日本共産党 田村智子
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【14.06.12】文教科学委員会 地方教育行政法改正法案 首相質疑

○田村智子君 首長の意向の反映が学校教育に何をもたらすか、これが法案への大きな懸念です。そこで、教育についての大綱を首長が策定するというこの法案と類似した制度を先行的に実施している大阪府、大阪市について見てみたいと思います。
 府、市とも、二〇一二年に、自治体の教育振興基本計画案は首長が策定し、議会の同意を得るという教育行政基本条例を制定しています。この条例の制定に当たっては、地方教育行政法違反の疑義が指摘をされて、計画案は首長が教育委員会と協議し、策定することとなりました。さらに、教育委員会の権限が侵害されないように、現行地教行法二十三条の教育委員会の職務権限、二十四条の長の職務権限に基づいてそれぞれの権限を行使すると、こういうことも定められました。
 こういう条例で相違ないか、まず局長に確認したいと思います。

○政府参考人(前川喜平君) 御指摘の大阪府教育行政基本条例の第二条におきましては、委員会及び知事は、地方教育行政の組織及び運営に関する法律第二十三条及び第二十四条に規定する職務権限に基づき、適切な役割分担の下、府における教育の振興に関する施策の充実を図らなければならないと規定されていると承知しております。
 また、同条例の第四条第一項におきましては、知事は、委員会と協議して、基本計画の案を作成するものとすると規定されていると承知しております。
 また、同様の内容は大阪市の教育基本条例におきましても規定されているというふうに承知しております。

○田村智子君 計画の議会同意という点を除けば、今回の法案と同じように首長の関与を強めるという仕組みを導入したということです。その後、二年で大阪の教育の自主性、自律性は大きく崩れ、保護者、住民の教育への信頼を損ねる事態が次々と起きています。時間の関係で、ここでは一例として民間人校長について取り上げます。
 学校教育法施行規則では、校長は原則として教育に関する職に就いていることが条件とされています。ただし、学校の運営上特に必要がある場合には、教育に関する職の資格を有する者と同等の資質を有すると認める者等を校長として任命し又は採用することができるとして、いわゆる民間人校長、これを認めているわけです。
 大阪市では、市長が全ての長を公募にすると強く主張をして、二〇一二年に制定した大阪市学校活性化条例で、学校長を原則公募としました。公立学校の校長の半分は民間人からの公募、あとの半分は教育職からという目標も設定されたわけです。初代民間人校長は、二〇一三年の春、応募者九百二十八人の中から十一名が採用されました。ところが、半年もたたないうちに、保護者へのセクハラ等、六人がトラブルを起こしています。地元の新聞では、三か月で辞任、セクハラ、六人に問題と報じられたわけです。つい先日も、府立高校ですけれども、民間からの校長が万引きで逮捕をされています。
 問題となっている民間人校長がいるある中学校で保護者がまとめた資料を私も入手することができました。告発されている問題事例の一部を紹介します。
 修学旅行でのラフティングで生徒を川に突き落とす、生徒の顔を水につける。一年生と三年生の学年集会で、授業がつまらないなら一時間当たり千円換算で返せと要求しなさいと発言し、授業の収拾が付かなくなる。猛暑日に独断でイベントを開催、ところが、PTAには学校行事と言い、教職員にはPTA共催行事だと各々にうそをついていたことが判明。連日、校長室で議論という名の揚げ足取りを教頭に行い、教頭は、校務が滞り仕事に戻してほしいと一分近い土下座を校長に行う。一学期の間に私的に生徒の写真を約二千枚撮影。社会科見学でビールを飲み、帰校後、赤ら顔で校務に就く。韓国・朝鮮人等への差別的な文章を内部文書に記し、抗議され、その後の卒業式には欠席。近隣の小学校卒業式に中学校長として列席するが、礼服を着用せず、汚れた靴で、しかもかかとが踏まれた状態であったと。
 この文書には、誇張した表現は一切ありません、第三者の裏も取れているものであり、PTA役員が校長本人から事後確認が取れた事例のみ記載ですと書かれています。
 民間人だろうとなかろうと、こういう校長、これ全部、一人の校長がやったことなんです。こういう校長は教育者として失格で、教育職と同等の資質があるとは到底言えないと思いますが、大臣の見解をお聞きします。

