活動報告

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トラック運賃上げよ/田村智子氏 生活できる賃金に/参院国交委

 トラック事業の運賃標準額を国が示す制度(期限=2024年3月末)を当分の間延長する改正貨物自動車運送事業法が14日、参院本会議で賛成多数で可決・成立しました。日本共産党は賛成しました。

 日本共産党の田村智子議員は13日の参院国土交通委員会で、トラック労働者が残業なしで生活できる賃金を保障するために、国が示す標準的な運賃の抜本的な引き上げを求めました。

 田村氏は、運賃標準額が示された後も▽契約の打ち切りなどを恐れて荷主と運賃交渉できていない事業者が3割以上残されている▽原材料価格や労務費、燃料費の上昇分を価格に転嫁できていない業種はトラック運送が27業種中最下位である―事実を示し、「標準的な運賃を抜本的に引き上げて今年中に告示すべきだ」と迫りました。斉藤鉄夫国交相は、「実施可能な取り組みから進めていく」と答弁しました。

 田村氏は、運賃交渉を力の弱い事業者側から荷主に対して行っている商慣行をただして、荷主の側から標準的な運賃に基づき運賃交渉することを義務づける必要があると指摘。斉藤国交相は「自主行動計画を作成・公表させる」と答えました。


2023年6月20日(火) しんぶん赤旗ホームページ

 

 

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
 法案の施行に当たって政府がどういう取組をするのかということで、政府に対しての質問を行います。

 二〇一八年の法改正で、標準的な運賃の告示制度が導入されました。二〇二〇年四月に告示をされたわけですけれども、その主たる目的はトラック労働者の賃金水準の向上にあります。トラック運送事業者の六九%が荷主との運賃交渉を実施し、六三%が希望額あるいはその一部を受け取れたとの実態調査の結果が出ています。では、このことによってトラック労働者の賃金がどうなったのか、御答弁ください。

○政府参考人(堀内丈太郎君) お答えいたします。
 トラック、標準的な運賃は令和二年四月に告示をしております。その周知、浸透も図っておりますし、荷主などに対して働きかけ、要請などの是正措置も講じてまいりました。こうした中、トラックドライバーの年間総所得につきましては、令和二年から令和四年にかけ約二十万円、約三・四%上昇をしております。

○田村智子君 三・四%というのは、本当に、まあ実質賃金で見たら大変な引き下がりになってしまうんじゃないかと心配をしてしまうわけですけれども、やっぱり残業なしで生活できる賃金、これが長時間労働を解消し過労死を根絶する上では不可欠ですので、今後やっぱり実態調査で、トラック労働者の賃金の引上げ状況、これ把握して私たちにも示していただきたいと思うんです。大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(斉藤鉄夫君) トラック運送業につきましては、コストに見合った適正な運賃の収受ができておらず、他の産業と比較して賃金が低いなど労働条件の改善が課題となっており、賃金の引上げの原資となる適正な運賃を収受できる環境を整備することは重要であると考えております。

 令和二年四月に告示した標準的な運賃は、トラックドライバーより労働単価の高い全産業平均の労働単価を人件費の算定基準としており、標準的な運賃の活用が進めばおのずとトラックドライバーの賃金水準も上がっていくものと考えております。

 標準的な運賃の活用につきましては、国土交通省が実施したアンケート調査では、標準的な運賃を参考指標として用いつつ運賃交渉を行い荷主の一定の理解を得られた事業者の数が、令和三年度の約一五%から令和四年度には四〇%以上に増加しており、トラックドライバーの賃金水準の向上に寄与しているものと認識しております。

 なお、厚生労働省が行った統計調査においても、トラックドライバーの時間当たりの賃金は、令和二年と令和四年との比較では約三・四%上昇し、全産業平均の賃金の上昇率〇・九%を大きく上回っているとの結果が出ております。
 国土交通省としては、引き続き標準的な運賃の活用に向けた取組をなお一層進めていきたいと思っております。

○田村智子君 元々が賃金が安いと言われている業種になってしまっているわけですから、三・九%で、あっ、三・四%ですか、喜んでいちゃ駄目だと思うんですよね。やっぱり把握していただきたい、重ねて要望しておきたいと思います。

 この標準的な運賃、二〇二〇年四月二十四日に一度告示しただけで、その後の原材料価格や労務費、エネルギー価格の上昇分が反映されていません。

 資料を、お配りしましたのを見てください。
 これ、価格交渉促進月間フォローアップ調査結果。二十七業種の中でトラック運送というのは最下位なんですよね、価格転嫁ができているのが。コスト増に対する転嫁率、全体平均四六・九%に対してトラック輸送二〇・六%と、半分にも届かないんです。また、多重下請構造、ここも問題が大きいですから、本当に運賃がどこまで上がっているんだろうかというのが非常に危惧されるわけです。

