2013~15年の生活保護基準の大幅な引き下げを違法とした最高裁判決(6月27日)を受けてなお国が原告に謝罪しないもとで、日本共産党国会議員団は19日、政府に対し、ただちに生活保護利用者に謝罪し、引き下げ分を補償するなど早期の全面解決を求める申し入れを行い、要請書を提出しました。
要請書は、最高裁判決が国の生活保護行政に対し、「個人の尊厳」(憲法13条)「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」(憲法25条1項、生活保護法3条)を侵害し続けたことを厳しく断罪した画期的判決だと指摘。保護基準引き下げの影響を受けた全ての利用者への謝罪や、ただちに被害回復を行うことなど4点を求めました。
田村智子委員長、小池晃書記局長、山添拓政策委員長、辰巳孝太郎、本村伸子両衆院議員、岩渕友、吉良よし子、白川容子各参院議員が参加しました。
議員団は要請に先立って、厚生労働省の竹内尚也社会・援護局保護課長から政府の対応について聴取しました。課長は、判決は「手続き上の瑕疵(かし)」を指摘したものだと説明。反省は表明しましたが、謝罪の意は示しませんでした。
田村氏は、生活保護費引き下げは、12年の総選挙で「生活保護10%削減」を公約に掲げて発足した第2次安倍政権への忖度(そんたく)そのものだとして、「最高裁判決は、生活保護法という最低限の生活をどう守るかという法律への違反を認めた。同判決を重く受け止めているなら、国の謝罪が出発点だ」と迫りました。
小池氏は、国が、最高裁判決から2カ月近く利用者に謝罪すらしないのは言語道断だと批判。「原告は熱中症など命の危機におびえながら『一刻も早く被害を回復してほしい』と声を上げている。ただちに引き下げ分を元に戻すべきだ」と述べ、厚労省が対応を議論する専門委員会で原告らによる複数回の意見陳述を認めるなど、原告・弁護団の要請に応えるよう求めました。
いのちのとりで裁判 共産党国会議員団の政府への要請書(全文)
「生活保護基準引下げ訴訟『いのちのとりで裁判』最高裁判決を踏まえ、厚生労働省は生活保護利用者に謝罪し、引下げ前基準との差額保護費の遡及支給をはじめ、早期全面解決を求めます」
本年6月27日、最高裁判所第3小法廷(宇賀克也裁判長)は、2013年から3回に分けて行われた平均6・5%、最大10%(年間削減額670億円)の史上最大の生活保護費引き下げについて違法性を認め減額処分を取り消す判決を言い渡しました。この判決は、国の生活保護行政が「個人の尊厳」(憲法13条)「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」(憲法25条1項、生活保護法3条)を侵害し続けたことを厳しく断罪した画期的判決です。
ところが、国は判決の言い渡しから2か月近くたつにもかかわらず、原告に引き下げ分を補償するどころか、違法と断罪された当時の判断について謝罪すら行っていません。
被害の回復と、このような違法行為が二度と繰り返されることがないよう、以下申し入れます。
1、原告や保護費の引き下げの影響を受けた全ての生活保護利用者に対して国はただちに謝罪を行うこと。
2、専門家委員会の審議を理由に被害回復を引き延ばすのではなく、ただちに被害回復を行うこと。また、各地の係争中の訴訟を速やかに終わらせ、被害回復に取り組むこと。
3、その他影響をうけた2013年当時から現在までの生活保護利用者にたいする違法な行政処分の速やかな被害回復を進めること。
4、違法とされた保護基準の設定に至る経過について原告、弁護団、当事者もいれた検証を行うこと。
2025年8月20日(水) しんぶん赤旗