活動報告

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速度引き上げやめよ/物流政策パッケージ 田村智子氏が批判/参院国交委

 日本共産党の田村智子議員は13日の参院国土交通委員会で、政府の「物流革新に向けた政策パッケージ」に盛り込まれたトラックの高速道路での最高速度(時速80キロメートル)の引き上げについて、「憂慮する課題のオンパレードであり撤回すべきだ」と主張しました。

 田村氏は、これまで最高速度引き上げを認めなかった理由に、政府は普通自動車よりも高いトラックの死亡事故率を挙げていたとして、「直近10年間の死亡事故率の推移は一貫してトラックが高く、状況は変わっていない」と指摘し、引き上げ撤回を求めました。

 田村氏は、トラック運転者を長時間働かせるための車両内ベッドの安全基準は、内装に燃えにくい材料を使うとの規定のみだと指摘し、「取り付けや固定についての基準はあるのか」と質問。国交省の堀内丈太郎自動車局長は「基準はない」と答弁しました。

 田村氏は、国際的にも基準はないと堀内局長は答弁(1日)したが、米国では減速時にベッドの乗員が飛び出さないよう設計、設置、維持されなければならないとの規定があることを示し、国交省の答弁には根拠がないと批判。「安全が保障されない車両内ベッドは、走行中は使用しないよう改善基準告示を見直すべきだ」と迫りました。


2023年6月18日(日) しんぶん赤旗ホームページ

 

 

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
 六月二日、物流革新に向けた政策パッケージ案が示されました。その中で、長距離輸送の時間短縮のために、高速道路での大型トラックの速度制限を引き上げる方向が次のように示されました。「交通安全の観点から現在八十キロメートル毎時とされている高速自動車国道上の大型貨物自動車の最高速度について、交通事故の発生状況のほか、車両の安全に係る新技術の普及状況などを確認した上で、引き上げる方向で調整する。」、引き上げる方向で調整すると。

 資料の一を見てください。
 高速道路での速度制限の引上げというのはこれまでも事業者側から要求されていましたが、政府は、交通事故の死亡事故率が普通乗用自動車に比べて高い、このことを理由にして却下をしてきたはずです。では、この状況が変わったということでしょうか。

○国務大臣(斉藤鉄夫君) 高速道路における車両全体の事故件数につきましては減少傾向にございます。具体的には、二〇〇五年に比べ、二〇二二年では事故件数が半分以下になっております。二〇〇五年のときに、二〇〇五年一万三千七百七十七件、二〇二二年五千六百五十五件でございます。

 今般の物流革新に向けた政策パッケージにおいては、このような交通事故の発生状況等を確認した上で、トラックの最高速度を引き上げる方向で調整するよう、政府全体で取りまとめられたものと認識しております。

○田村智子君 これ、資料の二を見てください。
 直近十年間を見ても、大型貨物自動車の死亡事故率が普通自動車よりも高いという状況は変わっていません。件数全体が減ったとしてもですね、大型貨物車両の事故率はまだ高いままなんですよ。

 もう一点、車両の安全に係る新技術の普及状況、ここについても確認いたします。具体的には衝突被害軽減ブレーキ等ということですけれども、大型貨物自動車への普及状況はどうなっていますか。

○政府参考人(堀内丈太郎君) お答えいたします。
 国土交通省では、平成三十年から令和三年にかけて大型貨物自動車等に対する衝突被害軽減ブレーキの義務付けを順次行っております。このため、車両総重量八トン以上のトラックにつきましては、平成三十年から令和三年に新車販売された約九割以上の車両に同ブレーキが装備をされております。令和三年度の新車販売台数で見ますと、ほぼ一〇〇%の装着率となっております。

 また、衝突被害軽減ブレーキ等の先進安全技術を搭載した事業用トラックなどを導入する方々に対する補助事業を実施しております。本年度は一台当たり最大二十万円の補助を行っております。
 引き続き、これら施策を通じて車両の安全に係る新技術の普及を図ってまいります。

○田村智子君 新たな販売でどんどん装置が付けられているというのは分かるんですけど、実際の普及率がどうなのかについてはつかんでおられないということなんですね。

 トラック運転者にお聞きをいたしましたが、速度を上げて運転すれば、事故を起こさないようにという緊張が高まり、動悸や発汗が起こることがあるということです。これは当然ですね。大型貨物自動車の走行速度を引き上げると、運転者の身体的、精神的負担、ストレスの負荷がどうなるのか。この調査検討はあるんでしょうか。