○国務大臣(下村博文君) それは、今聞いた範囲内ではおっしゃるとおりだというふうに思います。
 そもそも校長は所属職員を監督する立場にある者でありまして、大阪市において民間出身の公募校長による不祥事が続いていること、これは大変遺憾であるというふうに我々も認識しております。
 リーダーシップを発揮し、組織的、機動的な学校運営を行うことができるような適任者を校長に確保するため、教育委員会が教員出身でない者を校長に任用することは一つの方法でありますし、それ自体は決して否定することではないというふうに思います。その際、教育委員会は採用の際に資質について十分な調査、選考を行いまして、教育に関する職にあった者と同等の資質を有すると認める者を校長に任用する必要があります。
 大阪市教育委員会では、民間出身の公募校長について、書類及び面接による選考を通じ、リーダーシップを発揮し、その権限と責任により自律的な学校運営を行えるかなどの観点から候補者の教育的識見等をしっかり見極めたとのことであります。これにより、教育に関する職にあった者と同等の資質を有すると認める者を校長に任用したというふうに聞いております。
 しかし、今御指摘があったことを含め、民間出身の公募校長による不祥事が続いている状況を踏まえれば、採用の際の選考の在り方そのものにも改善すべき点があるのではないかと考えております。
 文科省としては、校長の任用に当たっては、資質について十分な選考を行い、適任者を確保するよう、引き続き都道府県教育委員会等を指導してまいりたいと考えます。

○田村智子君 これもう大臣も失格だとお認めになったわけですけれども、市の教育委員会事務局は事実調査を行った上で更迭案を上げたんです。ところが、市教育委員会の会議では、これは橋下市長に賛同する委員が多数のためなのか、更迭案を否決したんですね。保護者たちは納得せず、市議会に更迭を求める陳情を上げ、これは自民党も共産党も、維新の会以外は全ての会派が賛成して採択をされました。それでも橋下市長は、感謝すべき校長だと言ってはばからず、現在に至るも擁護しています。
 市議会は事態を重視して校長の原則公募の条例を修正しましたが、橋下市長はこれを再議にかけ、議会は維新の会が多数であるため、原則公募の条例はそのままとなっているという事態なんです。民間校長の横暴な学校運営の影響からか、今や教頭の試験を受ける教員が激減をしていて、その合格率は八〇%にまで跳ね上がっているとも聞きます。
 このように強力な権限を持つ首長に教育について更に強い権限も与えると。この法案は運用次第では大阪のように教育に大変な打撃を与えると、こういう深刻な法案だということは指摘をしなければなりません。
 もう時間がありませんので、残る時間では運用面で、法案は悪いんですけれども、運用面で時間が許す限りただしていきたいと思います。
 十日の質疑で民主党石橋委員が、地教行法四十八条に基づき、都道府県教育委員会が大綱に基づき市町村教育委員会に指導できるかという質問をされました。初中局長は、指導はできるが、その指導に市町村教育委員会は従う義務がない旨答弁をされています。
 そこで、都道府県の大綱に市町村教育委員会の権限を拘束する内容、例えば市町村立学校の教科書採択であるとか、学力テストの学校ごとの結果公表を行うものとするなどの記載をすることは適当ではないと大綱に書くこと自体が適当ではないというふうに考えますが、その点、いかがですか。

○国務大臣(下村博文君) 現行の地方教育行政法第四十八条に基づき、都道府県の教育委員会は市町村に対し、必要な指導、助言、援助を行うことができるものであり、各都道府県の教育委員会においては市町村立の小中学校の取組を支援する各種施策を行っているところであります。したがって、こうした施策について都道府県において大綱に記載することは、これはあり得ると考えます。
 一方、都道府県の大綱に市町村の権限を拘束する内容を記載することは、これは適当でないと考えます。仮にそのような記載の大綱が策定されたとしても、都道府県の大綱に市町村が従う義務はありません。

