日本共産党 田村智子
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【11.12.05】行政監視委員会--スーパー堤防について

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
 スーパー堤防事業についてお聞きをいたします。
 昨年十一月、事業仕分で廃止という結論が出されたスーパー堤防、国土交通省は一年間検討してどういう結論を出すおつもりでしょうか。

○副大臣(奥田建君) 今の御質問の高規格堤防整備事業、このことにつきましては、事業仕分での御指摘、御提言をいただきまして、一旦白紙にして、学識者から成る高規格堤防の見直しに関する検討会というものを今年の初め、二月から開始をさせていただいております。
 この中において、ゼロベースで検討をしていただいているという中において、中間取りまとめ、これは八月ですけれども、この中において、人命を守るという観点から、「人口が集中した区域で、堤防が決壊すると甚大な人的被害が発生する可能性が高い区間」に限定するという中間取りまとめの提言をいただいております。具体的な区間としましては、現在検討を進めているところであります。

○田村智子君 廃止でも何でもないんですね。整備が最も困難な都市部に絞り込んで造るという方向が出されそうなんです。そういう事業が本当に必要なのか、私、改めて検証したいと思います。もちろんゼロメートル地帯での水害対策は必要ですし、津波被害もありましたから、今の堤防の高さで大丈夫かという不安の声も住民の皆さんの中にはあります。
 まず、確認したいんですが、スーパー堤防というのは、それでは通常堤防の高さをかさ上げして越水をさせないという堤防なのかどうか、簡潔にお答えください。

○政府参考人(関克己君) お答えを申し上げます。
 高規格堤防、いわゆるスーパー堤防につきましては、仮に洪水が堤防を越える、乗り越えたとしても、その構造からして壊れない、破堤しないという形での機能を期待し、そういったものを目指して整備をこれまで進めてきたところでございます。そういう意味では、高さで確保するということではございません。あくまでも幅を確保し、越流しても安全な堤防を整備するということを目指したものでございます。

○田村智子君 堤防の高さは変わらないんですよね。河川の側から見て、高さの三十倍を目安にして延々と河川から長く盛土をやっていく、これがスーパー堤防だと。国土交通省や河川事務所のホームページに何度も出てきます。
 それでは、そういう三十H、高さ掛ける三十倍で延々と堤防を造りましたと言えるものは、関東の四河川、利根川、江戸川、荒川、多摩川流域、一体どれだけ整備されたのか、お答えください。

○政府参考人(関克己君) スーパー堤防、高規格堤防につきましては、先生御指摘のように、市街地で整備をするということから、町づくりと一体となって進めてきたものでございます。そういう意味で、今御指摘の三十Hというもの、一度にできるものと道路と区切られる等がありまして、少し短い、幅が短くてひとまずその段階でまた次の段階を目指すと、そういったものが混在しているのが現状でございます。
 その中で、御指摘のように、厳密な意味での三十Hというものがあるものにつきましては、おおむね八キロメートルというふうに調べているところでございます。

○田村智子君 これがなかなか出てこなかったんですよ、八キロというのが。
 国土交通省は、三十H全然なくても計画した事業が終われば全部完成の中に入れていっちゃうんですね。これ、資料にお渡ししましたけれども、会計検査院の資料でやっと出てくるんです。この中で完成と書いてある部分が今の三十Hでほぼできているものと。
 このとき、二〇〇四年三月時点で、私が挙げた四河川で三・三キロ。七年が経過して八キロですから、これ一年に換算すると六百メートルぐらいしかできていないんですよ。となれば、たとえ整備地域を絞り込んだとしても、やっぱり四百年、五百年、もう何百年という単位でこれ整備期間が掛かることになるんじゃないでしょうか。副大臣、どうでしょう。

○副大臣(奥田建君) 先ほど申しましたように、そのリスクの大きいところといいますか、人口密集地帯あるいは人々の財産の集中している、そういう地域に限るということが適切であろうという取りまとめ案をいただいておりますので、その中でどれだけの絞り込みあるいは事業の計画というものができるかということを今鋭意検討しているということでありますので、御理解いただきたいと思います。

○田村智子君 これ、本当造るのは荒唐無稽な計画とも言えるようなことになっちゃうんですね、住宅密集地で今後造っていくということになりますから。
 国土交通省にいろいろお話をお聞きすると、いや、三十Hなくても堤防として強化されているから大丈夫なんだと、そういうふうに説明されるんですけれども、私、それじゃどういうスーパー堤防ができたのかというのを河川事務所のホームページからいろいろ見てみました。そのごく一部を資料でお配りしたので見ていただきたいと思います。
 例えば、この足立区千住地域、この後ろに見える大きな建物に土手をつなげるためにだけ造られているんです。百掛ける百です。その下、やはり足立区の小台という地域ですけれども、ここもマンションの土台部分とマンションの後ろに道路があるんですけれども、この道路をつなげるところだけがスーパー堤防だと。これ、事業仕分やられた蓮舫大臣にお聞きしたいんですけれども、堤防事業だと言えると思いますか。