○政府参考人(堀内丈太郎君) この高速道路におけるトラックの最高速度の見直しを行うに当たりましては、今後警察庁を中心とした政府内における検討が進められるものと承知しております。その中で、委員からただいまのような御指摘があったことについて共有してまいりたいと考えております。

○田村智子君 東京―大阪間をひたすら百キロで走り続けて七・五時間が六時間に短縮されるという資料も私もいただいたんですけど、これ机上の空論ですよね。ひたすら百キロというのは到底できないことでしょう。実際にはどれだけ短縮になるのかも分からないし、むしろその荷待ち時間の方が長い。ここの短縮どうするかという方がよっぽど効率的でもあるなというふうにも思いますね。

 しかも、最高速度を上げれば、自動車からの排気ガス、CO2、これ、より多く排出されるということにもなるわけですから、二〇三〇年までに四六%、私たちもっと削減必要だという、このカーボンニュートラルにも逆行することは明らかなんですよ。これ、答弁求めても、モーダルシフトで頑張りますということしか言われないので、もうお聞きしないんですけど。

 大臣、今の私が指摘したとおり、最高速度の引上げというのは憂慮する課題のオンパレードだと思うんですよ。これ、二〇二四年とか二〇三〇年を視野に入れたパッケージ案なんですね。私はその中に入れ込む課題ではないと思う。いかがでしょうか。

○国務大臣(斉藤鉄夫君) 高速道路における速度規制の見直しにつきましては、トラックドライバーの労働時間の短縮、物流の効率化に資するものと考えます。一方、道路交通の安全確保は大前提であり、大型車については、その大きさ、重さにより、一たび事故が起こった場合、大きな被害が出る可能性が高いことから、こういった事情を踏まえて検討する必要があると考えています。

 速度規制そのものは国土交通省の所管ではありませんが、今般の物流革新に向けた政策パッケージにおいては、交通事故の発生状況等を確認した上でトラックの最高速度を引き上げる方向で調整するよう政府全体で取りまとめられたことから、まずは警察庁を中心とした政府内における調整が必要だと考えております。

○田村智子君 長時間労働の是正というのは、もっと速く走れということで解決するような課題ではないですよ。安全性を置き去りにするようなことは絶対にやっては駄目だと、このことを重ねて強調しておきます。

 次に、六月一日に取り上げたその大型トラックの車両内ベッドの問題、二人体制で走行中に車両内ベッドで休息できれば拘束時間の上限を引き上げてよい、この問題について再度ただしたいと思うんです。

 車両装置としての安全性については、保安基準第二十条第四項に該当するという答弁でした。資料の三がその保安基準第二十条第四項なんですね。これ、車両ベッドは内装だと、内装の材料は難燃性、燃えにくい材料、これが保安基準だということなんですね。

 質問後、改めて説明に来てもらって渡された写真が資料の四、ちょっと見えにくいんですけれども、トラックの運転席の後ろにマット、マットというふうに書いてあったかな、マット及びマットカバー、ここの部分なんですね。これ、壁からつながるようにして蚕棚のようにシート状のスペースがあると。まあ内装の一部だということは、私もこの写真を見て分かります。

 パーキングエリアなどで駐停車中にここで横になるということは理解をします。しかし、走行中に人が乗るという場所が、壁や天井と同じ内装という扱いだけ、難燃性というだけでよいのかというのが私の問題提起なんですよ。この写真で見ると、あらかじめ内装として製造されているというふうに思われるんですけれども、後からの取付けも認められるのでしょうか。その際、取付けだとか固定についての基準というのはあるんでしょうか。

○政府参考人(堀内丈太郎君) 大型トラックに備えられる車両内ベッドにつきましては、委員御指摘のとおり、乗客の安全確保をするために難燃性等の要件が道路運送車両法の保安基準により規定をされております。

 一方で、大型車トラックなどの重量の大きい車両は乗用車等に比べて衝突時の衝撃が小さいということがございます。さらに、当該ベッドにシートベルトを着用した場合……(発言する者あり)はい、ええ、取付け、固定につきましては、まあそれについてはそれぞれの取付けが安全かどうかについて、車両の改造に当たる場合にはそれぞれについて国交省の方でチェックをすることになっております。

