活動報告

活動報告
地域公共交通活性化法案/鉄道網生かす政策へ/田村智氏訴え/参院本会議

 ローカル鉄道の在り方をめぐり、「再構築協議会」の設置などを内容とする地域公共交通活性化・再生法改定案が12日、参院本会議で審議入りしました。日本共産党の田村智子議員は「『再構築』の名のもと、赤字を理由としたローカル鉄道廃止、バス等への転換が大規模に進みかねない」と指摘し「鉄道網を守り生かす政策への転換を」と訴えました。

 田村氏は、同協議会設置の目安となる輸送密度(1日1㌔あたりの乗客数)1000人未満の路線・区間の「すべてを対象とするのか。さらに広がるのか」と質問。斉藤鉄夫国土交通相は、同路線・区間は62線103区間で、「一つの目安。個別に判断する」と答えました。

 田村氏は、衆院での審議で斉藤国交相が「協議会の結果、鉄道として存続する線区が一定数出てくる可能性がある」と答弁したが、「相当数の線区がバス等に転換されることを想定するのか」と質問。斉藤国交相は「バスに転換する場合もありうる」として否定しませんでした。

 斉藤国交相は、地域公共交通の今年度予算500億円に対し、道路関連は2兆1183億円にのぼると答弁。田村氏は、国鉄分割・民営化で鉄道は民間任せにする一方で、道路などには巨額な費用を投じてきたと批判。「鉄道網を衰退させ地域の過疎化に拍車をかけてきた反省に立つべきだ」と迫りました。

 

地域公共交通活性化・再生法改定案/田村智議員の質問/参院本会議/要旨

 本法案の最大の焦点は「ローカル鉄道の再構築」の名のもと、赤字を理由としたローカル鉄道の廃止・バス等への転換が大規模に進みかねないことです。

 昨年、国土交通省の「(鉄道事業者と地域の協働による地域モビリティの刷新に関する)検討会」は、輸送密度1000人未満の路線・区間にバス転換等の選択肢を示し、関係自治体と鉄道事業者による「再構築協議会」を設置し、3年以内に結論を出すよう求めました。この提言を受け、本法案は、鉄道事業者、自治体どちらかの要請で、国交相が再構築協議会を組織するとしています。

 輸送密度1000人未満の路線、区間すべてを同協議会の対象と考えるのか、さらに広がる可能性はあるのか。衆院の質問で斉藤鉄夫国交相は「協議会の結果、鉄道として存続する線区が一定数出てくる可能性があるのではないか」と答弁しました。相当数の線区がバス等に転換されると想定しているのでしょうか。

 自治体との協議で5年前に廃線となった三江線について、島根県知事は「大きな会社と小さな自治体が、協議するとは言いながらも事実上はもう抗しきれない構図の下で廃線が決まっていった」と述べています。事業者のJRが赤字を理由にバス転換を主張すれば、自治体は住民の足の確保のためにやむなく廃線を受け入れざるをえなかったのが実態ではないでしょうか。

 タクシーの協議運賃制度では、認可運賃よりも低くなる下限割れが危惧されますが、そうならない条文上の歯止めはありますか。国交省は、不当な競争を引き起こす運賃が設定された場合、変更命令を出せると胸を張りますが、現に運賃を引き下げる事業者がいるもと一度でも変更命令を出したことがあるでしょうか。交通空白や交通不便地域が対象といいますが、タクシー特措法に基づく特定地域、準特定地域からはずれれば、東京や大阪などでも協議運賃が可能となるのではないですか。

 北海道の深名線(深川―名寄間)は1995年に廃線され、バスが運行されていますが、分断され本数も減少。広域移動が著しく損なわれたことは明らかです。鉄道網はバス路線とは異なる役割を担っています。誰もが広域に移動でき、全国に移動でき、全国から地域に人を呼び込む鉄道網があってこそ地域活性化の可能性が広がるのではないでしょうか。

 国鉄分割・民営化によって地域鉄道は民間任せ、一方で国は自動車道、空港・港湾建設に巨額の予算を投じてきました。国民の財産・鉄道網を衰退させ過疎化に拍車をかけてきたといわざるをえません。その反省にたち鉄道網を守り生かす政策への転換を求めます。


2023年4月13日(木) しんぶん赤旗

 

 

 