○田村智子君 適当ではないし、従う義務もないと確認しました。
 次に、総合教育会議の協議題にすべきでない事項として、委員会の審議では教科書と人事に関することがあるということが答弁されましたが、間違いがないかを確認したいのと、加えて、その他教育の自主性、自律性、政治的中立性の観点から協議題にすべきではないと考えられる事項にはどのようなものがあるか、お答えください。

○政府参考人(前川喜平君) 教育の政治的中立性を確保するという観点から、教育の政治的中立性の問題が生じ得る事項といたしまして教科書の採択でありますとか個別の教職員人事というものを挙げたわけでございますけれども、これは一つの例示でございます。ただ、この例示につきまして、例示を網羅的にするということは難しいわけでございますけれども、そのほかに考えられるものといたしましては、例えば、首長が自ら属する党派の主義主張に偏した教材を学校で使用すること、あるいは首長が自ら属する党派の主義主張に偏した教育の実施を求めるというようなことにつきましては総合教育会議において協議をすべき事項ではないと考えております。

○田村智子君 それは協議題にもすべきでないということを確認しました。
 教育委員会の権限に属する事務で、教育委員会が反対したにもかかわらず、協議を尽くさず首長が大綱に記載する、こういうことは教育委員会制度の趣旨に照らしても問題が大きいことだと思います。教育委員会が教育専門的な判断から学校ごとの学力テストの公開はすべきではないと表明しているにもかかわらず、首長が公開すると大綱に書くということとか、あるいは教科書採択の方針などが問題になるということが想定されるわけです。
 そこで、確認をしたいのですが、現行法の二十三条、教育委員会の職務権限、法案では二十一条ですね、教育委員会の権限に属する事務については、教育委員会が反対しているにもかかわらず首長が大綱に記載するということも適切ではないというふうに考えますが、いかがですか。

○政府参考人(前川喜平君) 大綱は首長が策定するものとしておるわけでございますが、策定の際には、教育行政に混乱が生じないようにするためにも、首長と教育委員会との間で十分に協議し、調整を尽くすということが肝要でございます。
 仮に、教育委員会の権限に属する事項であって、それを教育委員会の同意がないまま大綱に記載するということは、これは起こり得ないとまでは言えないわけでございますけれども、一般的に望ましいとは言えないと考えております。

○田村智子君 望ましい事態が起こらないためにも、適切ではないと考えますが、いかがですか。

○政府参考人(前川喜平君) 望ましくないということでございます。

○田村智子君 次に行きます。
 法案第一条の四、九項で、前各号に定めるもののほか、総合教育会議の運営に関し必要な事項は、総合教育会議が定めるとあります。この定めるというのは、教育委員会と首長の双方が同意をして定めるということなのか、また、その運営に関する事項の中に、大綱以外の協議題についてはあらかじめ双方の同意を必要とするという趣旨を定めることは可能なのか、確認します。

○政府参考人(前川喜平君) 御指摘の改正案の第一条の四第九項でございますが、この法律案に規定されている事項のほか、総合教育会議の運営に必要な事項につきましては総合教育会議で定めるとされているものでございまして、それはすなわち、会議の構成員でございます首長と教育委員会の合意に基づき会議の運営方法が定められるということでございます。
 会議の運営に必要な事項は、それぞれの地方公共団体の実情に応じまして必要と考える事項を定めるということになりますので、国として一律にこういうことは定めなさいとか、こういうことは定めてはいけませんとかいうことではございませんけれども、例えば協議題の決定方法として事前に首長と教育委員会の双方で同意したものとするというような運営方法を定めるということは考えられるところでございます。

○田村智子君 総合教育会議は教育委員会と首長との連携を強めることが趣旨だと言っている以上は、以上のように協議題にふさわしくないものを首長が一方的に決めるべきではないと思いますし、その大綱の記載が逆に対立を深めるというようなことがあってはならないと思うんです。それだけに、施行通知によって、首長が一方的に協議題決めるべきじゃないよ、あるいは大綱というのはこういうことが適切だよということは、きちんと整理をして周知徹底することが必要だと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(下村博文君) 総合教育会議における協議の対象として適切でない事項や、大綱の策定に当たっては十分に協議し調整を尽くすことが重要であることなど、改正案の内容や運用の在り方につきましては、この国会審議の中で慎重に議論され確認されてきたところであります。こうした重要な事項については、法案が成立した場合には施行通知や説明会等を通じて丁寧に周知してまいりたいと考えております。

