【14.03.17】文教科学委員会 非正規職員の社会保険適用の問題、学び直し支援について
○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
昨年十一月二十八日の本委員会で、臨時教員などの社会保険の適用についての質問をしました。実態は継続任用なのに、年度末などに一日あるいは数日の空白を置くことで社会保険から一旦脱退させる事例が少なくないと。こうした事案について厚労省からは、実態として雇用継続の場合は社会保険も継続することが法の運用であり、これは公務の職場でも同じであるということが明確に答弁されました。
この質問後、厚労省はどのような対応をされたか、お答えください。
○政府参考人(樽見英樹君) お答え申し上げます。
昨年十一月二十八日のこの委員会におきまして、先生御指摘のとおり、事実上の使用が継続していると認められる場合には、被保険者資格は継続するものとして取り扱うことが妥当と考えているということを申し上げたところでございます。
これを踏まえまして、今年の一月の十七日になりましたけれども、日本年金機構の担当理事宛てに、私ども厚生労働省の保険局の保険課、年金局事業管理課の連名でございますけれども、課長通知を発出をいたしまして、事実上の使用が継続していると認められる場合には被保険者資格は継続するものとして取り扱うことが妥当ということをお示しをし、適用事業所に対して適切に周知、指導を行うように指示をしたところでございます。
また、総務省におかれましても、今年の一月の二十九日に地方自治体に対しまして事務連絡というものを発出をされておりまして、この課長通知について周知を図っていただいたというふうに承知をしてございます。
○田村智子君 ありがとうございます。
この課長通知が出されたことで、三月分の社会保険負担分を補正予算で手当てをして、この三月、脱退手続を取らないことになったという件が実際にあります。
しかし、その一方で、自治体によっては、問合せをしてもそのような文書は見ていないというふうに答えるところもまだあるんですね。この法の運用というのは厚労省の責任ですので、是非、保険者、被保険者にこの課長通知の内容を周知するとともに、自治体をしっかり監督指導するよう改めて求めたいと思います。一言お願いします。
○政府参考人(樽見英樹君) 日本年金機構におきまして事業所調査といったものも定期的に実施しておりますし、こうした機会などを通じまして、被保険者資格の取扱いの解釈についてしっかりと周知するとともに、必要な指導等を適切に行ってまいりたいと考えます。
○田村智子君 この問題で、大臣にも一言いただきたいんです。
空白の一日あるいは数日、この問題は長きにわたって臨時教員の権利を侵害してまいりました。社会保険の脱退手続を取られることで、年度末、年度初めの非常に忙しい時期に国保、国民年金への加入・脱退手続を自分でやらなければならないと。
文科省からも実は通知を、事務連絡ですが、出していただきまして、これ、各教育委員会も、多くがこれまでのやり方を見直すという方向だと聞いています。しかし、一方で、いまだ改善方向を示そうとしていないところがあり、これは看過できません。この三月にまた社会保険からの脱退手続が取られれば、それは法の適正な運用をサボタージュするということで、仮に本人から資格確認請求が行われれば年度を遡って年金記録の訂正を行わなければならないという重大問題なんです。
是非、文科省からもしっかりと指導をお願いしたいと思います。大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(下村博文君) 任用が数日空けて再度行われる場合の厚生年金保険及び健康保険の被保険者資格の取扱いに関する厚生労働省の通知については、文部科学省としても周知を図ることが必要と考え、去る二月十日に各都道府県及び指定都市教育委員会人事担当課に事務連絡を行ったところでもございます。
文科省としては、今後とも諸会議などを通じて厚生労働省通知の周知を更に図ってまいりたいと思います。
○田村智子君 ありがとうございます。
厚労省さんへの質問は以上ですので、委員長のお許しあれば退席いただいて構いません。