○田村智子君 私は、日本共産党を代表して、ただいま議題となりました地域公共交通の活性化及び再生に関する法律の一部改正法案について、斉藤国交大臣に質問いたします。

 本法案の最大の焦点は、ローカル鉄道の再構築の名の下に、赤字を理由としたローカル線の廃止、バス等への転換が大規模に進みかねないことです。

 昨年、JR各社は、輸送密度一日一キロ当たりの乗客数二千人未満の路線及び区間を相次いで公表しました。さらに、国交省の検討会では、輸送密度千人未満の路線、区間について、バス転換等の選択肢を示し、関係自治体と鉄道事業者による再構築協議会を設置し、ローカル鉄道の在り方について三年以内に結論を出すよう求めました。この提言を受けて、本法案では、鉄道事業者、自治体どちらかの要請により、国交大臣が再構築協議会を組織するとしています。

 提言が指標とした輸送密度千人未満の路線、区間はどれだけあるのでしょうか。政府は、この路線、区間全てを再構築協議会の対象と考えるのか、更に広がる可能性はあるのか、併せてお答えください。

 今年三月、JR東日本が、初めて赤字を理由として、千葉県の久留里線、久留里―上総亀山間のバス転換を検討すると発表しました。
 大臣は、国としては、廃線ありき、存続ありきの前提を置かず、あくまで中立的な立場で議論を促すとしていますが、では、事業者がバス転換という方向性をあらかじめ示して再構築協議会の設置を要請した場合、自治体は拒否することができるのでしょうか。

 大臣は、協議会の組織に反対している自治体がいた場合、国として粘り強く調整すると述べていますが、これは何をするのですか。協議会を組織しないという結論はあり得ないということですか。お答えください。

 衆議院での我が党議員の質問に、斉藤大臣は、再構築協議会の結果、鉄道として存続する線区が一定数出てくる可能性があるのではないかと答弁しました。つまりは、相当数の線区がバス等に転換されることを想定しているのでしょうか。

 地域の合意なしに鉄道を廃止した路線はないと大臣は断言していますが、自治体との協議で五年前に廃線となった三江線について、島根県知事は、大きな会社と小さな自治体が、協議するとはいいながらも、事実上はもう抗し切れない構図の下で廃線が決まっていったと述べています。

 これまで廃線に追い込まれたローカル線の多くを見ても、事業者であるJRが赤字を理由にバス転換を主張すれば、自治体は住民の足を確保するためにやむなく廃線を受け入れざるを得なかったというのが実態ではないでしょうか。このように、再構築協議会での合意が事業者の廃線ありきの方針を受け入れることにならない保証がどこにあるのか、お答えください。

 また、再構築協議会には利用者を必ず入れるべきではないですか。国交省は、公聴会等で住民や利用者の意見を反映すると説明していますが、JR北海道の運賃値上げの際、公述人全員が値上げ反対であったにもかかわらず、当時の国交大臣は値上げを認可したではありませんか。公聴会が意見を聞いたという形式的なものにならない保証はどこにあるのか、答弁を求めます。

 協議会が再構築方針として鉄道の維持、高度化を選択するに当たって、国はその指標を示すのですか。大量輸送機関としての鉄道の特性を発揮することが困難であっても、鉄道の維持を選択することは可能か、お答えください。

 協議運賃制度の創設についてお聞きします。
 法案では、鉄道事業者、地方自治体、地方運輸局の協議で定め、国の認可の例外として届出だけでよしとしていますが、主にどういう路線での活用を想定しているのですか。赤字ローカル線で活用されれば、認可運賃の上限を超えた値上げが可能ということでしょうか。

 タクシーの協議運賃制度では、認可運賃よりも低くなる下限割れが危惧されますが、そうならないという条文上の歯止めはありますか。国交省は、不当な競争を引き起こす運賃が認定、設定された場合は変更命令を出すことができると胸を張りますが、現に運賃を引き下げる事業者がいる下で、一度でも変更命令を出したことがあるでしょうか。また、協議運賃は交通空白や交通不便地域が対象といいますが、タクシー特措法に基づく特定地域、準特定地域から外れれば、東京や大阪でも協議運賃が可能となるのではありませんか。

 そもそも、本法案の策定に当たって、政府として、ローカル線を含む鉄道網を国土計画、国策にどう位置付けたのでしょうか。

 衆議院の参考人質疑では、関西大学の宇都宮浄人教授が、ヨーロッパでは地域公共交通は独立採算のビジネスではない、地域公共サービスとして公的資金で支える仕組みになっている、イギリスはグリーン産業革命で鉄道路線の拡大、復活ということを言っていると指摘し、オーストリアやドイツでの鉄道シフトの事例も紹介されました。

 大臣は、温暖化対策として鉄道は重要であると繰り返し述べていますが、ならば、自動車から鉄道へのシフトを数値目標を持ち、ローカル線、貨物を含めた鉄道網の活用を国策として早急に示すべきではないでしょうか。

