどを示しているところでございまして、これらに従って学校の設置管理者である教育委員会が判断することとしているものでございます。
 これらに基づきまして、各教育委員会におきましては、結果の公表について、教育上の効果や影響等を踏まえて、その必要性を含めて適切に判断していただきたいと考えているところでございます。

○田村智子君 これは、序列化や過激な、過度な競争の懸念があると判断すれば学校ごとの平均点の公表を見合わすべきだという答弁だったというふうに受け止めます。
 これが、首長の関与を強める今回の法案によって、首長の圧力で無理やり公表させられるのではないかという懸念がやはり生じてくるわけです。私は、昨年静岡で起きたこともしっかりと法律に照らして見る必要があるというふうに思います。
 これも確認ですけれども、全国学力テストの平均点、これを公表するかどうか、その判断をする権限は首長に属するものではないというふうに理解をしますが、根拠法令と併せて説明してください、端的に。

○政府参考人(前川喜平君) 全国学力・学習状況調査は、現行法でいきますと第二十三条、改正案でいきますと二十一条の第十七号「教育に係る調査及び基幹統計その他の統計に関すること。」の規定に基づきまして教育委員会が行う職務でございまして、文部科学省が定める実施要領により市町村教育委員会が結果の公表の判断を行うこととしております。
 改正後におきましても、全国学力・学習状況調査の事務が教育委員会の職務権限に属するということは変わりませんので、教育委員会が結果の公表の判断を行うということに変わりはないわけでございます。

○田村智子君 これは大臣にもちょっとお聞きしたいんですね。
 学力テストの結果の取扱いは、一歩間違えれば過度な競争や序列化を生み、学校の授業や行事にまで悪影響を与えます。そうである以上、これを公開するのかどうかということはすぐれて高度な教育専門的な判断が不可欠だと考えます。また、学校ごとのテスト結果の公表の是非は学校の教育課程にも大きな影響を与えるだけに、これは市町村だけでなくて、学校との密接な意思疎通、連携、これを前提にして判断することが望ましいと思いますが、いかがですか。

○国務大臣(下村博文君) 全国学力・学習状況調査の結果については、国として、我が国の児童生徒の学力等の状況について説明責任を有していることから、国全体の状況に加え、都道府県ごとの公立学校全体の状況を公表しております。これは、都道府県教育委員会は教職員の給与等を負担し、広域で人事や研修を行うとともに、市町村教育委員会に対し、市町村の教育に関する事務の適正な処理を行うため必要な指導、助言、援助を行うなどの役割と責任を有しているためであります。
 各都道府県においては、全国学力・学習状況調査の結果等を踏まえ、他の都道府県における実践について学んだり教職員を派遣したりすることなどによりまして、他の都道府県の優れた取組を取り入れ、教育施策の改善充実を図っており、都道府県ごとの平均正答率の公表が過度な競争を招いているとは考えておりません。
 また、市町村の教育委員会については、それぞれの市町村の教育委員会で判断すべきことであるというふうに思いますが、基本的には、学力も、これまでのような暗記、記憶中心ではなく、児童生徒の創造性、クリエイティブ、企画性、そういうようなあるべき方向性の目指すべき学力に合ったような試験内容と、それから、そういう意味での競争というのは、これは一人一人に結果的には必要なことであるというふうに思いますが、ただ単に点を比べるという意味での過度の競争原理を促進させるようなことについては、それぞれの市町村教育委員会については十分な配慮を行う必要はあると思います。

○田村智子君 時間ですので終わります。