きょう8月15日は、日本による侵略戦争と、植民地支配の終結から80年を迎えます。日本の侵略戦争でアジア・太平洋地域で2000万人以上、日本国民の310万人以上が犠牲になりました。
侵略戦争と植民地主義に無反省な勢力が政権の中枢を占める中で、米国いいなりで「戦争国家づくり」がすすめられようとしています。一方で、参院選では排外主義を主張し、分断と差別をあおる勢力が伸長しました。歴史を偽造し、侵略戦争と植民地を肯定・美化する勢力が政権中枢を担い続けたことが根源にあります。
日本共産党の田村智子委員長は談話「戦後80年にあたって」を発表しました(全文2面)。憲法違反の大軍拡と「戦争国家づくり」を止めるため「全力をつくす」と表明。過去の植民地主義と侵略戦争に「どう向き合うかが問われている」と指摘し、侵略戦争と植民地主義の歴史を、国民共通の認識とし、未来に継承する必要を強調しています。
排外主義が外国人への敵意と差別をあおり、差別と分断を広げることは「民主主義と人権を踏みにじる行為だ」と批判し、極右・排外主義を克服するために力を尽くすと述べました。
戦後80年にあたって/2025年8月15日/日本共産党委員長田村智子
一、戦後80年の終戦記念日にあたり、日本軍国主義による侵略戦争と植民地支配によって犠牲となられた内外の方々に深い哀悼の意を表します。
日本の侵略戦争によって、アジア・太平洋地域では2000万人以上の命が奪われ、植民地支配のもとで強奪・暴行・性暴力など残虐な被害と苦しみがもたらされました。侵略戦争の拡大と長期化によって、沖縄県民を巻き込んだ凄惨(せいさん)な地上戦、広島・長崎への原爆投下、各地の空襲など、日本国民の310万人以上の命が奪われました。日本兵の戦死者は6割が餓死と戦病死でした。こうした侵略戦争と植民地支配の歴史を国民共通の認識とし、未来に継承しなければなりません。
日本共産党は、日本国憲法に刻まれた「再び戦争の惨禍を繰り返さない」という不戦の誓いをあらたにし、いま進められている憲法違反の大軍拡と「戦争国家づくり」を止めるために、全力を尽くすものです。
一、戦後80年にあたり、日本政府が、過去の侵略戦争と植民地支配にどう向き合うのかが問われています。これは、アジア諸国・諸国民との心が通う平和・友好・協力の関係を築き、東アジアに外交によって平和を構築していくうえでも避けて通ることのできない問題です。
日本政府は、1995年の「村山談話」で「植民地支配と侵略」への反省を表明し、1993年の「河野談話」で、日本軍「慰安婦」問題について軍の関与と強制性を認め反省を表明しました。1998年の「日韓共同宣言」では、韓国に対する植民地支配への反省を表明しました。これら“三つの重要文書”は、歴史問題に対する日本政府の到達点を示すものです。
ところが、戦後70年に発出された「安倍談話」は、韓国の植民地化をすすめた日露戦争を美化し、「植民地支配と侵略」への反省を過去のものとするなど“三つの重要文書”からの重大な逆行となりました。戦後80年にあたり、日本政府は、この逆行を清算し、“三つの重要文書”の核心的内容を継承することを明確に表明すべきです。
その立場で、日本軍「慰安婦」問題、「徴用工」問題について、植民地支配と結びついた重大な人権侵害ととらえ、すべての被害者の名誉と尊厳が回復されるまで政治の責任を果たすことを求めます。
また国策を誤った反省に立ち、被爆者や空襲被害者など、民間の戦争被害に対する謝罪と補償を行うよう求めます。
国民を戦争に動員する精神的支柱となった靖国神社に、国政にたずさわる政治家が参拝することは、日本の侵略戦争肯定の意思表示を意味します。政党と国会議員はこのことを深く自覚すべきです。また自衛隊幹部の靖国参拝は、日本軍と自衛隊との連続性を示す危険な逆行です。少なくとも首相や閣僚、自衛隊幹部の参拝は行わないことを日本の政治のルールとして確立することを求めるものです。
一、戦後の日本の政治では、侵略戦争への反省を欠いた勢力が、その中枢を占めることになりました。そうした勢力が、米国の言いなりに「戦争国家づくり」を進めているところに、今日の深刻な危険があります。
とくに第2次安倍政権以降、日本は、集団的自衛権行使容認、安保法制の強行、アメリカとともに海外で戦争する国への暴走を強め、「専守防衛」さえも投げ捨てた大軍拡の道を突き進んでいます。唯一の戦争被爆国でありながら、アメリカの核使用をも想定した日米共同訓練まで行われていることも明らかになりました。
軍事対軍事の悪循環の先に、平和はありません。日本共産党は、平和も暮らしも壊す大軍拡に、多くの国民とともに立ち向かうとともに、「軍事でなく外交」「排除でなく包摂」を基本理念にすえた「東アジア平和提言」―憲法9条にもとづく外交提言を掲げ、国内外でその実現のために力をつくす決意です。
侵略戦争と植民地支配を肯定・美化し、歴史を偽造してきた歴史逆行の勢力が、日本の政治中枢に居座り続けてきたことは、この間の新たな極右・排外主義の流れを生み出す根源の一つとなりました。外国人への敵意と差別をあおり、社会に差別と分断を広げることは、民主主義と人権を著しく踏みにじる行為であって、決して許してはなりません。外国人への差別の刃(やいば)が、やがて日本国民にも向けられ、戦争に反対する人を「非国民」と弾圧し、侵略戦争と植民地支配に道を開いた歴史を想起すべきです。私たちは、歴史の偽造にも、差別と分断にも断固として反対を貫きます。多様性と共生を大切にする社会を願うみなさんとともに、極右・排外主義を克服するために力を尽くします。
一、戦後80年、人類の歴史は、平和と人権の尊重へと大きな前進をとげています。ここに世界の本流があります。
植民地支配と奴隷制度への責任を過去にさかのぼって明らかにし、謝罪を求める動きが世界に広がっています。2001年に開催された国連主催の国際会議で採択された「ダーバン宣言」は、「植民地主義が起きたところはどこであれ、いつであれ、非難され、その再発は防止されなければならない」と宣言しました。20年余の時を経て、この宣言が生きた力を発揮しています。
被爆者のみなさんは、戦後一貫して核兵器の非人道性を世界に訴え続けてきました。それがついに、2017年の核兵器禁止条約の成立、21年の発効へと結実し、73カ国が批准、94カ国が署名し、圧倒的な国々と市民社会が、核保有国と核兵器にしがみつく国々を包囲しています。
被爆80年の原水爆禁止世界大会では、核兵器廃絶とともに、軍拡反対、国連憲章に基づく平和の秩序の構築、排外主義反対での新たな国際連帯が大きな広がりをみせました。
日本共産党は、命がけで反戦平和を貫いてきた103年の歴史に立ち、こうした平和の世界の本流を前に進めるために歩み続ける決意です。
2025年8月15日(金) しんぶん赤旗