 同じく参考人質疑で、北海道教育大学の武田泉准教授は、バス転換の問題として、自治体ごとにぶつ切りで運行していることで、鉄道が有していた広域性とかネットワーク性が大きく損なわれていると指摘しました。

 北海道の深川と名寄を結ぶ深名線は、九五年に廃線、JR北海道がバスを運行していますが、深川―幌加内、幌加内―名寄など分断された路線となり、本数も減少。さきに紹介した三江線も、中国新聞の記者が広島県三次から島根県江津までバス移動した記事を掲載していますが、六つの路線バス、乗り継ぎの待ち時間も三時間など、広域移動が著しく損なわれたことは明らかです。

 地域のバス路線は、日常的な暮らしの足として大切です。しかし、鉄道網はバス路線とは異なる役割を担っています。誰もが広域に移動できる、全国に移動できる、全国から地域に人を呼び込む、この鉄道網があってこそ、地域活性化の可能性が広がるのではないでしょうか。

 北海道など、鉄道の廃線、駅舎の廃止が地域にどのような影響を与えたか、バス転換は地域活性化につながったか、まず国として検証を行うべきではないでしょうか。また、過疎化に苦しむ地方の活性化として、鉄道網であるローカル線の維持と活用の抜本的な政策こそ必要ではありませんか。

 鉄道を存続させる方策として、上下分離方式が示されています。我が党は、国が鉄路と駅施設を保有し、運行を事業者が行う国有民営方式への転換を提言しています。

 只見線など、広域に自治体が議論し、連携し、上下分離で自治体がインフラを保有し、バス路線への転換を許さず鉄道を存続させた努力は、国こそ学ぶべきものです。

 国交省は、自治体の上下分離方式に補助金を出していると言いますが、これも含め地域鉄道の維持、活用のための今年度予算は総額幾らか、他方、自動車道路の建設、保守管理の予算は総額幾らか、併せてお答えください。

 国鉄分割・民営化によって地域鉄道は民間任せ、一方で、国は自動車道路、空港、港湾建設に巨額の予算を投じる政策を続けてきました。国民の財産である鉄道網を衰退させ、地域の過疎化に拍車を掛けてきたと言わざるを得ません。その反省に立ち、鉄道網を守り生かす政策への転換を求め、質問を終わります。

○国務大臣(斉藤鉄夫君) 田村智子議員にお答えいたします。
 まず、再構築協議会の対象についてお尋ねがありました。
 地域モビリティ検討会の提言に基づく輸送密度千人未満の線区は、JR各社の公表資料によりますと、令和元年度の実績で六十二路線の百三線区となります。ただし、この基準については、国が協議の場の設置を判断するに際しての一つの目安として示されたものであります。ローカル鉄道が各地域で果たしている意義、役割は様々であり、再構築協議会の設置の判断に当たっては、自治体や鉄道事業者等の関係者の意見をよく聞いて、個別具体に判断してまいります。

 次に、再構築協議会の設置に係る議論の前提について、JR東日本の久留里線を例にお尋ねがありました。
 まず、JR東日本の久留里線、久留里―上総亀山間について、JR東日本は、自治体への協議の申入れに当たって、バス転換を議論の前提にはしていないと承知しております。仮に事業者がバス転換を前提に再構築協議会の開催を要請してきた場合には、当該事業者に対し、前提を置くことなく協議に臨むよう指導することとなります。

 また、御指摘の答弁は、御指摘の私の答弁ですけれども、国として再構築協議会の設置が必要と判断した場合においては、協議会の設置に反対している自治体に対して粘り強く調整していくことを述べたものでございます。

 次に、先日の答弁を踏まえ、再構築協議会の結果、相当数の線区がバス等に転換されることを想定しているかについてお尋ねがございました。
 先日の私の答弁は、これまでの上下分離方式の実績及び各地の鉄道維持、高度化に向けた熱意を踏まえれば、再構築協議会の関係者による議論の結果、鉄道として存続する線区が一定数出てくるのではないかということを答弁したものです。

 他方で、再構築協議会は、廃止ありき、存続ありきといった前提を置かず議論するものであるため、地域での議論の結果、バス等に転換される場合もあるものと考えております。

 次に、再構築協議会での合意が廃線ありきの方針を受け入れることにならない保証についてお尋ねがありました。
 協議会において、再構築方針は、自治体を含む関係者の協議が調うことが前提であり、地域の了解なく廃止の方針が決定されることはありません。その上で、国としては、中立的な立場を堅持しながら、調査事業や実証事業も活用して鉄道事業者に必要な情報の開示を求めるなど、ファクトとデータに基づき議論を進めてまいります。