○国務大臣(蓮舫君) 今のやり取りをしていても思ったんですけれども、恐らく委員の問題認識と私たちが政府として人命を最も大切に守らなければいけないという部分では、こうした堤防事業の必要性は否定していないんだと思います。
 問題はその手法なんですが、仕分のとき私たち議論させていただいて問題となったのは、個別箇所ごとの効果あるいは整備の途中段階での効果がこれ実は把握されていなかった、詳細に。あるいは、重点整備区間が定められているところ、実際に整備済みの箇所の六割は重点整備区間以外といったことが明らかになりました。だからこそ、一旦この事業は停止をして、現実的な天災害に備える視点に、まずここに立ち返ろうと、その上で、治水の優先順位を明確にした上で災害対策というのは現実的に行っていただきたいというまとめをしました。
 今話を聞いていると、一旦は停止をしたんですけれども、現実的にどうやって人口集中している地域の命をこういう水害から守ればいいかというのは、検討会も開いていただきまして、省内でそれは今まさに現実的な事業に立ち返ろうとしているんではないかと理解しています。

○田村智子君 ちょっと質問したことに答えていないんですね。
 たったこれだけのことが堤防事業だと言えるのかどうか、これ感想でいいですよ、一言お答えいただけませんか。

○国務大臣(蓮舫君) 高規格堤防と一般の堤防との違いはあるとは思いますけれども、いわゆる一般の堤防とは違う、それこそ盛土をして緩やかに下げていくという高規格堤防の在り方ですから、その一部分だとは理解をしています。

○田村智子君 何のための仕分だったのかと改めて思ったんですけれども、これ全然緩やかに下がってもいないんですよ。
 じゃ、国土交通省、お聞きしますけれども、この下の小台ですよ、本当にマンションの敷地だけですよ、これ。これに事業費幾ら国は出しているんですか。

○政府参考人(関克己君) 小台につきましては、国費というお尋ねだと思いますが、四億円でございます。

○田村智子君 これ、どう見てもマンションのために造った高台でしかないんですね。
 事業開始から二十五年、改めてどこにスーパー堤防を造られたか。都心に近づけば近づくほど、大規模マンション建設とセットで整備されていることが分かっているんです。千葉県市川市のスーパー堤防、総戸数八百十五戸の巨大マンション、事業費は国負担分で十億三千万円。本来建物を造ることが禁止されている堤防の上に特別に造られた地上二十階を超える高層マンションですから、当然人気物件です。高く売れます。これ、もう私は堤防事業って言えないと思うんですよ。リバーサイド再開発計画、そういうふうに言わなきゃいけないと思う。一方で、堤防の事業でいえば、東日本大震災で被災した堤防は二千百十五か所です。いまだに応急復旧の予算しか組まれていないんですよ。こういうときに、こんなマンション建設のために土台造るような、こんな事業をまだ続けるのか。
 財務大臣、これが有効な予算の使い方だと思われるかどうか、そのことだけお答えいただいて、お帰りいただいて構いませんので。

○国務大臣(安住淳君) 財政上の今私の立場から申し上げれば、このスーパー堤防に関しては、契約を結んで工事をやらざるを得ないもの以外は全て予算は止めております。ですから、この先、確かに委員御指摘のように、これは私の知識ではたしか二百年に一遍ぐらいの大水害の中で、先ほど局長もありましたけれども、オーバーしてくる水はやむを得ないとしても、決壊をして一気に入り込んでくるゼロメーター地点の治水対策でやるということですが、大都市部ではもう莫大な費用が掛かりますので、そういう点では、いろんな意味で治水というものの在り方を総合的に検討しながら対応していって、国民の皆さんからお預かりした税金の有効な使い方をやりながら治水対策というものを国交省にはつくっていただきたいというふうに思っております。