○田村智子君 それから、調整の付かない事項を首長が大綱に記載した場合、これは起こり得るわけです、権限を持つ教育委員会が執行しない事項を記載することになり、そのような記載は意味がないという答弁が繰り返されました。仮に首長がその意味のないことを書く場合、これは意味がない部分だということが正しく住民に理解できるようにすることが必要だと私は思います。
 こういう指摘、石橋議員からも何回か行われまして、大綱の策定過程は住民に公開されているとか、議事録で総合教育会議や教育委員会会議の議論を読めば分かるという趣旨の答弁も繰り返されたわけです。質問の中でも指摘されたとおり、総合教育会議を大多数の住民が傍聴するとか議事録を全て読むということは、これはなかなか考えにくいことなんですよ。まずあり得ないと私も思います。
 では、それ以外の周知徹底の方法が必要で、例えば大綱の公表に際して、この部分は意味がない部分であるということを首長が自ら付記をするとか、つまり合意に至っていない、執行できない部分ですと、あるいは教育委員会が独自に広報をするということなどはできるのかどうか。また、それができるとしたら、本来、合意できていないものというのはちゃんと知らせることが必要ですから、そういうことができるんだよということは奨励されるべきだと思いますが、いかがですか。

○政府参考人(前川喜平君) 大綱を策定するに当たりましては、策定権者は首長でございますけれども、首長が総合教育会議において教育委員会と協議し調整を尽くすということが何よりも肝要であると考えておりますので、調整の付かないことを、教育委員会が執行する方向で同意していないような事項について記載されるということは、基本的には想定されないわけでございまして、余りその例外的な事態につきまして周知しなければならないとまでは考えていないわけでございますけれども、仮に首長と教育委員会の調整が付かなかった事項が大綱に記載されているという場合に、それを明らかにする方法といたしまして、首長と教育委員会の調整が付かなかった事項が大綱に記載されているということを教育委員会が自ら広報するような形で情報提供をするというようなことでありますとか、あるいは首長に教育委員会が同意していない旨を大綱の中に付記してもらうというようなことは想定されないわけではないと考えております。

○田村智子君 教育委員会自ら広報できると。首長が判断すれば自ら付記できることは、首長の判断ですから私はできるというふうに思います。
 最後、一問、教育委員の任命の在り方について大臣にお聞きします。
 これ、多様な教育についての民意を反映する上では、一党一派に偏った委員構成では様々な問題が生じ得ます。地教行法でも同一政党には属せないというふうになっています。これ、政党所属ではなくとも、例えば首長のイエスマンのような人物ばかりを任命する、こういうことを重ねていって、結局教育委員会が首長の意のままに判断するということになれば、これは教育委員会制度の趣旨に反することになると思います。そうならないように多様な人選が大変重要だと思いますが、大臣の見解をお聞きして、終わります。

○国務大臣(下村博文君) 現行法におきまして、第四条第四項において、委員の任命に当たっては、委員の年齢、性別、職業等に著しい偏りが生じないよう配慮する旨の規定があり、多様な民意が反映されるよう配慮することが求められております。
 教育委員には、大所高所からの知見や教育長の事務執行のチェック機能が期待されるところでありまして、こうした観点から、教育委員、教育長、適切な人材が行われることが望ましいと思います。

○田村智子君 終わります。

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(首相質疑)