 再構築協議会の構成員と公聴会の運営についてお尋ねがありました。
 再構築協議会においては、自治体、事業者、関係する公共交通事業者のほか、利用者を始めとする国土交通大臣が必要と認める者についても構成員として協議会への参加を求めることができることとしております。

 地域にとってあるべき公共交通の姿を協議していく上では、利用者を含め幅広い御意見をお聞きして丁寧に議論をしていくことが必要と考えており、公聴会やヒアリング等の実施に当たっては形式的な意見聴取に終わることのないように努めてまいります。

 次に、大量輸送機関としての鉄道特性を発揮することが困難な路線の維持についてお尋ねがありました。
 輸送需要の大幅な減少により、大量輸送機関としての鉄道特性が十分に発揮できない状況にあるローカル鉄道について、自治体が、地域における町づくりや観光振興の取組と連携しながら、利用者の利便を確保し、利用者を回復させつつ鉄道の維持を図っていくことは十分あり得ると考えています。こうした判断は個々の地域、線区の状況に応じて個別に行われるべきと考えており、国として何らかの指標を示すことは考えておりません。

 次に、協議運賃制度についてお尋ねがありました。
 鉄道については、赤字路線での適用を想定しており、例えば並行するバスとの共通運賃化を実現する等、利用者利便を確保するため、認可運賃の上限を超える運賃設定を含め地域の実情に応じた柔軟な運賃設定を可能としています。

 タクシーについては、御指摘の認可運賃よりも低い運賃を設定することを禁じる規定はありません。また、タクシーの運賃について過去に変更命令を発動したことはありませんが、運賃協議に当たっては、自治体、交通事業者、地方運輸局長等により適切な運賃が設定されるよう協議されるものと考えています。

 今般の制度では、運賃を一定の範囲に規制することによって過当競争を防ぐ必要がある、いわゆる特定地域、準特定地域を対象としていません。現在の需給状況においては、東京や大阪などの都市部が直ちにこれらの地域の指定から外れることはないと考えています。いずれにせよ、協議運賃制度の適切な運用を図ってまいります。

 次に、自動車から鉄道へのシフトの数値目標の設定と鉄道網の活用についてお尋ねがありました。
 国土交通省においては、令和三年十二月に国土交通省環境行動計画を策定し、自動車から鉄道を含む公共交通機関へのシフトに関する数値目標を設定しています。

 旅客については、自家用自動車からの乗換輸送量を二〇一三年度の三十八億人キロから二〇三〇年度に百六十三億人キロに増やす目標、また、貨物については、鉄道貨物による輸送量を二〇一三年度百九十三・四億トンキロから二〇三〇年度に二百五十六・四億トンキロに増やす目標をそれぞれ設定しています。

 この目標の達成に向け、鉄道網を活用しつつ、旅客については、MaaSの社会実装、駅前広場等の交通結節点の整備等を通じた公共交通機関の利用促進、貨物については災害時の代替輸送を円滑に行うための施設整備等を行うことで、自動車から鉄道を含む公共交通機関へのシフトに取り組んでまいります。

 次に、鉄道網による地域活性化の可能性、鉄道廃線による地域への影響、ローカル線の維持と活用の抜本的な政策についてお尋ねがありました。
 御指摘のとおり、鉄道の特性の一つとして、ネットワークの存在により、広域的な人の移動が促され、地域活性化につながる点が考えられます。

 他方で、こうした移動需要が期待できず、廃線が選択される場合もあります。その影響について、例えばJR北海道の日高線では、新たな交通体系に移行後のアンケート調査において、実際に利用している方の多くから運行頻度やアクセスなどについて利便性が向上したとの評価が得られたと聞いております。

 このように、地域活性化の取組においてどのような公共交通機関が適当かについては、地域、線区の事情に応じて個々に判断されるべきであり、国としても関係者の協議を促してまいります。

 最後に、ローカル鉄道の維持、活用のための予算額及び道路建設、保守管理の予算額についてお尋ねがありました。
 今回のローカル鉄道の再構築に向けた制度面、予算面での枠組みは、バス、タクシーも含めた地域にとって最適な公共交通を実現させるための枠組みとなっております。これらの地域公共交通全体に関する予算の合計として、令和四年度補正予算では約八百億円、令和五年度当初予算では約五百億円を計上しております。また、道路関係予算は、令和四年度補正予算では三千七百四十五億円、令和五年度当初予算では二兆一千百八十三億円となっております。

 なお、民間事業者が運賃収入を前提として運営する地域公共交通と公的主体が公物として整備している道路とでは、事業構造も大きく異なっており、予算規模を単純比較することは適当でないと考えております。
 以上です。

 


 |