○委員長(丸山和也君) じゃ、御退席ください。
○田村智子君 では、続けます。
次に、就学支援金についてお聞きしますが、質問の前に一点、要望をしたいことがあります。
公立高校授業料不徴収の条文を削除したことで、単位制の定時制高校などで入学時に年間授業料を徴収しようとすると、こういう動きが実際にあります。
私、この問題は、二月の初めに文科省を呼びまして、実際にある県で徴収しようとしているよと、所得制限掛けたって話と違うじゃないかと、何とかしなさいということをお話をしましたら、二月五日の日に事務連絡が出されまして、その中で就学支援金については受給権者の授業料に係る債権の弁済に充てるものであり、授業料を徴収せず、就学支援金と相殺させることが望ましいと。一時的であれ、授業料負担を発生させないようにという内容の事務連絡を出していただきました。これは大変素早いやり方で、大変歓迎したんですけれども。
実は、昨日、私の事務所に北海道から連絡がありまして、北海道は単位制の定時制に限って収入証紙で授業料を納めることになっていると。この収入証紙は債権ではないので、文科省のこの事務連絡とは違うんだと言い張っているようなんです。これは、ちょっと余りにもいかがなものかと。是非状況をおつかみいただきまして、事務連絡の中身が正しく理解されるように各県、都道府県委員会、北海道教育委員会も御指導いただきたいと。これは昨日私も情報をつかんだところで、質問通告していませんので、要望にとどめておきます。
就学支援金についてお聞きいたします。
十三日のこの委員会で学び直しの支援事業について留年者も是非対象にということを求めたんですけれども、ちょっと時間もありませんでしたので改めて質問します。
公立高校の授業料不徴収という法律の下では、修業年限を超えた者、原級留置をした者の授業料を徴収するかどうか、これは都道府県などに任されてきました。二〇一二年度には都県と政令市で二十七自治体が徴収を行っていました。
文科省は、この授業料の徴収者数について、全日制でどれだけか、定時制等の課程別で人数つかんでいるかどうか、お答えください。
○政府参考人(前川喜平君) お尋ねの件につきまして、その人数については把握していないところでございますけれども、二十五年度におきまして、公立高校で留年による修業年限超過者から授業料を徴収する場合があるという都道府県につきましては二十都県であるというふうに承知しております。
○田村智子君 これは、政令市含めて二十七自治体、二〇一二年度というふうに私たち聞いているんですけれども。
これ、お配りした資料を見ていただきたいんですが、日本高等学校教職員組合が授業料徴収の実態を全都道府県教育委員会にアンケートを送って調査をいたしました。直近の二〇一二年度を見ますと、授業料徴収された二千三百八十六人のうち、定時制、通信制は二千百十六人と全体の九割近くを占めています。これは高校無償化を行った二〇一〇年度以降、ほぼ変わらない傾向なんです。
この授業料徴収者のうち圧倒的に定時制、通信制の高校生が占めていると。このことについて大臣の御感想をまずお聞きしたいんですけど、いかがでしょうか。
○国務大臣(下村博文君) それぞれの事情があって定時制、通信制に通っているというふうに思いますが、なかなか、全日制のように限られた年数の中で卒業するというよりは、もうちょっと柔軟にという思いを持っている生徒さんも大分多いのではないかと。さらに、通信制の場合には、かつて不登校児であった学生が通っているという事例も多いので、なかなか限られた年数の中で卒業するというのは難しい状況もあるのかなというふうに思います。
○田村智子君 いろんな困難な事情があってのことだと私も思うんです。
この日高教の調査では徴収の理由についても集計をしていまして、これはクロス集計ではないんですけれども、授業料徴収のその理由の九割が留年者だという結果にもなっています。そうすると、定時制で授業料徴収されている者の大多数が留年を理由にしたものだと推測がされるわけです。
文科省の資料についてもその下に付けているので見ていただきたいんですけれども、留年者の割合、これも定時制は割合でいうと全日制の十倍、全日制ですとそれぞれの科で見ても約