○田村智子君 五月二十三日の本会議質問で、この法案によって全自治体に策定が義務付けられる大綱、教育の基本方針ですね、これについて総理に質問しました。大綱には首長の判断で教育委員会の専権事項、例えば、愛国心教育に最もふさわしい教科書を採択するなどの内容まで書き込めるのではないかという私の質問に、総理は、「教育委員会が適切と判断した場合においては、教科書の取扱いに関することなど、首長の権限に関わらない事項について記載することも可能」と答弁をしました。
 ところが、十日の委員会質疑で、この法案は、教育委員会の専権事項も教育委員会の判断に関係なく、大臣の答弁によれば、文科大臣の答弁によれば、首長が勝手に書くのは可能であるということが明らかになりました。
 総理は、「教育委員会が適切と判断した場合」とわざわざ限定し、教育委員会が同意しなくとも首長が勝手に記載できるということを意図的に隠したということなんでしょうか。
 いや、総理の答弁ですから、総理で。時間ないんですから、総理で、総理で。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 大綱は首長が策定するものとし、教育委員会との合意までは必要としていませんが、策定の際は、教育行政に混乱が生じないようにするためにも、首長と教育委員会との間で十分に協議をし、調整を尽くすことが重要であると考えています。
 これを前提に、大綱に記載する事項について、教育委員会が適切と判断した場合においては、「首長の権限に関わらない事項について記載することも可能」と申し上げたところであります。
 また、先般の本会議においても、首長の大綱策定に当たり、教育委員会との合意までは必要のない旨明確に申し上げているところでありまして、わざわざ外して答弁したということではございません。

○田村智子君 私は望ましいケースを聞いたのではなく、法案の解釈について質問をしたんです。教育委員会が適切に判断した場合と、教育委員会の判断のいかんにかかわらずというのは、全く違います。
 この法案によって、教育の自主性が首長によって侵されるのではないかということが国民の中でも最も大きな懸念です。中でも、教育委員会が反対したときに大綱に書き込めるのかどうかということが一番心配されること、これを答弁せず、都合のいいケースに限定したということは、極めて重大だということを指摘しなければなりません。
 時間がないので、次に行きます。
 大綱について、私が教科書採択を取り上げたのは、これはやっぱり歴史教科書の採択という、極めて教育の自主性、教育の政治的中立性が必要とされる事務が政治的に支配される懸念が現にあるからです。
 現在、文部科学副大臣でおられます西川京子衆議院議員、昨年四月十日の衆議院予算委員会で、日本軍慰安婦のことを言わば単なる売春行為であると断定し、高校教科書が日本軍慰安婦を書いていることを非常に問題だと思いますと述べられました。
 同じ予算委員会では、維新の会の中山成彬議員が、従軍慰安婦の問題が教科書に相変わらず残っているとした上で、日本人としての自信と誇りを取り戻す、そういうのも教科書検定の第一項目に挙げることについてどうかと質問し、総理は、「検定基準においてはこの改正教育基本法の精神が私は生かされていなかったと思います。そして同時に、検定官自体がその認識がなかったんじゃないのかなとも思います。」と答弁をされています。
 さらには、改正教育基本法に沿った教科書採択をと、特定の出版社の教科書採択を進める政治的な運動もあります。こうやって見たときに、日本軍慰安婦を詳しく教える教科書は改正教育基本法に違反しているから採択するなという政治的主張が自民党など与党とする首長によって起きる懸念が払拭できません。
 総理は河野談話を継承すると表明しています。河野談話は、慰安所における生活は強制的な状況の下での痛ましいものであったことなどを明らかにした上で、歴史教育、歴史研究を通じて、このような問題を永く記憶にとどめ、同じ過ちを決して繰り返さないという固い決意を表明しています。この立場からすれば、現在、従軍慰安婦について記述する高校教科書を改正教育基本法の目的、目標にのっとっていない教科書だとは到底言えないと思いますが、総理の見解を伺います。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) これまでも申し上げておりますように、歴史に対して政治家は謙虚でなければならぬと考えております。歴史問題は政治・外交問題化されるべきものではないわけでありまして、歴史の研究は有識者や専門家の手に委ねるべきものであると考えております。
 そして、国民一人一人が自らの誇りと自信を取り戻すことができるよう、改正教育基本法の趣旨を踏まえた教科書で子供たちが学ぶことが重要であると思います。教科書にどのような事項を取り上げ、どのように記述するかは、教科書発行者が判断し、申請した内容について、先般改正した検定基準に基づき検定がなされるものでありまして、例として挙げられました慰安婦についてもその中で取扱いが検討されるものであります。
 今後とも、教育基本法の趣旨を踏まえ、バランスよく記載された教科書を用いながら、我が国の歴史について子供たちがしっかりと理解を深めていくことができるように取り組んでいきたいと考えております。