 政府の物流革新に向けた政策パッケージでは、荷待ち、荷役に係る費用、燃料高騰分、下請に発注する際の手数料等も含めて荷主企業等に適正に転嫁できるよう、今年中に標準運送約款や標準的な運賃について所要の見直しを図るとあります。つまりは、標準的な運賃を抜本的に引き上げて今年中に告示するということでしょうか。

○国務大臣(斉藤鉄夫君) まず、価格転嫁ができていないのではないか、それが一番の大きな課題ではないかという御趣旨の質問かと存じます。

 中小企業が多く、荷主に対する交渉力が弱いトラック運送業におきましては、価格転嫁を進めることができる環境を整備することが重要と認識しております。

 国土交通省では、今月二日の関係閣僚会議において取りまとめられた物流革新に向けた政策パッケージに基づきまして、年内を目途に、標準的な運賃について、燃料高騰分なども含めて適正に転嫁できるよう運賃水準を見直すとともに、荷待ち、荷役や附帯業務などの輸送以外のサービスの対価についても標準的な水準を示すべく検討を進めてまいります。

 さらに、トラックGメンの設置を通じた適正な取引を阻害する疑いのある荷主への監視体制の強化など、この政策パッケージに記載された内容につきまして、実施可能な取組から速やかに進めてまいります。
 実施可能な取組から速やかに進めるということと、それから先ほど申し上げましたような、年内を目途にきちっとこの方向性を出したいと思います。

○田村智子君 今、荷役って荷物の積卸しですよね、これを事実上このサービス残業のように支払の中にも含まれていないと、あるいはエネルギーの高騰というのを見れば、これ抜本的な引上げということにやっぱりなっていかなくちゃいけないと思うんです。問題は、それが行われたときに運送事業者と荷主の運賃交渉、これは本当に行われるのかということですよね。

 政府の調査で、六九%が交渉ができたと、だけど、裏返せば三割以上が新たな運賃を荷主に提示することもできていないということですね。その理由は、契約を打ち切られるおそれがあるからが最も多いわけです。先ほどお配りしていただいた資料を見ても、特に、本当にひどいんですけど、労務費のところなんて、価格転嫁が一五・五%、原材料もエネルギーも全部一〇%台、こんなのほかの業種にないんですよ。極めて立場が弱いということが分かります。契約を打ち切られてしまうかもしれないというふうに恐れて交渉を持ち出すことができない、燃料代の価格交渉も荷主に対して申出をしなかった事業者四八・六%、半数近いわけです。

 この商取引の契約というのは政府の建前でも対等、平等のはず、だけども、運賃交渉や価格交渉は事業者の側からしなければならないというような感じになっているんですよ。標準的な運賃が示されたら、事業者の側が言うと、建前では対等、平等でも、立場の弱い側から交渉を求めるのが当然とされている、こういう構造にもメスを入れなければこの深刻な実態というのは解決にならないと思うんです。

 私は、国が標準的な運賃を示したら、業界の健全な発展のために、荷主の側から積極的に標準的な運賃に見合う運賃へと契約を見直す、そういう交渉を事業者の側に荷主が持ちかける、このぐらいのことをやって商慣行の見直しということが進むというふうに思うんです。現状を見れば、標準的な運賃が国から示された際に事業者に対して標準的な運賃に基づいて運賃の協議を行うこと、これ荷主に義務付けると、これくらいの施策が必要ではないのかなと私には思えます。そうしなければ運賃交渉できない、標準的な運賃が高く示されれば示されるほど、運賃交渉したら、だったらこっちの人にやるからいいよというふうに安いところに流れかねない。

 だから、荷主の側に何らかの強制力を掛ける、運賃交渉の、こういう検討必要だと思うんですけど、発想の転換、いかがでしょうか。

○国務大臣(斉藤鉄夫君) この荷主に義務付ける制度という御提案でございます。
 荷主に対する交渉力が弱いトラック運送業においては、取引環境の適正化に向けた環境整備が急務であり、今月二日に取りまとめた政策パッケージでは、商慣行の見直しなどについて次期通常国会での法制化も含めて抜本的、総合的な対策を進めることとしております。

 さらに、総理から法制化に先立ち可能な取組から速やかに進めるよう指示があったことを受け、同日、早急に取り組むべき事項をまとめた物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドラインを関係省庁と連携して策定、公表したところでございます。このガイドラインでは、荷主に対し、実施が必要な事項として、価格転嫁に係る協議に応じることやコスト上昇分を運賃、料金に転嫁することなどの運送契約の適正化に係る事項を示したほか、荷主や物流事業者に対し、年内を目途に物流の適正化、生産性の向上のための自主行動計画を作成、公表いただくよう要請しております。

 このような取組、来年の法制化、また荷主に対してのこのようなガイドライン等をしっかり我々実行しながら、実効ある対策を打っていきたいと思っております。

○田村智子君 多重下請構造などまだまだ論点いっぱいありますので、是非、今国会会期中も更なる審議、これ必要だということを求めまして、質問を終わります。

 


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