日本共産党 田村智子
コラム

【14.09.20】コメの価格暴落 日本農業の危機

千葉県匝瑳市で農家のみなさんから意見を聞く会

 
千葉県匝瑳市(そうさ・し)、房総半島のなかでも広い田んぼが広がる地域です。
秋晴れの土曜日に演説会でたっぷりお話した後、緊急に、暴落している米価の問題で懇談会を開くこととなりました。
会議室のテーブルには稲穂。
「今日は30家族100人ぐらいで、稲刈りや落花生収穫の農業体験をしてもらったんだよ。ここに移動する途中で、そうだ、明日収穫する田んぼから一株持ってこようと思い立って」と、大規模農家のAさん。粋な計らいです。

稲穂の歓迎に笑顔のみなさん。しかし、発言が始まった途端に引き締まった空気となりました。
生産者が生活できるだけの概算価格は、1俵当たり1万6000円程度、これは政府も認めるラインです。ところが今年は7000〜8000円、コシヒカリでも1万円にもならない。
これでは生活費に足りないどころか、機械、肥料、土地改良にかけた経費も払えなくなる。政府が旗を振る大規模化をすすめた農家ほど、当然、赤字も大きくなる。
これから一体どうなるのか、農家のみなさんに大きな不安が広がっているのです。

米価については「コメが余っているのだから、価格が下がるのは仕方ない」という議論が根強くあります。これには強い違和感を覚えます。
たとえば、自動車などが売れない、需要を上回る過剰生産になったからといってその価格が半額になるでしょうか。労働者の賃金を払わないということになるでしょうか。
しかも、農業は天候に左右される特殊な産業で、あらかじめ需要と供給を調整することは相当に困難です。
国民の命に直接かかわる主食、余力をもって生産するのは国の政策の柱でしょう。加えて、自然のダムとも言われる田んぼの保水能力、自然環境の保護などからも位置づけられるべき産業です。

ところが、今やコメも原則「自由生産」「自由価格」で、先物取引さえも可能となってしまいました。
今年の米価暴落も、まずは先物価格の暴落が起きました。超過米が大量に販売ルートに載せられる、新米の価格も下がるという予想から暴落でした。

「国内では、コメといえば『余っている』『お荷物』という扱い。しかし、日本の稲作産業は世界一のすばらしい技術、コメの品質も間違いなく世界一。なぜコメの可能性、すばらしさを経済政策に位置づけないのか」
「この地域は粘土質の土地で、コメ作りに最適だが転作は難しい。それでも土地改良、暗渠排水や他の地域の土を入れるなど、いろんな努力をして農業を続けてきた。大規模化の努力もした。ところが作れば作るほど赤字では、どうしたらよいのか」
「高い値段でコメを買ってくれと言っているのではない。再生産ができる価格で売れるようにしてほしいと求めているだけ」

産直運動を全国に先駆けて取り組んできた房総食料センターの方は、「39歳の生産者が、もうコメはやめようと思う、このままでは野菜でつくった利益がコメの赤字に消えるだけ、と言っていたことが一番ショック。これではコメ作りの後継者がいなくなる」と危機感をあらわにしていました。

政府の無策への怒りは、どの方からもほとばしりました。
過剰と言いながら、アメリカなどからのコメの輸入量は全く減らさない、備蓄米の有効な活用方法も検討しない、全ての責任を農家に負わせようと言わんばかりのやり方。
コメ輸入は「ミニマムアクセス」と政府は宣伝し、あたかも一定の輸入量が義務であるかのような報道が続きましたが、「ミニマムアクセス」は義務でもなんでもありません。
まして自国のコメ産業の危機のときに、需要もないのに毎年77万トン(玄米)もの輸入、その理由を説明できるのでしょうか。

世界の食糧不足がいよいよ深刻になっている時に、農業とりわけ稲作に適したモンスーン気候の日本で、農業をあきらめる人が続出しかねないとは。
「若者が農業に、稲作に夢を持てるようにしてほしい」――緊急の対策を求める意見は、進行にともなって農業の未来を語るものになっていきました。


9月22日 農水大臣への緊急要請

 
翌週9月22日、西川農水大臣に対して党国会議員団の申し入れを行いました。
応対したのは小泉昭男副大臣。農業体験があることを話し、日本のコメをどう位置付けるか検討が必要という認識を示しました。その意見は尊重しつつ、参加した6人の衆参議員は、今年の米価暴落への緊急策がどうしても必要なのだと、その検討を迫りました。


私も匝瑳市でお会いした農業者の代弁者として要望を伝えました。
農民連の要請行動に参加した方からは、農水省に危機感が欠如しているのではないかと声があがったこと。
天候不順などで収穫量が減った地域などに適応される「ナラシ交付金」だけでは、その対象にならない農家が多数を占める。従前の施策で大丈夫ということにはならない。
コメ作りをあきらめるかどうかの瀬戸際にある。早急に価格保障の政策が必要。

副大臣は私たちの矢継ぎ早の要求に「大臣と相談する」と約束。
臨時国会では、地方の再生が安倍内閣の政策の目玉のはず。米価暴落に何もできないで、地域経済が活性化するはずはありません。

要請に参加したのは、高橋千鶴子、塩川鉄也衆院議員、紙智子、井上哲士、倉林明子参院議員と私です。