○田村智子君 済みません。基準があるのかと聞いているんです。保安基準があるんですか。

○委員長(蓮舫君) 堀内自動車局長、あるんですか。

○政府参考人(堀内丈太郎君) 取付けについての基準はございません。

○田村智子君 基準ないんでしょう。走行中にシートベルトのようなものがなくて安全確保ができるのかという私の質問に、局長は、車両内ベッドは、シートベルトを装着しても衝突時において乗員がしっかりと拘束、縛られる保証はない、また、ベルトは首に引っかかる障害のリスクがあるという答弁をされました。
 これ、実証実験をされての答弁ですか。

○政府参考人(堀内丈太郎君) これは国際会議の場でも議論されておりますけれども、国際的にもこういったものについてのシートベルトについては安全性確保できないということで、なかなか難しいというような議論がなされております。

○田村智子君 今の国際的にというのは何の会議でどの国のことを言っているんですか。

○政府参考人(堀内丈太郎君) 国連のWP29という、その自動車の基準認証を検討するフォーラムでございます。

○田村智子君 私、国立国会図書館に調べてもらったんですよ。これ、トラック運転者、つまり運転者の労働時間については、二〇二一年に労政審に国際比較の表も出されているんですね、EU基準がどうなのかとかってね。これも基にして国立国会図書館に調べてもらったんです。

 アメリカのトラック運転者の運転時間に関する規制、休息時間は連続して十時間ですが、分割の特例があって、その際に寝台、ベッドですね、これを活用することが求められている基準があるんです。ただし、この寝台というのは、ハウストレーラー以外のセミトレーラー、フルトレーラーに設置してはならないというのもあります。

 そして、最低限の内容を示す条文、寝台を備えた自動車は車両の減速時にベッドの乗員が飛び出すのを防止する手段を備えていなければならない。この拘束装置は、車両の前方から車両の縦軸に平行に加えられる最低六千ポンドの力に耐えられるように設計、設置、維持されなければならない。

 国会図書館に訳していただきました。幾つもの基準がありました。
 安全確保の実証実験していないんですよ。まともに他国の状況を調べてもいないじゃないですか。国会図書館にお願いしたらすぐ出てきましたよ、これ。事は人の命に関わる問題です。一体、前回の私の質問に対する答弁、何が根拠だったんですか。

○国務大臣(斉藤鉄夫君) 前回からの議論、私も参加させていただきました。
 車両内ベッドの走行中の仕様の在り方につきましては、まずはトラックドライバーの安全確保の観点が重要であること、これはおっしゃるとおり、言うまでもありません。

 一方、先ほど局長からも答弁がありましたとおり、車両内ベッドにつきましては、その困難性からシートベルトのような国際基準の検討が行われていないところでございます。

 しかしながら、今回、先日もこの委員会で報告しましたけれども、こういう安全基準についての国際標準を話し合う国連のフォーラム、WP29、これまではその議長、副議長共に欧米人以外ならなかったわけですが、今回、日本の国土交通省の担当者がその副議長になりました。

 そういう中でございまして、このトラックの中のベッドの安全基準について、国際標準がないということは確かです。先ほどありましたように、アメリカの一部の基準あるのかもしれませんが、国際基準がないことは確かです。この国際基準についてしっかり話し合おうと、こういう問題提起をしようと、こういうふうに国土交通省の中で今話したところでございます。

 基準に関する国際的な検討の場における問題提起や各国の安全対策などの調査を行うことなど、関係省庁とも連携しまして、大型トラックの更なる安全性向上につながる議論に取り組んでまいりたいと考えております。

○田村智子君 私は、労働時間の国際比較の労政審で審議された二〇二一年のその資料を見ても、EUとかが果たして本当に走行中に寝ているということまでも認めているんだろうかと思いますよ。元々拘束時間なんて概念ないですよ、労働時間と一緒だから。

 そして、労働時間の規制というのは、もう全体的に日本と比べてもEUの基準というのは極めて厳しい。連続した休憩時間の取り方も極めて厳しい。そして、それが緩いのがアメリカなんですよ、日本に近いのが。そのアメリカには、今私が示したとおり、すぐに分かる、アメリカの運輸省に当たるところが作った基準があるんですよ。