○田村智子君 質問したことに答えていないんです。現在使われている従軍慰安婦について記述した高校教科書は教育基本法の目的や目標に沿っていないんですか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 今申し上げましたように、その判断をするのは私ではなくて、まさにこの検定基準に基づき検定がなされる検定官によって検定がなされていくわけでありますので、私がその質問に答えることは控えさせていただきたいと、このように思いますが、検定官においては、先般改正した検定基準、これは教育基本法、改正された教育基本法にのっとって、この改定された検定基準にのっとって適切に検定がなされるものと思います。

○田村智子君 慰安婦の問題を政治化させているのは、自民党の皆さんたちの質問の中からどんどん出てくるわけですね。今のことについても明言されないというのは、私、重大だと思いますよ。私は、やはり河野談話を継承すると言っている以上は、政府としても、従軍慰安婦はただの売春だったなどという河野談話を傷つける主張とは闘う必要があると思うんです。
 その上で注目すべきは、河野談話以降も、日本軍慰安婦の実態を明らかにする新たな証拠が発見されていることです。六月二日、日本軍慰安婦問題アジア連帯会議が総理に、河野官房長官談話後に発見された日本軍慰安婦関連公文書等資料五百二十九点を提出しています。その一つ……

○委員長(丸山和也君) 田村委員、質問の趣旨を本法案に関連する範囲にしてください。

○田村智子君 私のときだけそう言うのは非常に不当だと思います。

○委員長(丸山和也君) いやいや、私のときだけ、あなたの場合、特別だからですよ。

○田村智子君 私は、歴史教科書の問題は政治的中立性の問題なので聞いています。
 この五百二十九点の資料のうちの一つは、野戦酒保規程改正に関する件、慰安所が軍の正式な施設として位置付けられたことを示す公文書です。オランダ領インドネシアのバタビアでの裁判資料には、ジャワ島に憲兵隊長として駐屯していた兵曹長が、断ると顔を平手で二十回くらい殴った、ピストルで脅迫し、撃ち殺してやるぞと脅したなど……

○委員長(丸山和也君) 本法案に関する質疑にしてください。

○田村智子君 女性たちを慰安所に連れ出した手口が生々しく書かれています。
 総理、歴史教育や教科書の在り方を検討するためにも、こうして提出された五百二十九点の一部でも自らお読みになり、また一つ一つを政府として検証する、そのことが必要だと思いますが、いかがでしょうか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 基本的に、そうした資料等については、言わば専門家によって分析がなされるべきであろうと、このように思います。資料の、言わばどれぐらいこれは確実な資料であるかどうかという分析も含めて専門家によって検証されるべきではないかと、このように思います。

○田村智子君 河野談話を検証するといった場合には、その河野談話の中で強制を示す資料はなかったということを言われているんですけれども……

○委員長(丸山和也君) 田村君、度々言いますけれども、法案審議ですから。

○田村智子君 それが本当だったのかということについても検証することが必要だと思います。
 委員長に一言申し上げます。
 私は、河野談話の問題は今国会でも何度も議論になってきた。しかも、それは歴史教育……

○委員長(丸山和也君) いや、だから、本法案に関する形で、独擅の演説場じゃないんだから、ここは。

○田村智子君 歴史教科書を問題とする中での議論になってきています。今法案の審議でも、このことが政治的中立性の問題として他党の議員からも何度も質問がされました。そのときに、私の質問に対してだけそのような抗議をするということは、私からも抗議を申し上げたいというふうに思います。
 教育の政治的中立性という問題が非常に問われている問題で、法案に対する答弁についても不誠実な答弁が行われた、このことにも強く抗議をして、質問を終わります。