〇・三%、それが三%を超えるということですので、十倍になってしまうと。
定時制の生徒が病気や休学あるいは留学、こういう理由以外で留年するその理由は何ですかということを現場の先生にお聞きしましたところ、次のような事例が挙げられました。
一つは、定時制の統廃合が進んでいて長距離通学の生徒が増えている。学校の最寄り駅までは乗り継ぎなどで交通費が高くなって払えない。本当は学校まで五分という地下鉄の駅があるんだけれども、三十分掛かる駅から歩いて通学をする、その負担が大きくて休みがちになってしまう。あるいは、定期券が買えずに交通費の負担から週二回しか通学ができない。また、修学費用を稼ぐため、アルバイトが忙しい。飲食業などで働く子供も増えていて、職場の書き入れの時間と学校の始業時間が重なるために遅刻、欠席が続いてしまって留年してしまう。また、午前中の議論にもありましたけど、発達の遅れのある子供も定時制の中で増えている。四年で終えることができなくて、どうにか六年掛けて一生懸命卒業していくという子供たちもいるんだと、こういうことなんですね。
これ、もちろん全日制に通う子供たちも困難抱えている子、もちろんいると思います。けれども、定時制の子供たちというのはやはり相対的により困難な家庭から学校に通っている子供さんが多いということは、これは皆さん納得されるところだと思うんです。そうすると、やはりそういう困難が留年の多さに結び付いていると、それが授業料徴収の数にも表れているんじゃないかと思いますが、その点はいかがでしょう。先日は遊びとか非行とかという事例が語られたんですけれども、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(下村博文君) 田村委員がおっしゃるような理由も結構あるというふうに思います。
ただ、文部科学省の調査では、定時制高校については不登校生徒が比較的多く、不登校から留年に至るケースがありますが、その理由としては、無気力が三四%、遊び、非行が二一%といった調査が出ておりますので、これらの実態にもやはり留意をする必要があるというふうに思います。
○田村智子君 その無気力や遊びが一体どこから来るものなのかということもやはり丁寧に見ていくことが必要だと思うんですね。
ネグレクトがある、虐待がある、あるいは家庭の事情が複雑で仕事に一生懸命ならなくちゃいけなくて、仕事の方が面白いと、学校へ行って難しいことを習うよりもと気持ちが揺れる子供もいるんじゃないかと。そういう中で、その子供たちをどうやって卒業まで支援していくのかということをやはり検討するのが私は文部科学省の役割であると思うし、それが就学支援金の制度ではないのかなというふうにも思うわけです。
そうすると、やはり丁寧に事情を見て卒業までを支援する制度として考えるということが必要だと思うんですけれども、その点いかがでしょうか。検討が必要だということは、大臣、思われないでしょうか。いかがでしょう。
○国務大臣(下村博文君) それは、おっしゃるとおり、定時制高校には様々な背景を持つ生
徒が在籍をしておりますから、それらの生徒一人一人に対してどんな支援をしていくかということをきちっと検討していくということは大変重要なことだというふうに思います。
このため、平成二十六年度の予算案では、高校無償化制度の見直しによる予算を活用して、定時制高校に多く見られる、一度高校を中退し学び直す意欲のある者について支援する事業を創設するということと、それから、不登校生徒や中退者の多い定時制高校等での学力向上策や学校生活に不安を抱える生徒への対応として、地域人材による指導員等を活用するための予算を計上しております。これは補習等のための指導員等派遣事業でありますが、まず、このような形でできるだけとにかく学校に行こうという意欲を持って、そしてなおかつ、限られた年数の中で進級し卒業しようと、そういう意欲を更に促進させるような施策をしていきたいというふうに思います。
二十七年度以降は、そういう状況を見ながら判断をしてまいりたいと思います。