 私、ちょっと、国会には行政監視の役割があるんですね。政府というのは、指摘された問題が杞憂だというふうに本当に言うのだったら、客観的な事実を示してその懸念を払拭すればいいんです。指摘に対して、理があれば、せめて持ち帰って真摯に検証する、場合によっては立ち止まる、見直す、これ当たり前のことだと思うんです。

 委員長、これは私は、私に対する答弁の問題にとどまらないと思うんです。国交省の国会答弁の信頼性にも関わると思っています。委員会として、一日に私の質問に対して局長が行った答弁についての対応を協議していただきたいと思います。

○委員長(蓮舫君) 後刻理事会で協議いたします。

○田村智子君 今の斉藤大臣の答弁を受けてもですね、つまり、実証実験もないんですよ。国際基準がないというのは、基準はあるんですよ、アメリカはあるんだから、基準ないというのは私は虚偽の答弁だと思う。国際的に、みんなが走行中に、そのトラックの走行中に後ろで寝ているような、じゃ、そういう走らせ方をしているのかから議論しなくちゃおかしいでしょう、国際的な基準と考えるんだったら。そういう状況なんですよ。

 それなのに、改善基準告示では、車両内ベッドを走行中に使用することを前提としているんですよ。安全確保の規定はないんですよ。後から取り付けることができるというふうに読めるんですよ、改善基準告示は。さっき言ったとおり、その取付けで固定の基準もないんですよ。それで安全だという根拠は何もない。しかも、最高速度を百キロにぐらいまで上げるなんという議論までやるということでしょう。ちょっと本当に、これ、私、危惧します。

 大臣、この車両内ベッド、少なくとも走行中に使用していいのかどうかは、もう一度議論が必要なんじゃないでしょうか。そういう問題提起を私は斉藤大臣が行うべきだと思う。厚労省や警察庁等も含めてもう一度検証すべきだと思います。その点いかがでしょうか。

○国務大臣(斉藤鉄夫君) 先ほど申し上げましたように、まず国際基準がない。これは、WP29にそういう基準がないということは確かでございます。そういう中で、こういう基準を作るべきではないか、こういう議論を日本が提起してやってみようと、このように今申し上げております。

 その議論の状況も踏まえながら、国土交通省として考えていきたいと思っております。

○田村智子君 だから、安全性の基準がないままでやっていいよということを示すのかという問題なんです。基準は議論したらいいですよ。でも、ないということでしょう。ないままにやるんですかということなんですよ、大臣。いかがですか。

○国務大臣(斉藤鉄夫君) 今御答弁申し上げましたように、関係省庁とも連携し、各国の安全対策などの調査も行いながらこの問題に対応していきたいと思います。

○田村智子君 改善基準告示は、本当にもう施行されてしまうわけですよ、このままいきますとね。そうすると、寝ていていいよということになる。

 私、とても心配するのは、例えば急ブレーキ掛けてカーブだったと、がんと横に行ったときに、首大丈夫ですか、投げ出される危険性はないんですか。固定されないままにベッド取り付けて、いざ事故が起きたときにそれで命が守れるんですか。また、この写真見たって、運転席のすぐ後ろで、高速道路走っているときに寝ていて、安眠、本当に休息ができるんですかという様々な危惧があるんです。

 これベッドがあっていいですよ。走行中じゃなく使ってもらえばいいと思いますよ。だけど、走行中に使ってよくて、しかもそうなれば拘束時間を更に延ばしていいという基準になっちゃっているんですよ。ここについては再考しなければならないと思います。

 大臣、一度持ち帰っていただけませんか。事は命に関わる、安全に関わる問題なんです。どうでしょうか。

○国務大臣(斉藤鉄夫君) この問題につきましては、国土交通省だけで所管する問題ではございません。関係省庁とも非常に密接に結び付いております。関係省庁とも連携し、この問題について、また、先ほど申し上げましたように、国際標準を作ろうという方向で我々日本も動きたいと、このように思っております。そういう中で、各関係省庁と連携して対応していきたいと思っております。

○田村智子君 重ねて言いますが、アメリカには大変厳しい基準があります。トラック運転者の命と安全顧みないということは、これは本当にトラック運送業界全体の健全な発展にもつながりません。これ、また後の質問で指摘していきたいと思います。
 終わります。

 


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