○田村智子君 国交省やるべきは、この被災した堤防をどうするかということをやるべきなんですよ。
 私、もう一つ言いたいのは、このスーパー堤防事業を継続させることが逆に都市部に新たな水害を起こしかねないんじゃないのかと、このことを指摘したいんです。都内では三十Hで造るなんというのは本当にもう不可能だと思います。そうすればどうなるか。
 次のページ見ていただきたいんですけど、断崖絶壁、これ蓮舫大臣も見に行かれて御存じだと思います、平井地区ですね。これ、造ることになる、あるいはもう住宅地に隣接して急斜面の土手を造ることになる。こういうことが幾つもできてきているんです。
 そういう中で、実際に北区北赤羽地区のスーパー堤防、つい最近、水害が現実に起きているんです。ここのスーパー堤防は、土手と住宅との境というのはもう一車線分の道路ぐらいしかないんですね。まさに住宅地に隣接してすぐに堤防が造られています。二〇〇八年には、大雨による浸水でスーパー堤防が崩落をしたと。で、これではいけないというので、水が浸透しないように工事を行った。そうしたら、今度は、八月二十六日、局地的な豪雨で大変な水害が起きてしまった。これ、写真見ていただければ分かるんですけど、自動車がもう水没をして、エンジンの部分ですね、駄目になっちゃうようなそういう水害が起きているんです。住民の皆さんにお聞きをしましたら、スーパー堤防から水が滝のように流れてきたと、堤防の側溝のところから水が流れ落ちてきて、道路のところでぶつかって噴水のように噴き上げたって言うんですね。地元の皆さん、何て言っているか、スーパー堤防水害だと。
 これ、重大な事態だと思いますが、副大臣、いかがですか。

○政府参考人(関克己君) 御指摘の地域につきましては、二十三年の八月の二十六日だったと思いますが、一時間に九十ミリという非常に強い雨が降りました。この地域、いわゆる雨水排水については下水道による一時間五十ミリというものを規模に計画を立て事業を進めてきておりますので、そういう意味では約二倍の雨が降ったということで、極めて強い雨が降ったということが原因であろうというふうに思っております。
 なお、そういう意味も含めて、当該地区については、この計画規模を超えた浸水に対してもどのように対応していくかということは下水道管理者である東京都とも調整をし、検討を行うということとしているところでございます。

○田村智子君 二百年に一度とか数百年に一度の洪水に備えるって言っていて、それで雨が降ったら想定外でしたなんと言うのは、これはもう説明にならないですよ。
 大体、私も現地視察しました。スーパー堤防の構造上の問題があると私思ったんですね。住民の皆さん、こう言っているんですよ。以前の堤防は川に向かって傾斜があったから、強い雨が降ってもその水は川に向かって流れていった、何で新しくできた堤防は私たちの住宅地に向かって傾斜しているのか、水が流れ落ちるの当たり前じゃないかという指摘です。だけれども、スーパー堤防である以上は住宅地に向けて傾斜を造らなきゃいけないんです。決壊を防ぐために、水が浸透しないような造りにしなきゃいけないんです。その分、全部低い方に水流れていくじゃないですか。
 それだけじゃないですよ。ここはまだ上にマンションないです。でも、これからどんどん造って、堤防の上にマンション造っていけば、当然排水量が劇的に増えるんです。内水の水害を起こしかねない。
 私は、想定外の雨が降ったなんて言っていたら駄目ですよ、この北赤羽の事態をちゃんと調査をして、こういう水害なぜ起きたのか、水害起こさないようにするということこそ今すぐに検討しなくちゃいけないというふうに思います。
 これはやっぱり都市部で造ること、非常に危険です。スーパー堤防事業はきっぱり諦める、これ必要だと思いますけれども、副大臣、お答えいただきたいと思います。

○副大臣(奥田建君) スーパー堤防で、三十Hという幅の広いものであるべきかどうかという議論は、地元とも、また堤防の在り方というものでも考えていくべきことだと思いますけれども、今実際にいろんな集中豪雨であるとか、あるいは津波のときもそうです、あるいは河川の増水という中でも、堤防というものが各地にありますけれども、その堤防自体が崩壊するという事象も毎年どこかで起きている。
 そんな中で、洗掘であるとか、あるいは漏水であるとか、あるいは越水によって堤防の後背地をえぐってしまうという中で、堤防の決壊ということだけは何としても避けたいという思いで出ているのが、この幅の広い、傾斜を持った、堤防としての強度の強い堤防ということで、やはりそのニーズというのが、それが三十Hか二十Hかとかそういうことはまた別の議論でありましょうけれども、強度の強い堤防というものの必要性というものが求められているところはあるというふうに私は思っております。

○田村智子君 済みません、ちょっと一言いただきたいんですけれども、現に水害起きているんですよ。これ、ちゃんと、ちゃんと調べて、スーパー堤防水害なんて起こすの駄目だって、これぐらいは言えなきゃ駄目なんじゃないですか、副大臣。副大臣に聞いているんです、副大臣に。