○田村智子君 そうなんですね。授業料が例えば留年して発生したと、そのことが理由になっちゃって、じゃやっぱり卒業はもう諦めようと、そこから中途退学ってなっちゃうのが私は一番悲しいことだと思うんですよ。その授業料が発生してしまうことをもって卒業への意欲が失われてしまうようなことのないように、是非、制度について考えていただきたいというふうに思うんです。
それと、もう一点、十三日の委員会のときに、病気や留学などのやむを得ない休学の場合、これは就学支援金をちゃんと面倒見るんだというふうに大臣言われたんですね。これは、確かに支給の休止を申し出るということで、復学した際には休学期間の就学支援金を受けられるということですけれども、この場合も上限は三十六か月なんですよね。そうすると、留学という場合は恐らく計画的だと思うんです。この丸々一年間留学しましょうと、だから一年分丸々後ろに持ってきて、卒業までの就学支援金が受けられるということになると思うんですが、病気という場合はそういうわけにいかないわけですよ。年度途中、夏以降、体調を壊しちゃったというふうになると、これは半年分ぐらいの卒業までの間というのは復学しても就学支援金の対象から漏れてしまう、三十六か月を超えるわけですから。そうすると、やっぱり病気の子、こういう子供たちも必ずしも卒業までの支援制度に、これ、ならないわけなんです。
こういう様々な困難を抱えている、その中でも卒業しようとしていくその子供たちの努力を応援するという制度にしなくてどうするんだろうかという思いがあるんです。まして、授業料不徴収というふうに定めているときには、先ほどお話ししたように、多くの都県で徴収を行っていないんですよ、法律で不徴収だから、公立の場合だと。でも、今回は不徴収という条項をなくしちゃったので、そうすると、新たに留年者に就学支援金も来ないから徴収しようじゃないかという県が出てくることも危惧がされるわけですよ。そういう方向になっていくことが本当に危惧されるんです。
となると、卒業までを支援するという就学支援金制度にするということを、是非、病気の方も含めて検討いただきたいんですけど、もう一度大臣、お願いします。
○国務大臣(下村博文君) 問題設定の前提条件がどうかなと思うんですが、やはり学生ですから、学校ですからね、決められた年限、年数というのは決まっているわけで、その中でいかにきちっと卒業できるようにまず本人が前向きに意欲、努力を持つか、これは一般論ですけれども、ということがやっぱり必要だと思うんですね。
ですから、留年してもそのまま対象になるというよりは、やっぱり年数を限って、先ほどの文科省のデータでも申し上げましたが、本人が無気力とか遊びとか非行によるこの結果だけでも五五%留年に至るケースということで出ているわけでありますから、まずはその無気力感とか遊びとか非行から早く脱却して、限られた年数の中で学校に行かせるようなことこそがやっぱり教育で求められるのではないかというふうに思います。
それから、今お話がありましたが、休学については、これは就学支援金の給付の停止を申し出た者については休学期間中は就学支援金の受給期間の進行を停止することができるため、この場合においては修業年限を超過して留年することになった場合でも就学支援金を受給できるということになるわけでありまして、病気がどれぐらいの期間かということについてあらかじめ分からない場合もあるでしょうけれども、ただ、そういうこともできるだけ把握しながら、そういう場合においては配慮するようなことはもちろん必要だと思います。
○田村智子君 今の大臣の数字でも、無気力、遊びが五割ぐらいだと、私はそれも原因よく見るべきだと思いますけれども、逆に言えば、じゃ、四割ぐらいの子供はそうじゃなくて留年をしているということじゃないですか。経済的な理由とか家庭の事情とか、そういうことですよね。そういう子供たちも支援しないということになっちゃうのかということなんですよ。
私、これはもう繰り返しの押し問答になってしまうので、ここからの制度として、一旦中退して学び直そうという子は支援していこう、これはすばらしいことだと思います。同じように、困難を抱えながら卒業しようとする子供たちも、是非、大臣も御苦労されて学問を成し遂げられた方ですから、そのお気持ちで支援の制度をいろいろ再考いただきたいということを申し上げまして、質問を終わります。