○副大臣(奥田建君) 今こちらの方も委員御質問の方で御準備なさっているということで報告をいただいている中では、やはり今局長から報告のありましたように、第一の原因というのは下水断面というものが不足していると。あとは、スーパー堤防の内側、のり面の下がっていく、勾配の下がっていく部分が平たんであるか緩やかになっているかという中で、またスーパー堤防の内側にもしっかりと排水路というものを設けたり、あるいは下水断面としてのまた整備が必要かということを検討していかなければいけないことだというふうに思います。
 スーパー堤防ができたからそこの水が増えるということには、ちょっと今の時点で了承しましたということは言えない状況だと思います。

○田村智子君 分からないんだから、ちゃんと調べてください。本当に調べないと、都市部での水害、今後どんどん起きかねないと私思うんですね。
 なかなか平行線の部分もあるんですけれども、私本当に許せないのは、この事業にしがみつけば都市部の中で町壊しが起こっていくということなんですよ。現に、江戸川区北小岩地域の皆さん、スーパー堤防建設を理由とした区画整理の中止、これを求めて、ついに十一月十一日、江戸川区を提訴しています。
 この北小岩十八班の皆さんは、もう数年前に事業計画が持ち上がった当初から町壊しはやめてほしいと反対の声を上げ続けている。しかし、区は執拗に説明会や戸別訪問を繰り返して、反対、賛成をめぐって地域のきずなをずたずたにしてきたんです。区の職員による連日の訪問、説得に耐えかねて、泣く泣く住み慣れた家を離れた方もいらっしゃいます。すると、すぐにそこを更地にして周辺住民に無言の圧力を掛ける。こういう中で、九十代の御夫婦は、この年になって住み慣れた町を離れるのは耐えられない、心中するしかないと、こういう声まで上げているというんですよ。
 もうバブル時代の悪質な地上げを思い起こさせるような事態にまでなっています。江戸川区は、まるでスーパー堤防事業が決定事項であるかのような説明を繰り返してこういう追い出しをやっているんですね。
 そこで、一点お聞きしたいのは、果たして国は、ここにスーパー堤防を造るということを示唆したのか、お墨付きを与えるような情報を流しているのか、これ住民からも疑問の声が起こっていますので、はっきりお答えいただきたいと思います。

○副大臣(奥田建君) 田村委員御指摘の北小岩一丁目地区ですか、こちらの地区については、高規格堤防整備事業として国交省がその示唆をしたこと、あるいは事業化されたものではないということははっきりとお伝えしておきたいというふうに思います。
 ほかの地点についても、仕分以来、そういった事業化ということは、財務大臣の方からも御説明ありましたように、されてはおりません。現在の市街地整備の必要性から、江戸川区において区画整理事業というものが進められているものというふうに認識しております。

○田村智子君 行政刷新大臣、最後に一問お聞きしますけれども、私、幾つか問題提起をしました。都心部に絞ると言うけれども、都心部で三十Hは無理だろうと。これ、造るとなったら、それこそ何百年、あるいは千年ぐらいの時間が掛かるかもしれないですよ。三十H、高さが十メートルの堤防だったら向こう側に三百メートルですからね。現にできていない。断崖絶壁や水害を起こすような堤防が現に造られている。
 私は、都市部にというふうに集中したとしても、これは百害あって一利なしだと思うんですよ。そうではない治水の在り方、災害復旧含めて、どこに力を入れるべきなのかということを明確にしなかったら、これ亡霊のようにいつまでもいつまでも出てきますよ。行政刷新と言うのならば、こういう事業について二十五年間どうだったのかしっかり検証して見直すことをもう一度求めたいと思いますが、いかがでしょうか。

○委員長(福岡資麿君) 蓮舫大臣、簡潔に御答弁ください。

○国務大臣(蓮舫君) だからこそ事業仕分を通じて、完成まで四百年掛かる、しかも実際の整備率は五・八%しかありませんでしたから、しかもそれが数兆円掛かるというものは一旦止めていただきたいということは私たちとしては要請を行って、その仕分結果を受けて、優先順位を明確にして、今御指摘の部分の国が整備をもう既に始めているところ、実際に河川がはんらんした原因というのは、東京都の下水管理、こういう部分との連携はどうなのかというのを、先ほど来国交省から答弁ありましたけれども、その部分は重々中で行ってきておりますので、我々が当初求めた評価結果に沿った形で行っていると思います。
 ただ、田村委員がおっしゃるように、人命と町づくりという部分をどういうふうに連携を取って災害対策を行っていくか。まさに、町をつくるのと堤防で人命を守るというのは国交省の中での本体業務だと思っておりますので、その部分はしっかり、まさに今、政務三役も聞いておりますので、対応していただけるものと期待しております。

○田村智子君 終わります。